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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
リチャードの奪還と能力と
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【レン】アリッサを怒らせる


アリッサを怒らせてしまった。


彼女は俺のことを「ヒドイ」と何回も言いののしった。


そんなふうに言わなくても。

まるで俺が人でなしみたいじゃないか......。


おまけにアリッサは、イリーナさまと俺の仲を疑っているようだった。


俺が城に閉じ込められ、どれだけアリッサのことを恋しく思っていたか。

俺の愛する人はアリッサだけだということが、彼女には分かってない。


リックのことだって、俺は可愛くてしかたないと思っている。

リックが泣いていれば、居ても立っても居られないし、お腹をすかせてないか、痛いところはないかと心配だった。

リックがニコニコと笑って、お腹いっぱいで、スヤスヤ眠っていると自分自身も安心していられた。


自分が子どもに対してこんな感情が持てるなんて......正直、思いもよらなかった。


それなのに。

アリッサは、俺がリックのことを少しも愛していないと思っている。

さらに彼女に対する愛まで疑うなんて。


(なんだよ......俺だって女王に喜んでリックを差し出そうなんて思っていない。

どうしたらいいか......冷静に二人で話し合いたかっただけなのに)


屋敷に戻ってからも、アリッサは俺のことを無視した。

そして俺がリックに近づこうとすると、リックを遠ざけて俺のことを睨みつけた。


--------------------------------


夜になって、寝室で二人きりになったら、また話し合おう。


そう思っていた。


なにしろ、食事の席でも他の場所でも......。

兵士や使用人や侍女、乳母の目が常にあった。


誰がスパイなのか分からない。


(俺とアリッサの話が女王に筒抜けになったら、マズイ。

とくにアリッサが、女王を悪く言っていることが伝わったら、女王に何をされるか分からないし)


自分の屋敷の中にも敵がいる......そんな気がして落ち着かなかった。


------------------------------


(アリッサが来ないな)


寝室でアリッサがやってくるのを待っていたのだが、一向にやって来ない。


(まさか......)

俺は廊下でアリッサのお付きの侍女を捕まえて聞いてみた。


「アリッサが寝室に来ないんだが。

どこにいるか知らないか」

侍女は俺から目をそらすと、言いにくそうにした。

「怒ったりしないから、教えてくれ」

そう頼むと......。


「奥さまは、今日は一人で眠りたいとおっしゃって......」

「えっ?一人で?」


侍女が言うには、アリッサは、客間に寝床を用意させ......そこで眠っているという話だった。


「そ、そうなのか」

「きっと、月のものかなにかで......お体の調子がすぐれないのだと思います」

侍女は慌ててそう言い添えると、一礼して去って行った。


(そんなに、俺のことが嫌になったのか.......)


アリッサがいるであろう、客間をノックしてみた。


「アリッサ.....いるんだろ?」

室内から明らかに人の気配がした。


しばらくしたのち、

「......いるわ」

というアリッサの声が聞こえてきた。


「俺が悪かった。

でも聞いてくれ......」


「それじゃあ、女王に手紙を書いてくれる?

リックの体は傷つけません。お断りします......って」


「女王の命令に背く......それがどんなことを意味するのか、分かってるのか?」


小声で言ったけど、廊下を通る使用人がチラチラと、こちらに視線を向けてくる。

(まずい......こんな会話、スパイに聞かれでもしたら.....)


「女王の命令なんか、怖くないわ!

子どもを守るのは、親の役目よ?」

アリッサの大声が中から聞こえてくる。

廊下まで丸聞こえだ。


「アリッサ、とにかく中へ入れてくれないか」

使用人にこれ以上、話を聞かれたくなくてアリッサに頼んだ。


「いやよ。レン......今日は一人で眠る」

アリッサはそう言ったきり、返事をしなくなった。



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