【レン】どうすれば分かってくれるのか
荷物を手早くまとめると玄関ホールへとむかった。
アリッサが後ろから小走りでついてくる。
女王がこんなに早く、リックを力ずくで奪うという「強硬手段」に出るとは思えなかったが......。
(もしかしたら、イリーナさまの容態が急変したのかもしれない)
「王宮へ向かう」
アリッサが叫んだ。
「あたしも行く!!」
だが俺は反対した。
「王宮までの道は長く、危険も多い」
アリッサは、首を激しく横に降った。
「それでも行くわ。
こんなところでジッとしていられない。
気が狂ってしまう」
「......アリッサ」
俺は彼女の髪をそっとなでた。
「王宮へ向かう道でもしも何かあったらどうする。
ママがいなくなったら、リックは悲しむよ?」
俺がそう言うとアリッサは、俺の手を振り払った。
「俺が愛してるのはアリッサだけだ。
それにリックのことも愛してる」
アリッサの目が見開かれた。
「イリーナさまとは.....何もなかったの?」
「イリーナさまとは何にもない!
女王が勝手に、俺とイリーナさまを結婚させようとしていただけだ!!」
少し強い口調で怒鳴るように言うと、アリッサは俺の目をじっと見つめた。
「でも......不安なのよ!」
アリッサはまだ、納得していない様子で、また俺の胸を叩いた。
俺の体を叩き続ける彼女の両手首をつかんだ。
「俺がどんなにアリッサを大切に思ってるのか......ちっとも分かってないんだな。
どうしたら、分かってくれる?」
そう言って彼女を押さえつけた。
羽交い締めにして、無理やりキスをした。
「んっ.....」
アリッサは少し抵抗したが、やがて大人しく身を任せた。
「愛してる......」
彼女の流れ落ちる涙を指でぬぐった。
王宮へ行き女王と対決するとなれば......
もしかしたら、もう二度とアリッサに会えなくなるかもしれない。
そう思うと、彼女にキスをしておきたかった。
「レン」
アリッサは目に涙をためて俺を見上げた。
「お願い......リックを連れて帰ってきて......」
「分かってる!」
のんびりと馬車で王宮へ向かう場合ではない。
俊足の馬を選び出し、飛び乗る。
なんとか最短でたどり着ければいいが......どんなに急いでも数日はかかってしまうだろう。
屋敷をでて猛スピードで20キロほど走ったところで......。
俺は思いがけない相手に出会った。
「レン・ウォーカー殿......」
「お前は......」
薄暗い森の中の街道で、すれ違ったのは......。
「エレナじゃないか」
「どうしたんです?どちらへ向かっておられるのですか?」
エレナはキョトンとした顔で、俺に尋ねた。




