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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
リチャードの奪還と能力と
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【レン】オークション


「リックが......あの子が連れて行かれた場所を、ほんとうに知っているんだな?

俺に嘘をついたら後悔することになるぞ」


檻の中でうずくまるリアムを睨みつけながら言った。


「もちろんだ、火の魔法使い......。

いや、お前はウワサでは魔力を持たないただの人間に成り下がっているらしいな?

だが、魔力をもっていようが、いまいが天性ってもんは変わらない。

......俺はお前の恐ろしさを知っている......」

リアムはブツブツとつぶやいた。


「さぁ、レン・ウォーカー、どうする?

俺を助けるか?」

リアムが鉄柵に指をからめながら、俺を挑発するように見る。


アイヒンの仲間......ノーザンスカイの連中が、今にも舞い戻ってくるかもしれない。

迷っている時間はなかった。


「裏切ったり嘘をつけば、お前を切り刻む」

俺はリアムを睨みつけながら、檻のカギに手をかけた。


「くそっ、カギはどこだ.....」

部屋をキョロキョロと見回す。


「おまかせを」

それまで黙って俺とリアムのやり取りを見ていたエレナが、檻のカギを調べ始めた。

そしてフトコロから、なにかの道具を出すとカギ穴に差し込む。


「エレナ......カギ開けができるんだな?」

「簡易な錠であれば開けることができます」


エレナは俺をちらっと見ると、微笑んだ。


---------------------------------------


アイヒンのアジトから、急いで脱出した。


リアムに導かれ、俺とエレナは入り組んだ細い路地を右へ左へとつき進んだ。

やがて、町外れの廃屋に入った。


朽ち果てた小さな小屋で、壁にはところどころ穴があいている。

その穴から光が差し込み、ホコリがふわふわと舞っていた。


「あった、あった」

リアムが床板をひとつ外すと、そこから革袋を取り出した。


「ここは俺の隠れ家の一つでな......この街を脱出するための荷物が隠してあるんだ」

そう言って、にやりと笑うと、革袋を背負う。


「おい、こっちはお前の隠れ家なんかに用はないんだ!

リックの連れて行かれた先を早く言え」

俺はリアムを突き飛ばした。


そしてヤツを壁に押さえつけると、喉元を肘で押さえつける。

「ぐ......。わかったよ、言うから落ち着けって。

相変わらず短気なんだな」

「リックは何処に連れて行かれたんだ?」


------------------------------------


リアムの話では、リックは港町「アクティス」に連れて行かれたそうだ。


「アクティス!?なぜ......」

「海の向こうの小国、パラドはオリハルコンが大量に採取できるのは知ってるな?」

「知ってる!結論から早く言え!」


「パラドにはオリハルコンで一儲けした大富豪がゴロゴロいる。

そのパラドの大富豪御一行さまが、今、アクティスに大挙して訪れてるんだ」

リアムはニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべている。

俺をじらして、楽しんでいるようだ。


「パラドの成金がアクティスに集まっている理由は......もしかしてアレが行われるからか?」


年に一回......この大陸では大規模な「オークション」が開かれる。

そのオークションでは、大富豪の好む高価な呪術品や、呪文書、古文書......。

それに希少な生物や生き物も「競り」にかけられるのだ。


「そうだよ......。

あの大蛇の赤ん坊は、オークションにかけられるんだ。

パラドの大富豪たちはよだれを垂らして喜ぶだろう。

永遠の命が手に入る大蛇の血をもつ赤子が手に入るとなれば、かなりの高値がつくだろうな」


「オークション......」

あの子のことを、まるで「珍しい品物」のように扱うなんて。


まだ赤ん坊なんだ。

小さくて可愛らしいただの赤ん坊だ。

いまだってお腹をすかせて泣いているかもしれないのに。


リアムの喉元を押さえつけている腕に、思わず力が入る。


「おい!ゴホッ!!の、喉が、喉が潰れちまう」

リアムが青白い顔をして言う。


「アクティスに急ぎ、向かおう」

俺はエレナに言った。


「急ぎましょう。

オークションが始まる前に助け出さないと」

エレナも焦った声を出した。


「おい、レン。

これを持ってけ」

リアムが、俺の胸元に握りしめた拳を突き出した。


「なんだ?」


リアムの拳には、錠剤が握りしめられていた。

「異性に変化できる薬だよ......。

これで最後なんだ.....材料の700年草のしずくがとうとう取れなくなった。

もうこの薬は、700年間は作れない」


「へえ。商売上がったりだな。

なんで、俺に貴重な残りの薬をよこすんだ?」


「これさえなければ、俺はもう金を稼ぐことはできない。

今度こそ、ギャンブルからきれいさっぱり足を洗うんだ」


リアムはそう言うと、薄く笑った。


「どうだかな......。

薬は預かってやるけど、お前のギャンブル癖が治るかどうかは別問題だろう」

俺は錠剤を受け取るとポケットにぐいっと突っ込んだ。


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