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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
王都にて_女王の狂気と大蛇の血
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【イリーナ】姉の仕業


今朝、いつものように城にやってきたグレッグが、慌てた様子であたしの部屋に来た。


「大変だイリーナ。

レンが大変なんだ」

「えっ?なんなの?

落ち着いてよ」

はぁはぁ、と荒い息のグレッグをなんとか落ち着かせる。


グレッグは水をのみ、一息つくとようやく口を開いた。

「レンに、いつものように稽古をつけてもらおうと思ったら、どこにもいなくて。

兵士に聞いたら、女王の命令で投獄されたって言うんだよ!」


「えぇっ、レンさまが牢屋に?そんな。

どうして」


「分からない

あいつ、なにか盗んだのか?」

「バカね。レンさまは、そんなことしないわよ」


一体どうして......。

きっと姉の命令ね。

姉はレンさまを目の敵にしてたわ。


「僕、レンの捕らえられている牢獄に行ってみようかな」

グレッグがぽつりとつぶやいた。

「そうね......。行ってみましょう」

あたしは勢いよくうなずいた。


「兵士によると、レンは規律を破った兵士が入れられる罰則房にいるそうだ」


「罰則房......なんだか、怖い響きね」

あたしは罰則房になど行ったことない。

でもレンさまが心配だし......勇気を出して行ってみることにした。


------------------------------------


レンさまの捕らえられている牢獄は、兵舎のすぐ裏側にあった。


「イリーナはこの建物に入るのは、初めてか」

グレッグが震える声であたしに聞く。

怖がってるみたいだった。

「普段、用事がないもの。初めてよ」

あたしも怖かった。


入口を見張る兵士と目が合った。

「イリーナさま。こんなところに何の御用で」

兵士は目を丸くしている。


「レン・ウォーカーが捕らえられただろう。

様子を見たいのだ」


グレッグが一歩前に出て兵士にそう言ってくれた。

あたしはグレッグの巨体に隠れるようにして牢獄の建物をながめた。


兵士は

「あぁ......そうなんですか。

実は私どももびっくりしてるんですよ。

城の訪問客が、牢獄に入れられるなど......前代未聞でして。

でも今は彼を見ないほうが良いかもしれない」


「どうして?」

あたしは、不吉な予感がして兵士に詰め寄った。


「レン・ウォーカーの房からさきほど、拷問係が出てまいりました。

彼は痛めつけられ、傷ついているはずです」


「そんな......!!ご、拷問!?」

あたしは、びっくりして兵士の肩をつかんだ。


「......様子を見に行こう、イリーナ」

グレッグは、兵士を押しのけた。

あたしたちは、レンさまが入っている独房へと向かった。


----------------------------


「そんな!ひどいわ」


レンさまの姿を見て、あたしとグレッグは同時に「ハッ」と息をのんだ。


彼は牢獄の壁の杭に手足を縛り付けられていた。

頬には殴られたあとがある。

裂けた服の間から見える肌には、鞭打たれたような跡が見えた。


あたしとグレッグは独房の鉄格子にしがみついた。


「レン、大丈夫か!?」

「グレッグか。

悪いが今日は稽古できない」

レンさまが、腫れた目を薄く開けて、あたし達を見た。


「レンさま、一体何があったのですか」

「......女王に反発した。

しくじったんだ......」


「やはり、姉の仕業なのね。

すぐにここから出すように、姉に言います」

あたしはレンさまに向かって叫んだ。


「いや......一旦、女王の気の済むまで、俺はバツを受けたほうがいいのかも」

「何を言ってるんだよ、レン。お前は悪くないんだろ!」

グレッグも必死に、叫んでいる。


「女王の気が済めば......そうすれば......。

そうすれば、俺はアリッサに......会える......アリッサ」

レンさまはそう言うと気を失った。


「あぁ!!どうしよう」

あたしは恐ろしくてグレッグにしがみついた。

「アリッサって、彼の妻だよな。

レンは、家に帰りたいんだな......」

グレッグの目に涙が浮かんでいる。

あたしも泣きそうになった。


「大丈夫よ。あたしが必ず......姉を説得するから」



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