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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
リチャードの奪還と能力と
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【アリッサ】女体化したレンと再会


【アリッサ】


生臭い魚市場の地下に、隠されるように作られた非合法のオークション会場。

きっと中は薄暗く、不気味な雰囲気に違いないと思っていたけど......。


一步足を踏み入れると、そこは別世界のようなゴージャスな空間だった。


天井には青い染料を豊富につかった美しい星座のモザイクが輝き、壁には古代の戦いを描いたタペストリーがずらっと垂れ下がる。

輝く魔石が壁面や天井にふんだんに使われ、会場を太陽のような明るさで照らす。


オークション会場は、まるで貴族が集まるきらびやかな演劇場のようだった。


「パラド」の大富豪たちは、それぞれ椅子に座りオークションが始まるのを待ち構えている。


あたしは用心深く、周囲の様子をうかがっていた。

(リックはどこかしら)


オークションの出品者たちは、舞台の裏手に集められていた。

そこに列を作って並ばされている。


あたしは列のかなり後ろの方に並ぶように言われた。

希少なルタナイトのネックレスだもの。

目玉商品に近い扱いだから、オークションの最後の方に出品されるのね。


(リック......あの子はどこ?どこにいるの?)


列の前の方にも、後ろの方にも、リックの姿は無かった。


(そんな......。リックはここにいない?)


------------------------------


「今回のオークション最終日は、ものすごい品物ばかりだな」

前列の方から、出品者の男たちが雑談している声が聞こえた。


「そうだな......ルタナイトの石をみたか?

もう何年も市場に出回っていないのに......」

「あぁ、みた」

男の一人があたしにチラッと視線を送った。

「どうやって手に入れたのか、興味があるな」


あたしは、次に男が口にした言葉に、戦慄した。

「知ってるか?

大蛇の子どもが今日、出品されるというウワサだ」


(リックのことだわ!!)


「大蛇の子どもが、この時代に誕生していたとはな。

神官に化けていた大蛇は、火の魔法使いに倒されたというウワサだったが。

いつの間に子どもを作ったんだ?」

「詳しいことはわからないが、とにかく本物らしいぜ......」


(やっぱりリックはこのオークションに出品されるんだわ!)

あたしは視線をキョロキョロと泳がせた。

いまにも走り出して、

「リック!ママはここよ!」

と叫びたい衝動に駆られる。


(お、落ち着かないと。

いまあたしが捕まったりしたら、これまでの苦労が水の泡だわ。

とにかくリックをこの目で見ないと)


「それに、すげー可愛い女も出品されていたな。

さっき出品審査で見かけたけど、すごかったぞ」

「えっ?そうなのか?」

「一度見たら、忘れられないくらい可愛いし、とにかくものすごいんだ」

「なにがすごいんだよ」


そのとき、舞台の中央から声が響いた。


------------------------------------


「賢明なる賓客の皆様、ご静粛に!」

オークショニアの言葉が会場に響き渡る。

ザワザワとしていた客席が静まり返った。


「今宵の初品を披露いたします」


「おっ、あの女だよ!可愛くねえか?」

「どれどれ」

男たちは息をのみ、ゴクリとつばを飲み込む。

あたしも舞台の方へと視線を向けた。


そこには黒髪の女性が舞台中央へとゆっくり歩いていくのが見えた。

女性は娼婦のような際どい衣装を着せられている。


会場がざわざわする。

「可愛い女だが......なにか魔術が使えるのか?」

客席から声が飛ぶ。

「美しい女ならいくらでも手に入るからな」

一人の富豪がそう言うと、ドッと笑い声がおきた。


「みなさま、この女は可愛らしいだけではございません。

特別な力を秘めています」


あたしは女性の顔をまじまじと見つめた。


(う......う、そ)

見覚えのある顔に息を呑んだ!!


舞台の上へと出された女性は、ミナだった!!

タダール城であたしを助けてくれたミナ......つまり、レン!!!


あの娘は女体化したレンだわ!!!


驚きのあまり声が出そうになる。

でも慌てて、口を手で抑えた。


(王宮へ行ったはずのレンが......彼がどうしてここにいるの!?)



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