表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/255

レン


「そうだ。

大蛇の血を飲ませれば、アリッサは助かるかも」

50年ほど前に、仲間の魔法使いが話していた言葉をふと思い出した。


「緑の洞窟に住む大蛇の生き血は、寿命を伸ばすことが出来る」

ヤツはそんなことを言っていた。


(たしか大蛇について書かれた書物があったはず)

いそいで書庫を漁った。

「これだ!この本......」

分厚い本を手に取ると、ほこりを払う。


「大蛇の生き血を飲むことで寿命を永らえさせる」という記述を見つける。

「間違いない」

さらに書物を読み進めると、「大事なものを引き換えにする必要がある」という記述が目に入った。


(俺にとって一番大事なものはアリッサだ。

彼女さえ助かればなにもいらない)


奴隷の妖精にアリッサの世話を頼むと、俺は大蛇の住む洞窟へと旅立った。


--------------------------


「アリッサ!!アリッサは無事か!?」


数日後。

自分の屋敷のドアを乱暴に開くと、妖精に声をかけた。


「無事でございます。

熱は下がっておりませんが」


「そうか......。よ、よかった」

その場に思わず座り込む。


大蛇の生き血を手に入れることができた。

でもすでにアリッサの命のともし火が消えていたら......?

馬を走らせながら、悪い考えばかり浮かんで気が変になりそうだった。


一刻も早く、大蛇の生き血をアリッサに飲ませたい。

すぐに彼女の部屋へと走る。


「アリッサ!アリッサ」


アリッサがうっすら目を開く。


「レン......。どこに行ってたの。

すごく......寂しかったよ」


小さな手を俺の方に伸ばす。

「あぁ......。俺も寂しかった」

アリッサの手にキスをする。


「がんばって、すこしだけ起き上がって」

彼女の背中をささえると上半身をベッドから起こした。


「さぁ、これを飲むんだ。

お熱が下がるお薬だよ」


革袋から、蛇の生き血を一滴もこぼさないように注意して、グラスに注ぐ。


「がんばって飲み干すんだ。

そうすれば必ずよくなる」

「......うん......」

アリッサは、傾けたグラスにくちびるをつけると、目をつぶって飲み込んだ。


「レン。変な味がする」

「頑張るんだ。飲めば、また魚釣りや、きれいな花を探しに出かけられるよ?

本もたくさん読んであげるし、貴重な宝石もみつけてあげる」


「ほ......ほんとに」

アリッサは真っ赤な顔をして、潤んだ瞳を俺に向けた。


アリッサは、ゴクゴクと蛇の生き血を飲み干した。

「ん......」

「さぁ、水も飲んで」


冷たい水を彼女に手渡す。


「うっ、うう」

アリッサがとつぜん、苦しそうにうめき出した。


「アリッサ!?」

俺は彼女の手を握る。

彼女の手は、驚くほど冷たくなっていた。


「だめだ、アリッサ、逝くな」

俺は彼女の額をなで、身体をだきしめる。


(間に合わなかったのか!?)


涙がうかび、頬を流れ落ちる。


なにもいらない。

アリッサがいればそれでいいのに。


「アリッサ。

逝かないで」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ