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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
リチャードの奪還と能力と
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【レン】オークション会場へ


俺とエレナはアクティスの街に到着した。


アクティスはトライアド海の沿岸部に位置する。

海をぐるりと抱くように広がる海岸沿いの街は、潮の香りに包まれ波の音が絶え間なくつづいていた。


港には何艘もの船が停泊し、交易品がつぎつぎと街に運び込まれている。

魚をいっぱいにした桶をかつぐ使用人が道を急ぎ、屋台では焼貝や魚介類をさばく売り子の声が響きわたる。


(相変わらず、活気のある街だな)


「オークション会場は魚市場の地下だったな......」


年に一度、パラドの大富豪向けに行われるオークションは、7日間にわたる。

町人に聞いた話では、今日がオークションの最終日だということだった。

オークションの最終日には、通常、目玉商品が出品される。


(リックは.....大蛇の子どもだ。

だから、きっと目玉として最終日である今日......出品されるはず......)


あの子を早く抱きしめたい。

安全な場所に連れ帰りたい。

そしてアリッサの笑顔が見たい。


このオークションでは、非合法な物品が出されることも多い。


たとえば、禁忌とされている古代のアーティファクト。

覗くと狂気に支配されてしまうという闇のオーブ。

死者を自在に操ることができるという腐敗の紋章。

それに、異端の魔力を持つ生物や動植物......。


大陸の法で厳重に禁止されている危険な呪術品がやりとりされるのだ。


オークションの売上は、権力者たちのフトコロに入る。

そのため、法を取り締まる「異端審問官」もこのオークションに関しては見て見ぬふりを決め込む。

あまりにも強い権力が動くので手出しができないのだ。


(俺はリックを奪われたりしない。

必ず取り戻す)


法律を無視して行われる競り市である。

暗黙の了解ながら、オークション会場は目立たない場所に用意されていた。

会場として使われるのは、アクティス随一の魚市場「パオラマ」の地下に作られた極秘施設。


俺は100年以上生きてきたなかで、このオークションの内情を小耳にはさんではいたが、実際に会場に足を運んだことは無い。


(内部はどうなっているのか。

一般人でも潜り込めるんだろうか......)


「とにかく行きましょう」

エレナが俺を安心させるように、穏やかな声で話しかけてきた。

「そうだな......」


--------------------------------


両わきに商店がぎっしりと並ぶ魚市場「パオラマ」のなかに足を踏み入れる。

壁際に並べられた水槽の中からこちらを睨みつけてくる巨大な魚。

水のピチャピチャと跳ねる音、ぬめりけのある石造りの床。

そして生臭い匂い......。


「ゴールドフィリングが採れたてだよ!!」

「人魚のウロコ、100エフ。銀貨1枚でどうだね?」

そんな声があちこちに飛び交う。


「あそこに地下への階段があります」

エレナが通路の奥を指さした。


薄暗い地下へ続く階段が見える。

だがその階段の両脇には、見張りと思しき男が二人、腕組みをして立っている。


俺とエレナは、無言で階段を降りようとした。

だが当然のことながら、両わきの男二人に止められる。


「招待状をみせてください」

右側の男が言う。

「そんなものは無い.....」

「それでは、お帰りください」

男はそう言うと、俺から視線をはずし、前方をじっと見つめた。


男の立ち姿や姿勢、物腰からかなりの手練れだということが想像できた。

この見張りの二人を倒すには、かなりの時間が必要だろう。


......強行突破してもいいが.......騒ぎを起こせば、リックが見つからなくなる可能性もある。


「とびきりの品物が手に入ったんだ。

出品したい場合は、何処に行けば良い?」

俺は左側の男に聞いた。


「なんだ。出品者か......。

それなら裏口へ回れ。そこで審査に合格すれば、出品できるぞ」


-------------------------------------


見張りの男に教えてもらった、オークション会場の「裏口」へと向かう。


「ウォーカー殿......。

出品者のフリをして、会場に潜り込むおつもりですね?」

裏口に回りながら、エレナが俺の耳元でそっと囁く。


「しかし......何を出品するおつもりですか?

それとも出品はせずに、裏口から強行突破ですか?」


「強行突破して捕まれば、リックを救うことができなくなる。

オークションに俺を出品するつもりだ。

さぁ、エレナ、急ぐぞ」


「えっ、なんですって!?

ウォーカー殿......どういうことですか」


俺はポケットに突っ込んであった「錠剤」をひとつぶ飲み込んだ。


(女に変化して、自分自身を出品するしかない。

俺は、自分で言うのもなんだが、かなり可愛らしい女に変化できる。

タダール城では多くの男たちに目をつけられ、何度も危うい目にあったのだ)


(だが、可愛らしいだけじゃ出品は難しいだろう。

”あの技”を披露して、興味を引いてもらうしか無い)


「どういう作戦で行くんですか......あらかじめ教えていただかないと」

立ち止まった俺に、エレナがたすねてくる。


「もう少し待て。変化するのに時間がかかるんだ」

「変化ですって?」

エレナは目を丸くして首を傾げている。


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