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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
王都にて_女王の狂気と大蛇の血
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【イリーナ】姉の告白


【イリーナ】


身体から血を流し、気を失ったレンさま。

杭に手足を縛り付けられたままの状態で、だらりと首だけがうなだれている。


「どうしよう。レンさまが死んじゃうわ」

あたしは恐ろしくてグレッグにしがみついた。


グレッグは

「女王陛下のところへ行こう。

そしてレンをここから出してもらうんだ」

と蒼白な顔をして言った。


-----------------------------


グレッグと二人で、姉の部屋へ行った。

だが姉は、教会の宗教行事に出ていて不在だという。


「いつ戻ってくるの?」

執事に尋ねると

「早くて夜になるでしょう」

と言う。


「レンのやつ......夜まであの状態だなんて。

せめて壁から下ろすように兵士に頼んでみよう」

グレッグがそう言うので、あたしはうなずいた。


二人で兵舎へ向かう。


ところが兵士は

「女王さまのご命令でない限り、なにもできません」

と言う。


あたしとグレッグは途方に暮れた。

と同時に、自分たちの力の無さを痛感した。


(兵士は、あたしやグレッグの頼みは一切聞いてくれない。

なんて無力なんだろう。

今まで考えもしなかったけど。

......あたしは、女王の妹なのに、この城で何の権限も持っていないのだわ)


--------------------------------------


グレッグは自分の屋敷に戻らないといけないので夕方頃、馬車で帰って行った。


夕餉の席でようやく姉と対面できた。

あたしは、食事には手を付けずに、さっそく姉に申し出る。


「お姉さま!!

レンさまを牢からすぐに出してください!!」


姉はあたしの言葉を聞いても、無表情でスープをすくった。


「レン・ウォーカーは、わたくしに対し、またしても反抗的な態度を取ったのだ。

罰を与えるになんの疑問もない」

と静かに言った。


「お願いです。

彼は鞭打たれ、壁に繋がれているんです。

夜は凍えるような寒さになります。

せめて壁からおろして欲しい......死んでしまいます!」


「あやつは、それくらいでは死なぬ」


姉はあたしをじっと見つめると言った。


「イリーナ。お前はレン・ウォーカーを好いてるわけではないのだろう?

ヤツを婿に迎えるという、わたくしの提案を断ったではないか。

......であれば、ウォーカーがどうなろうと、どうでも良いではないか」


「そう言う問題ではございません。

あまりにも酷すぎます」

あたしは、とうとう食卓の席から立ち上がってしまった。


壁際に並ぶ兵士の一人がビクッと肩を揺らした。


「わたくしは、亡き夫......ルーベンを愛してはいなかった」

姉が唐突にそんなことを言い出したので、あたしは驚いた。


「......えっ?お姉さま、何を言い出すの」


「イリーナ、お前も分かっていただろう。

わたくしは、ルーベンを愛してはいなかった。

当然、彼とは政略結婚であったからのう」

姉は、スープをひとくち、飲んだだけで他の食べ物には手を付けない。

ぼんやりと遠くを見ている。


「わたくしには、心から好いておる男がおったのだ。

だが、国のためにルーベンと婚姻を結んだ」


「....そう......だったの......?

でも今、その話に何の関係が......」


姉の言葉にあたしは戸惑った。

姉は何が言いたいのだろう。


「お前にはそんな思いはさせたくないのだ。

好きな男と結ばれて欲しい」

姉はそう言うと、ゆっくりと、あたしの方へ視線を向けた。


「レンさまのことは......確かに好きです。

でも彼の心は妻にむいています」


「そんなことは、どうでもいいではないか。

お前が好きかどうかが重要なのだ。

お前には好きな男と結ばれ、幸せになって欲しい」


あたしは首をブンブンと横に激しく振った。


「とにかく!!

今は、とにかく、レンさまを牢屋から出してください。

お願いです」

涙ながらに姉に懇願した。

あたしは大声を出し、興奮していた。


「......うっ」

とつぜん、息が苦しくなった。


「イリーナ?」

姉が目を見開き、食卓から立ち上がる。


「ゴホッ、ゴホッ」

あたしは咳き込んだ。

いつもの咳の発作だった。


口に手を当てて咳き込んだ。

苦しくて、口から何かを吐き出してしまう。


「イリーナ!!血が.......」

あたしの手にはべったりと血がついていた。


「だ、大丈夫です。ゴホッ!

......喉が、喉が切れたんだわ、大声を出したから......」


姉はあたしの言葉を無視して、執事に命じた。


「治療師とシャーマンを呼べ。

いますぐにだ」




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