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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
王都にて_女王の狂気と大蛇の血
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【イリーナ】結婚の表明


咳をした拍子に、口から血が出てしまった。

「お姉さま、心配ございません。

前にも、咳をしたら血が出たことがあって......」


あわてた様子で治療師を手配する姉に、そう言った。


すると姉は

「何!?前にも血を吐いた?

なぜわたくしに、それを言わないのだ」

と余計に怒り出した。


「あたしのことは、良いのです。

レンさまを牢から出してください......」

懇願したが、姉はあたしの言葉に耳を貸さなかった。


---------------------------------


城にやって来た治療師は、あたしの喉の奥を見たり、背中や胸の音を聞いてうなずいた。

「しばらく安静になさってくださいね」


さらに治療師は、侍女に小声で耳打ちした。

「女王陛下に、妹君のことでご報告が......」


治療師が部屋から去ると、あたしはベッドから上半身を起こしてため息を付いた。


(あぁ......。こんな事してる場合じゃないのに。

今この瞬間も、レンさまは凍えるような牢獄で血を流していらっしゃる。

あたしは役立たずだわ)


しばらくすると、姉があたしの部屋にやってきた。


「イリーナ、具合はどうだ」

姉は眉間にシワを寄せ、心配そうに言った。


「大丈夫よ、お姉さま。

お食事中でしたのにすみません」


「あぁ......。イリーナ......」

姉は、ベッドの脇に座り込むと、あたしの手を握った。

「後生だから。

わたくしには、お前しかいない」

そう言って涙ぐむ。


姉の涙をみるのは、初めてだった。

ルーベン様がお亡くなりになったときでさえ、涙一つみせなかったのに。


「お姉さま、大丈夫ですわ。

それよりレンさまを......」

「レン・ウォーカーか......」


姉はため息を付いた。

「大勢の兵士の前でわたくしは、あやつに侮辱されたのだ」

姉があたしの目をじっと見て言う。


「やつに罰を与えないと、女王としての面目が丸つぶれとなる。

だが、もしも......」


「もしも?」

あたしは姉の言葉に首をかしげる。


「もしも、レン・ウォーカーがお前の未来の婿殿なのであれば、

このわたくしであっても手荒なことはできない。

レン・ウォーカーが婿候補であれば、身内のようなものだからな。

身内とささいな諍いが起きたのだと言うことにすれば丸く収まる」


「そんな......」

あたしは息を飲んだ。


「イリーナ。自分の気持ちに素直になるが良い。

欲しいものを手に入れるのだ。

お前には後悔してほしくない。

幸せになって欲しいのだ」

姉は身を乗り出すと、あたしの耳元でそう囁いた。


「レンさまを、牢から出してください。

あたしは......彼のことが好きです。

彼を婿に迎えます。

だから......お願い。出してあげて」

あたしは涙を浮かべて姉に言った。


「分かった、分かった」

姉はあたしの頭をゆっくりと撫でた。


(今は、レンさまと結婚するということを表明するしか無いわ。

そうしないと、彼は牢獄から出してもらえないのだから)




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