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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
王都にて_女王の狂気と大蛇の血
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【イリーナ】廊下でのできごと


【イリーナ】


レンさまの妹君......とても可愛い方だったわ。

目がレンさまにソックリだった。


妹さんともう少しお話してみたかったけど.......。

邪魔になってはいけないと思い、あたしは、その場から離れることにした。


ファインズ家の侍女に、話しかけてみた。

「パーティが始まるまでお部屋で休みたいのだけど......」

「はっ、ご案内いたします」

侍女は、そう言って頭を下げた。


あたしの背後には、ゾロゾロと侍女や兵士、治療師がついて歩いている。


「あたしは、お部屋で休むから......あなたたちは、使用人室で待機していて」

あたしの指示に、皆は、ぞろぞろと去って行った。


おつきの侍女2人と護衛のルーカスだけがあたしのそばに残った。


「こちらです」


ファインズ家の侍女が、用意してくれた部屋へと案内してくれる。

部屋へ向かう途中の廊下で、招待客の話が自然と耳に入ってきた。


「......みたか?火の魔法使いが招待されていた」

「みたよ。金髪のディルブラウンだろ?」

「違うよ。黒髪のヤツだ。レン・ウォーカー」


レンさまのお名前が出てきたので、あたしはビクッとして耳をそばだてる。


「火の魔法使いレン・ウォーカー......あいつに俺は、恨みがあるんだ......」

「へぇ?だがウォーカーは、もう火の魔法使いじゃないって聞いたよ。

魔力を失ったらしい」

「えっ!!そうなのか......。だったら仕返しのチャンスだな」


(レンさまに、恨み?仕返し!?)

あたしはびっくりして、話している男の顔をそっと盗み見る、

頬に火傷のあとのある、白髪の男だった。


(大変だわ。レンさまに知らせないと)


慌てて方向転換すると、

「イリーナさま、お部屋はこちらですが?」

......と、ファインズ家の侍女が怪訝そうに言う。


「やはり、レンさまのもとに戻ります」

あたしは、もと来た廊下を戻ろうとした。


そのとき。


数メートル先からやって来た人物に息をのんだ。


グレッグだった。

グレッグが、クマみたいな大きな体でノシノシと、こちらに向かって歩いてきたのだ。


あたしはグレッグに会いたかったので、嬉しくなった。

彼も、このパーティに招待されていたのね。


ところが、グレッグの隣には、見知らぬ女性がいた。

彼はその女性と腕を組んで歩いているのだ。

親しげに笑い合っている。


「グレッグ......」

あたしとグレッグの目が合った。

彼もあたしに気づいたようだ。


「イリーナ.....」

グレッグはキョトンとして目を丸くしている。


「イリーナさまですね......はじめまして」

グレッグの隣にいる女性があたしに向かって会釈した。

「わたくし、グレッグの婚約者のライラ・ハントと申します。

どうぞお見知りおきを」


「こ、婚約者!?」

あたしはびっくりして、グレッグの顔を見る。


「親が勝手に決めたんだ......。

その、イリーナとは、婚約解消だって言うもんだから」


「婚約解消......」

あたしはグレッグの言葉を繰り返した。


そうだわ......。

あたしの婚約者はレンさまになった。

だからグレッグにも新しい婚約者ができたのね。


ライラの姿をじっと見る。

グレッグほどじゃないけど、ぽっちゃりと太っていて笑顔が可愛らしい女性だった。

きっと2人でケーキを食べたり、おしゃべりしたり......楽しく過ごしているんだわ。


グレッグも嬉しそうな顔をしてるじゃない。


あたしはプイと2人に背を向けた。

とても無礼な行為だけど、そうせずにはいられなかった。


「イリーナ......?」

背後からグレッグの困惑したような声が聞こえてきたけど、あたしは振り向かなかった。


なによ......。

グレッグはあたしのことは、もうどうでもいいのね。

あたしに会いたいなんて、ちっとも思わないんだわ。

あたしは、グレッグに会えなくて寂しい思いをしていたのに。


あの女性......ライラのことが好きなのかしら。


あたしは、グレッグの笑顔を思い浮かべた。

(やだわ......どうしてこんなに、寂しい気持ちになるのかしら。

グレッグのことなんか、好きでもなんでもないのに......)



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