表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
王都にて_女王の狂気と大蛇の血
188/255

【レン】キレてしまう


【レン】


なるべく穏便に......当たり障りのない言葉のやりとりして......女王を満足させなければ。

そして、俺はアリッサのもとへ帰るんだ。


女王は王座にゆったりと座り......俺のことを見下ろしていた。

俺は王座から数段下がった床の上にひざまずいている。


「畏まるでない。

楽にしろ」


そう告げられたので、やや姿勢を崩す。


「レン・ウォーカー。

アリステリア城での生活は楽しんでおるか?」


「はい。十分に満喫いたしました。

ですので、何日も前から申し出ております通り......

そろそろベルナルド領へ戻りたく存じます」


「......なぜそう急ぐ?

王都テンザンの街でものんびり観光して回っておれば良いではないか。

お前が以前訪れたときよりも、店が増え賑やかになっておるのだぞ」


「私はベルナルドの領主です。

長い間、留守にするわけにはいかないのです。

それに残してきた妻が心配です。

まだ出産直後で.....」


なるべく反抗的にならないように静かな口調で言った。


「ほう。アリッサとは新婚だったな。

一刻も早く女房に会いたいか。

まるで盛りのついたケダモノだな」

ハハハと女王は軽蔑したように笑う。


くそっ。

耐えろ。

ここでキレたら、また城での滞在が長引くだけだ......。


火の魔法使いだったころは、こんなふうに人間の王に頭を下げるようなことは無かった。

あの頃は孤立無援であったとしても、一人で領地を守ることになんの困難も感じなかった。


だが今は......俺は人間である上に、アリッサの夫......ベルナルド家の当主だ。

王女の持つ軍隊に攻め込まれたら、ベルナルド家などあっという間につぶされる。


領地......そして何よりもアリッサを守るためだ。

俺は自分よりも位の高い人間に頭を下げなければならない。

そしてうまく立ち回らなければならないのだ。


だが、女王の次の言葉に俺は自制心を失った。


「お前......アリッサと離婚してイリーナの婿になれ」

「!?」


驚いて思わず、立ち上がってしまった。


「なにを......言っているんですか」

「イリーナはお前を気に入っているようだ。

あの娘の望みをなるべく叶えてやりたいのだ。

よいだろう?」


「冗談じゃない!!」

強い口調で女王にむかって反論してしまう。

言ってしまってから後悔する。

(くそ。もっとやんわりと断るとかすれば良かった)


「ガシャン!!」

一番近くに立っていた兵士が、長い槍を構え直し、俺の首の根元に突き刺す構えをした。


「よい。こやつは、自分の感情を抑えるのが苦手のようだな。

長年、火の魔法使いとして自由を謳歌してきたからだろう。

それに、短気なところがある。

そこがまた、可愛いのかもしれんがな」

女王は兵士の動きを制する合図を出した。


「イリーナのことが気に入らないのか」

「そ、そうではなく!!

アリッサを愛しております」


「ほぉ......よその男の子どもを孕んだアバズレ女のことをか?」


「くそアマ!!もう一度言ってみろ!!」


俺は、その場からダッシュして女王に掴みかかろうとした。


だがもちろん、謁見の間にいる数十人を超える兵士に一気に取り囲まれる。


「手を出すな......。イリーナの婿になるかもしれない男だぞ」

女王がサッと手を上げる。

兵士たちは俺から身を離した。


「どうやら、お前には教育が必要なようだな......。

花嫁修業ならぬ、花婿修行だ......ハハハ」

女王の笑い声が謁見の間に響く。


「牢屋に入れておけ」


俺は兵士たちに引きずられるように謁見の間から連れ出された。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ