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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
リチャードの奪還と能力と
232/255

【アリッサ】子どもを守るためなら


【アリッサ】


薬をひとつぶ飲んで、レンの普段着に袖をとおす。

レンの服はあたしには、ぶかぶかだった。

裾を何重にもまくり上げる。


レンは貴族特有の赤や紫の染料を使った派手な服を嫌う。

いつも地味で動きやすい質素な服を好んでいた。


彼のお気に入りのリネンのシャツにコットンの茶色のズボン。

レンの匂いがする......彼に会いたい.......。


自分の手足をじっと眺めた。

(まだかしら?

おかしいわ......変身しないじゃない)


一向に男に変身する気配がない。


(だめだわ。

もしかしたら、女にしか変身できない薬なのかも。

あたしはもともと女だから、飲んでも意味がなかったのね)


「とにかく行かなくちゃ!」

グズグズしていられない。

長い髪を帽子の中にまとめると、あたしは部屋を飛び出した。


---------------------------------


「奥さま!本気ですか。

......その格好。

かえって目立つ気がするのですが」


あたしの姿を上から下まで眺めると、ユーシンは目を見開いた。


「男に見えないかしら!?」

「お言葉ですが......見えません。どうみても女性です」

ユーシンは、呆れたように首を振った。

ユーシンも兵士の制服から目立たない平服に着替えていた。


「いいから、早く行きましょう。

心配しないで!乗馬ならできるから」

あたしが、馬小屋まで駆けていくと、ユーシンが慌てて後を追いかけてきた。


「ベルナルド兵が大勢で行くと、相手が警戒しリチャードさまの身が危うくなります。

人身売買の買い手のふりをして近づくのがいいでしょう。

隠密行動になるので、わたしと奥さまの二人だけで行くのが最善かと」

ユーシンはあたしの後ろから、声を掛けてきた。


「それでいいわ。残っている兵士はベルナルドの屋敷をしっかり守ってもらわないと」

あたしは馬に飛び乗ると、そう叫んだ。


---------------------------------


馬を走らせる。

久しぶりの乗馬は正直言って怖かった。


(馬上って、こんなに高かったかしら)

落ちたら死ぬかもしれない。

そう思うと身体が緊張する。

でも怖がると、馬に気取られてしまう。


あたしは、深呼吸すると馬の動きに合わせて腰を揺らせた。

(身体が覚えているもんだわ)


ふと気づくと、体中に力がみなぎっている気がしてきた。

(変ね......馬に乗るのが怖くなくなってきた。

それに、もしも馬から落ちたとしても、上手に受け身が取れるような......そんな変な自信が湧いてきた)


「お、お前は誰だ!?」

隣で馬を走らせているユーシンがあたしをみて、大声を上げた。


「ユーシン!?」


彼はまじまじとあたしの顔や身体を見ている。

あたしも、慌てて自分の体をみつめた。


(お、男に変身しているわ!!)

馬に乗ることに夢中で気づかなかったけど.......いつの間にあたしは男になっていた。

ぶかぶかだったレンの服が、キツイくらいのサイズ感になっている。

太ももは筋肉質で、袖から出ている二の腕もがっしりしている。


(うそ......いつの間に変身していた!

やだ。腕が毛むくじゃらだわ)


呆然としているユーシンに慌てて説明した。

「ユーシン!!あたしよ、アリッサよ。

いにしえの秘薬を飲んだの。男に変身できるという」


ユーシンは、目をぐるりとさせた。

「そんな秘薬があるのですか!?

しかし、あなたが奥さまであることに間違いはなさそうですな。

馬の上で、人が入れ替わるなんて不可能だ。

奥さまには、先程から驚かされてばかりです。

乳母に対する、目玉をくりぬくという発言にも驚かされました......」


「母親はね、子どもを守るためなら何にだってなれるのよ」

あたしはユーシンに真面目な顔でうなずくと、馬の腹を勢いよく蹴った。


「急ぐのよ!」



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