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【ディル】嫉妬


【ディル】


ジョアンナが嘘をついていた。

そんなまさか......。


(ジョアンナは俺と、ニナの仲を引き裂こうとしていた......?)


そう言えば思い当たるフシはあった。

彼女は風呂に入り込んできたこともあったし、妙に馴れ馴れしい態度をとることもあった。


あれは俺のことを誘惑しようとしていたのか。


(正直言って、もうジョアンナのことを信頼できないな)

頑張って働いてくれていると思っていたジョアンナが......俺たちをダマしていたなんて。

開いた口がふさがらない。


だが俺は、ニナの言葉にもっと驚くことになる。


ニナは

「私はカークと......彼と二人で闇の森に行ったの。

ディルには内緒でね。

カークのヒザの上に座ったのよ。そして身体を触られたの」


そんなことを言いだしたのだ。


-------------------------------------------


「ニナ?どういうことなんだ。闇の森に行ったのか?俺に黙って?」

俺がそう尋ねると、ニナはコクンとうなずいた。


彼女の手が震えているのに気がついた。


「あたしもジョアンナと同じよ......嘘をついたの......」

「どうして俺に相談してくれなかった?」


「ごめんなさい」

ニナは下を向いている。


「それで?カークのヒザの上に座ったとか、身体を触られたっていうのは?

無理やりなのか?」


ニナの身体をじっと見る。

彼女がカークに触れられていた。

嫉妬で頭の中が混乱する。


「無理やりじゃないわ。自分からカークのヒザの上に座ったの」

ニナが小さな声で言う。

ニナの言葉に、俺の頭は真っ白になる。


「そんな。ニナ。

ヤツのことが好きだったのか」

俺がそう聞くとニナは即座に

「嫌いよ」

とキッパリ答えた。

「じゃあ、なんで......」


説明が苦手なニナの話を少しずつ聞き出した。


ニナは俺に黙って闇の森に行った。

そのことを俺に報告されたくなければ、言うことを聞けと、カークに脅されたのだった。


「ニナ......どうして言ってくれなかったんだ」

「ごめんなさい」

ニナはまた謝った。


ジョアンナが口を開いた。

「ニナの嘘はそれ一回だけでしょう?

あたしは、何度も息をするように嘘をついてきた。

このお屋敷を出ていかなければいけない」


「いやよ、ジョアンナ。行かないで。

ジョアンナは、盗賊団に襲われても、途中で逃げ出さずに残ってくれたわ」


「途中で逃げ出すつもりだったわ」

「でも逃げなかったじゃない」


ニナは床にひざまずくジョアンナの両肩に手をおいて、説得している。


ジョアンナは本当に心を入れ替えたんだろうか。

信じて良いものか......。

判断がつかない。


「しばらく考えさせてくれ」

俺はジョアンナに告げた。


--------------------------------


「ディル......お、怒ってるわよね」


ジョアンナが執務室から出ていったあと

ニナが恐る恐る、震える声で俺に聞いてきた。


ニナのことを見つめる。

怒っていると言うよりも......ショックだった。

彼女が、俺に嘘をついていたこと。

カークにされたことを、俺に黙っていたことも.......。


「ニナはあいつに、どこまで触られたんだ?」

「えっ、どこまで?」


「服の上から触られたのか?どれくらいの時間?」

「森では服の上からよ」

ニナが恥ずかしそうに俺から目をそらす。


「森では......って、他にもあるのか!?」

「その......盗賊団が屋敷に来たとき.......カークにつかまってしまったの。

両手を後ろに縛られて......」


俺から目をそらすニナの顔に手を触れる。

アゴをグイと持ち上げて、俺の方にニナの顔を向かせた。

でも彼女は、目をそらせたままだった。


「ディル......怒らないで。ごめんなさい」

「怒るわけないだろう。

……それで?手を縛られて……?」

「それで......服を脱がされて」

ニナは頬を赤くした。


「脱がされた?まさか」

「胸を直接触られたわ」

ニナが早口でそう言った。


嫉妬で頭の中がおかしくなりそうだった。

「あの野郎......もっと苦しめて殺せばよかった。

俺のニナにひどいことをしやがって」


カークは俺に向かって剣を抜いて戦いを挑んできた。

だから、魔法を使わずに、正々堂々と武器で奴を倒したのだった。


「えっ?殺す?カークや盗賊団は、領主さまのもとへと、連行されたんでしょう」

「あっ......いや......そうだった」


俺も「嘘つき」だ。

ニナに、嘘をついている。

本当は盗賊団、全員を殺したというのに.......。


「ニナ......ニナは俺のものだ。

誰にも渡さないし触れさせたくない。

もうこんな思いをニナにさせたくない」

俺は彼女の脇の下に手を差し込むと、ヒョイと持ち上げて自分の足の上に座らせた。


「そうよ......あたしはディルの奥さんだもの」

ニナは俺の首にぎゅっと抱きついた。

そしてようやく、目を合わせてくれた。


「私に触れられるのは、ディルだけ」

そういうと、ニナは俺に軽いキスをした。


「すごく愛してるんだ......ニナはそれが分かってない」

キスをして、俺から離れようとするニナをぎゅっと抱きしめた。

「ディル、痛いわ」

彼女の頬と頭をつかんで、激しくキスをする。

「ん......デ、ディル」

ニナは苦しそうに大きく息をついた。


「ニナは屋敷から出たらいけない。

ずっと安全な場所にいて欲しい」

「......」

俺がそう言うと、ニナは悲しそうな目で、俺を見つめ返した。

「もう......ディルに嘘をつきたくないの」

「そうだな......つかないで欲しい」

俺はニナの腰をぎゅっと抱きしめて自分の体に押し付けた。


「だから本当の気持ちを言うわ......。

私は闇の森で植物を収穫したり、薬草を探したり......そういう仕事をしたいの。

そう思っているの......」


「ニナ、それは......そのことは、後でゆっくり話そう?」

俺はそういうと、彼女の服のボタンを外し始めた。

「ディル、だめ。いま聞いて欲しい」

ニナは、ボタンを外す俺の手をつかんだ。


「俺はずっと我慢してきた。もう無理だ」

彼女の首筋にキスをする。

「あっ」

ニナが身体をビクッと動かして、うめいた。


「お願い、ちゃんと聞いて」

ニナは突然、俺を突き放すと、ソファから立ち上がった。


「闇の森で働きたいの」

「それは......それは許すことは出来ない」


俺がそう言うと、ニナはまた悲しそうな目をした。

「どうしても?」

「どうしてもだ」


「ディルのバカ......」

ニナは涙をためると、後退りし始めた。

そして部屋から出ていってしまったのだった。



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