表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
王都にて_女王の狂気と大蛇の血
180/255

【レン】子どもが欲しい


【レン】


王女の住まう城……アリステリア城の謁見の間に呼ばれたのは、城に到着した2日後だった。


そちらから呼びつけておいて、こんなに長く待たせるとは。

一刻も早くアリッサのもとに帰りたいのに......と、俺はいくらかイラ立っていた。


天井が見えないくらい高く、広々とした謁見の間。

真紅の細長い絨毯の両側には、まるで置物のように微動だにしない兵士が並んでいた。


王座に鎮座した女王スザンナ・アリステリアは、俺を上から見下ろしていた。


「ひさかたぶりではないかの?

レン・ウォーカー」

「……はい。南部で内乱が起きた際、お目にかかって以来かと存じます」

冷たい床にひざまずいた。


「まわりくどい挨拶はやめにしよう」

スザンナはため息をつくと言った。


「レン……お前はアリッサ、ベルナルドと婚姻したな」

「左様です」


「アリッサとの間に生まれた子どもがおるな?」


「はい。リチャードと名付けました」

女王との会話がどういう方向に行くのか分からずに、戸惑う。


......俺は女王スザンナが次に言った言葉に驚愕することになる。


「名前などどうでも良い。

わたくしは、その子どもが欲しいのだ」


「……えっ」


なぜ、女王がリチャードを欲しがるんだ?

訳がわからなかった。


「まだ生まれたばかりの赤子です。

なんの役にも立ちません」


「なにを言うておる。

その赤子は、かの有名な大蛇の血を引く子どもだというではないか」


驚いた。

どうして女王がそのことを知っているのか。


リチャードは表向き、俺とアリッサの間にできた子どもとして育てていた。

あの子が実は大蛇の血を引いた子どもだと知るのは、わずかな人間のみのはず。


アリッサの両親の二人と、アリッサ自身。

それに俺……。


「なぜ、わたくしが、知っているのかを、いぶかっておるな」

スザンナは、クククと歪んだ笑みを浮かべた。


「わたくしのイヌは各領地にいるのじゃ」


イヌというのはスパイのことだろう。


使用人か。

産婆か。

乳母か。


スパイはリチャードの背中のウロコを見た乳母なのかもしれないし、アリッサと両親の会話を盗み聞いた側近かもしれない。


とにかく、どこかから、話が漏れてしまったのだ。


「リチャードは普通の子どもです。

なんの魔力も持っておりません」


「それは、わたくしが決めること。

無理やり赤子を奪っても良いのだぞ。

お前はルーベンと親しくしていた。

だから特別な慈悲でわざわざ、お前に話しておるのだ」


「……断れば力ずくで奪うということですね?」


「そうだ。

ハハハッ。その子どもは自分の血を引いた子どもではないのだから構わないだろう?

アリッサとあらたな子づくりに励めばよいではないか」


「......お言葉ですが、アリッサがリチャードを愛しています」

俺は女王の目をキッとにらみつけた。


女王はリチャードを奪って、何がしたいのか。

どうせロクでもないことだろう。


まずは女王の真意を図らなければ......俺はそう思った。


「ハハハ......その反抗的な目。

わたくしに、そのような目を向けるのは、もう妹のイリーナとお前くらいのものだ。

お前は、魔力を失ったとはいえ、火の魔法使いとして君臨していたころの勢いは残っているのだな」


「......」

俺は無言でスザンナをにらみ続けた。

両脇に立つ兵士の一人が、カチャッと音を立てて剣を握り直す。


女王が命じれば、俺の首はこの場で簡単に切り落とされるだろう。


「よい、よい。急ぐ話ではないのだ」

スザンナは剣を握り直した兵士を手で制した。


「生まれたての赤子を無理に動かせば、命を落とす危険もある。

それでは困るのだ。

......1年後か、2年後か。

その赤子が十分に育ち、旅に耐えうる身体になったのち、この城に連れてくる.......。

それでも間に合うはずじゃ」


女王はそういうと、冷酷そうな顔で微笑んだ。


(......間に合う?一体何を言ってるんだ)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ