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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
リチャードの奪還と能力と
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【アリッサ】体毛が濃い男に変化


乳母はリックを売り渡した男の名前や風体を、すべて白状した。


そいつさえ、捕まえれば......。

そうすればリックが戻って来る!


あたしは、そう考えていた。

だけど物事は思い通りには進まない。


ユーシンとあたしは......カノンの街で人身売買のブローカーを捕らえた。

......でも......リックを取り戻すことはできなかったのだった。


---------------------------


あたしとユーシンは、乳母が白状したブローカーを、カノンの街で見つけた。

そいつは薄汚いチンピラで、カノンの売春宿でくつろいでいた。


「あの赤ん坊なら、ノーザンスカイに売り渡した。

もういねえよ」

男はそう言った。


あたしたちが、カノンの街に到着したとき......。

すでにリックは、男から「ノーザンスカイ」の一派に引き渡された後だったのだ。


男はリックを売り払って儲けた金で、売春宿で遊び呆けていた。


ユーシンは、男を痛めつけた。

あいつの腕を一本折った。


ボキッ!!というあの嫌な音......たぶん一生、忘れられない。


「もう一本の腕も折られたくなければ、言え!

ノーザンスカイが、リチャードさまをどこに連れ去ったのか、言うんだ」


誘拐犯は泣きながら、白状した。


リックはアクティスの街で開かれる「オークション」に出される予定だと。

ノーザンスカイのやつらがそう言っているのを聞いたと。


「オークションですって!?」


あまりのことに言葉を失う。

あたしの大事なリックが、競りに出されるなんて!?

そんなこと......許されるはずがない......。

あたしの子なのよ!?


誘拐犯の喉をユーシンが切り裂いた。

あたしは、ユーシンがあいつを殺すのを、止めはしなかった。


---------------------------


あたしとユーシンは、カノンの街を出発。

一路、アクティスへと向けて馬を疾走させていた。


「あと少しでアクティスにつきます。

ところで、奥さま.....」

ユーシンがあたしのほうへ視線を向けながら言う。


「だめよ。ユーシン、あたしのことは.......そうね、アーリーとでも呼んで。

男の姿なのに、奥さまと呼ばれていると、周囲に怪しまれてしまう」


「ならば、アーリーさまも、もう少し男らしいお言葉づかいをなさってください」

「.....そうね......ううん、そうだな」


ユーシンがおどけたように目玉をくるりと回した。


「ベルナルド領から、かなりの距離......馬を走らせていますが、アーリーさまはお疲れでは?」


「まったく疲れを感じないんだわよ」

変な言葉づかいになってしまう。

「これが男の体力なのかって、驚いてる」


「お言葉づかいや、立ち居振る舞いは女性そのものですが。

アーリーさまのお姿は立派な男性です」

そう言うと、ユーシンはオッホンと咳払いした。


「鏡をごらんになっていないでしょうから、わたくしが教えて差し上げますが、

アーリーさまの腕や脚は丸太のように太く、ガッシリとし......。

その......顔には濃いおヒゲが。

さらに言えば、胸板は厚く筋肉隆々といったところです」


あたしは、慌てて自分の顔に手を触れた。

ジョリ......という嫌な手触りがする。


(やだ!ほんとうだわ!ヒゲが生えてる。

それに腕からも太くて嫌な毛がみっしり生えてるのよね)


レンは、体毛がほとんどなくって、ツヤツヤできれいなのに。

あたしは、どうしてこんなに毛むくじゃらになってしまったのかしら......。


「あまりヒゲのことは言わないでちょうだい。

あたし......いえ、俺もとまどってるんだ」


「見た目は男らしい雰囲気に変化されていますが、中身は奥さまですからね。

絶対に、無理なさらず。

戦いは、私にお任せください。

奥さまになにかあったら、旦那さまに殺されます」


「レンには申し訳ないことをした。

女王の仕業だと、決めつけてしまって」

レンの笑顔を思い浮かべて胸が苦しくなった。


でも.......今回は女王の仕業ではなかったけれど......。

女王もリックを狙っているのは、間違いのない事実だわ。


それに今や、「大蛇の子ども」がこの世界に誕生していることを知る人間は把握しきれないほどの数になってしまった。


ウワサはあっという間に広まる。

大陸中が、リックに注目するかもしれない。


リックは一生、付け狙われることになってしまう。

一体、どうしたらいいの......。


ううん、まず今は、この状況からリックを救い出すことに集中しなきゃ。

先のことは、あとから考えれば良い。


あたしは前方を必死に見つめ、馬を走らせた。




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