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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
大蛇をさがして
20/255

【レン】屋敷には戻れない


「屋敷から逃げ出してきた兵士と話したい」

俺は御者に頼んでみた。

もう少し詳しい情報が欲しかったのだ。


「それが......深い傷を負っていたため、すぐに絶命してしまいました」

「......そうか」


「レン、私、屋敷に戻りたい。

父と母が心配だわ」

アリッサが震える声で言う。


「......いま屋敷に戻るのは危険すぎる。

死にに行くようなものだろう」


アリッサを連れて戻れば、すぐに敵に見つかってしまう。

タダール家が侵略を目指しているなら、アリッサは即座に殺される可能性が高い。


「でも」

アリッサは俺の腕をつかんで、涙の溜まった目で見上げる。


「この街も危険だな。

タダール兵たちの略奪が始まる可能性がある。

アリッサ、目立たない服装に変装しよう」


フリルやレースのついた高級生地を身にまとったアリッサはどうみても街の人間に見えない。

ベルナルドの令嬢だと略奪者に、ひと目でバレてしまうだろう。

バレれば命は無い。


店主に頼んで、少年の服と帽子を用意させた。

「アリッサ、俺たちは部屋から出ているから着替えるんだ。

なるべく急いで」


------------------------


長い髪を帽子の中につめこんで、アリッサは少年の姿に変装した。

よく見るとバレるだろうがドレス姿よりは数倍、安心だ。

しかもこれなら動きやすい。


「それで、どうするの?レン」

アリッサは不安そうだ。


「街からでたほうがいいだろうな。

様子をみるんだ」


「街から出る!?

嫌よ。屋敷に戻る。

戻って戦うわ」


アリッサは俺に詰め寄ると、いつにない強い口調で言った。

「逃げたりしない。

戦って殺されるならそれでいい!!」


「だめだ。アリッサ。

逃げることも立派な戦略だ」


「レンは火の魔法使いでしょう?

ヤツらを燃やして!!」

アリッサは大声でそういうと、俺の腹を両手の拳でボコボコと叩いた。


俺にはもう魔力がない......。


魔力があれば、屋敷に戻ってタダール兵を一網打尽にすることも可能だ。

人間を殺すのは俺の流儀じゃないが、炎や爆発を見せれば、人間を蹴散らすことは簡単だった。


だが、俺はいまはただの人間だった。

のこのこ戻ったところで、アリッサを守りきれる保証は無い。


「アリッサ、実は俺は」

魔力がないことを打ち明けようと思った。


「......炎の杖。あれが無いから難しいのね?

杖はうちの宝物庫に厳重に保管されているのだけど」

アリッサが俺の言葉にかぶせるように言う。


「宝物庫は屋敷の一番奥だから、行き着くまでが至難の業だわ」

彼女は爪をかみながら考え込んでいた。


そのとき、「バァーン!!」と遠くで爆発音が聞こえた。

「大変だ、タダール兵が略奪に来る」

御者が怯えた声でそうさけび、部屋から飛び出していった。


「私はこの書店を守ります。

入口を厳重に封鎖したい。

お二人は、裏口からでていくと安全かと思います」


店主の言葉にうなずくと、俺はアリッサの手を引っ張った。



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