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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
王都にて_女王の狂気と大蛇の血
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【レン】アリッサと踊る【イリーナ】毒針で脅される


【レン】


イリーナさまは俺と踊っている最中、ずっとよそ見をしていた。

どこを見ているのだろうと思ったら......。

彼女はグレッグのことを、目で追っていたということが、分かった。


グレッグのことが好きなんだろうな。

それなのに、俺と結婚するように女王に命令されている。

可哀想に。


このままじゃいけない。

なんとかして、女王を説得しなければ。

俺には交渉の「切り札」みたいなカードはないけど......。

地道に女王に気持ちを伝え続ければ、分かってくれるはず。


---------------------------------


曲が変わるたびに、ダンスの相手も次々と変わっていった。

もうグレッグもイリーナさまも、どこにいるのか皆目検討もつかない。


仮面を付けた見知らぬ女性が、俺の肩に手をおいている。

くちびるの形がアリッサに似ている気がする......。

その女性の顔をアリッサの顔に置き換えている自分に気づく。

アリッサと踊っているような気分になった。


「レン......愛してるわ」

そう囁く彼女の声が聞こえるような気がした。


--------------------------------


【イリーナ】


「お嬢さま、一曲踊っていただけませんか」

「えぇ、喜んで」


グレッグには引き止められたけど、あたしは見知らぬ男性と踊ることにした。

グレッグに、焼きもちを焼いて欲しい......そんな気持ちになっていた。


見知らぬ年配の男性は、踊りながら......あたしの耳元で小声でたずねた。

「あなたは.....イリーナ・アリステリアさまですよね?」

「えっ......よくお分かりになりましたね」

「ずっと、目で追っていたんです......見失わないように」

男が低い声で言う。


「レン・ウォーカー殿と婚約なさったというのは本当ですか」

「......まだ決定はしておりませんわ」

あたしは、男のことが少し怖くなってきた。

なぜ、あたしの姿を目で追っていたのだろう。


男の顔をじっと見る。

仮面で顔が半分隠れているけれど......。

頬の傷跡の一部が仮面からはみ出て見えた。


(この男......。さっき廊下でレンさまに恨みがあるって言っていた......)


「大人しくしてくださいね。

私の言うことを聞いて。大声を出したら、これで刺します」


男がそう言うので、ゾッとして、男の手元を見る。

男の人差し指には、鋭い針のついた指輪がついていた。

その針の先が、あたしの首筋に素早く当てられる。


「......や、やめて」

小声で懇願するが、男はだまってあたしの腕を引っ張る。

「この指輪の針先には毒が塗り込まれています。

おかしなことをすれば、すぐに刺しますよ」

男に歩かされる。

指輪の針をあたしの首の裏側に当てているのが感じられた。


「......あ、あたしは王妹です。

こんなことしたら、姉に報復されます......」

そう脅したがムダだった。


男はあたしの背中をグイグイと押して、歩かせ続けた。


-------------------------------------------


あたしは、男に背中を押されて大広間から外へ出た。

人気のない廊下を歩かされる。


「何が狙いなの?あたしを誘拐して、身代金を要求するつもり?」

震える声であたしは聞いた。

大勢の兵士を連れてきたのに......誰もあたしがいなくなったのに気づいていないみたいだわ。

無理もない.......仮面を付けてみんな白いドレスを着ているのだもの。

あたしがいなくなったって、誰も気付けない。


男は、あたしを脅しながら廊下の端にある小さな部屋に入った。

物置部屋のようで、絵画やオブジェが床に乱雑に置かれている。


男は、埃の被った絵画の裏から、剣をひとつ取り出した。

「な、なにするつもりなの」

胸がドクン、ドクンと鳴り響く。


「お前は、レン・ウォーカーに殺されることになる」

男の言葉にあたしは耳を疑った。

「な、何を言ってるの?レンさまは私を殺したりなんかするわけ......」

「しぃっ!大声を出したら、すぐに殺すからな」

男は、あたしの首に剣をピタリと当てた。


「ファインズ家の屋敷にはいるときに、武器はすべて、屋敷の倉庫に預けることになる。

......舞踏会に武器など必要ないからな」

男が低い声で続ける。


「俺は、武器が入っている倉庫から、レン・ウォーカーの剣をあらかじめ盗み、ここに隠しておいたのだ。

......これで、お前を刺し殺せば、殺した犯人はレン・ウォーカーだということになる。

ウワサによると、やつはお前との結婚を望んでいないそうだな?

立派な殺人の動機になるんじゃないか」


「いやよ......そんな......殺さないで!」

あたしは足の力が抜け、床に座り込んだ。


「王妹を殺したとなれば、拷問のうえ打首になるのは間違いない。

ハハハ......レン・ウォーカーへの最高の復讐だ!!」

男はそう言うと、剣をにぎりしめた。



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