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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
王都にて_女王の狂気と大蛇の血
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【レン】生きていて欲しい


【レン】


イリーナさまに別れの挨拶を告げ、そっと部屋のドアを閉めた。


「ご自分を責めないでください」

イリーナさまはそう言って俺のことを許してくれた。

しかも俺のおかげで、グレッグへの愛に気づけたとまで言っていた。


そう言って俺の心を軽くしてくれているのだろう。

懐の深いおかただ。

俺はイリーナさまに頭が上がらないな……。


リチャードの生き血でイリーナさまは生きながらえる可能性がある。

だがリチャードはアリッサが大事に大事に育てている我が子。

リチャードが傷つけられ血を抜かれるなど、アリッサは反対するに決まっている。


俺としても幼いあの子を傷つけたくないのはもちろんだ。

だが、イリーナさまにはもっと生きていて欲しい。

どうしたらいいんだ。


ベルナルド領へ帰るため、準備された馬車に乗り込んだ。


ベルナルド領は遠い。

数日はかかるので、馬車のなかで考えよう。


だが道中いくら考えても納得する答えには辿りつけなかった。


……………………………………………



休みもろくに取らずに真っ直ぐにベルナルド領を目指した。


(ようやく到着だ!)


屋敷の物見台が見え始めて心が浮き立った。

アリッサにようやく会える!


馬車を降りると屋敷の玄関ホールに視線を向ける。

玄関からは数人の使用人が慌てたように飛び出して来た。

アリッサの姿は見えない。

(まだ朝早いから寝ているのかもしれないな)


「旦那さま、おかえりなさいませ」

使用人のひとりが声をかけてくる。


「留守中、変わりはなかったか」

「そ、それが………」

使用人が口ごもった。


……………………………………………


使用人の話では、アリッサは2日ほど前にこの屋敷から出て行ったという。


「火の魔法使いのニナさまとディルさま……

お二人がここに訪れて……。

それでアリッサさまとリチャードさまをどこかへお連れしてしまったのです」


アリッサの部屋に入り、ドレスの収納されたチェストや小部屋を開く。


中の衣服のいくつかが持ち出されていた。

慌てて出て行ったような形跡が残っている。


(女王の迫害が及ぶと思ったニナとディルが先回りしてアリッサをどこかへ避難させたんだ)


寝室のベッドは、今さっきまで彼女が寝ていたような窪みが残っていた。

彼女のぬくもりが残っていないかと、その窪みに指をそわせる。


どこに行ったんだろう。

闇の森だろうか。

いや、違うだろう。

女王の手から逃れるなら、そんなわかりやすい場所に隠れるはずがないし。


ガランとした部屋で呆然と立ち尽くした。


ふと、書き物机の上に書類が広げてあるのが目に入る。


「これは」


俺との離婚を進めるための書類だった。

女王からの直々のサインがなされている。


俺はその書類を粉々に破り捨てた。


(俺が処刑されなかったことは、いずれディルたちにも伝わるだろう。

それまで……

アリッサが戻って来てくれるまでここで待つしかない)


…………………


それから、数週間後。


ようやく俺とアリッサは再会することができた。


あらかじめディルから逃亡先を聞いていたエレナが、王宮からディルたちに手紙を書いてくれたようだ。

エレナからの手紙には俺の無事と......そして俺がベルナルド領へ戻っているということが書かれていた。


まだ朝靄のかかる早朝。


アリッサとリチャードの乗った馬車がベルナルドの屋敷に戻ってきた。


「アリッサ!」

彼女の姿を見たとたん、胸の奥が熱くなった。


「レン!」

アリッサが大声で俺の名前を呼びながら、走り寄ってくる。


「会いたかった……。すごく」

彼女を強く抱きしめた。


「寂しかったわ」

俺を見上げるアリッサの瞳からは大粒の涙が流れ出ていた。


「ディルからもらった……あなたからの手紙。

何度も読んだのよ。

何度も何度も。

信じてた」


舞踏会の控え室で慌てて書いたアリッサへの手紙……


そこには

「愛してる」

と。

「きっと必ずアリッサの元に戻る。

だから信じていて欲しい」


そう書いた。


「よかった。ほんとに」


俺たちはきつく抱きしめ合った。


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