【ニナ】着替え
【ニナ】
「......ん」
目を覚ました。
「大変だわ!」
私......とうとう気を失ってしまったんだわ!!
盗賊団が、蔵から出てきてしまった!!
起き上がってキョロキョロとあたりを見回す。
(えっ......。ここは、いつも寝ている寝室だわ)
私......助かったの!?
ふと、ベッドの隅っこに、ディルの金髪が見えて驚いた。
ディル!?
何度も目をこすって、確かめたけど......間違いなくディルの金髪だ。
(ディルだわ.....。
彼が予定より早く帰ってきてくれて、盗賊団をやっつけてくれたってこと!?)
ディルは、ベッドの端っこに頭を伏せて眠り込んでいる。
彼の金髪にそっと触れた。
「ん......」
ディルが呻く。
(いけない、起こしちゃったわ)
「ニナ、気がついた?
気分はどう」
ディルの赤い瞳が不安そうに揺れる。
「うん。大丈夫」
私は彼に笑顔をむけた。
......そうだわ!
急に、現実が波のように押し寄せて、私はディルの腕をつかんだ。
「ジョアンナは?ティナは?二人は無事なの?」
「ふたりとも無事だ。
ティナは、腕を折られて重症なんだけど。
2ヶ月もすれば回復するって医者が言ってた」
「まぁ!腕の骨を!?」
私は、ベッドから抜け出そうとした。
「ティナの様子を見に行かないと」
「だめだ!ニナは、もう少し寝てないと」
ディルが私の両肩を押さえつけて再びベッドに寝かせる。
「......ジョアンナは?!大丈夫なの?」
「ジョアンナは、頬を殴られてアザができているが、元気だ」
「よかった......」
心から安心した。
「盗賊団の人たちは?ディルが捕まえたの?」
私がたずねると、ディルはふいに私から目を逸らした。
そして
「捕らえた。全員、領主のもとへ連れていき、法の裁きを受けるだろう」
と小さな声で言った。
「そうなのね」
体の力が抜け、目をつぶる。
「ディル......また心配させるようなことになってしまったわね」
私は毛布を鼻の下までかぶって、ディルをそっと見つめた。
「俺が悪いんだ。
屋敷を留守になんか、するんじゃなかった」
「私が弱いせいよね。ディルの足かせになるのは嫌だわ」
思わず、そんな言葉が出てしまう。
そんなことを言ったって、ディルを余計に困らせるだけなのに。
「何か食べる?」
「......ううん、もう少し眠りたい」
空腹よりも眠気が酷かった。
私はディルの方に手を伸ばした。
「お願いがあるの」
「なに?」
彼の腕をつかむと、言った。
「ディルと一緒に眠りたいの」
私がそういうと、ディルは優しく微笑んで、ベッドにそっと足をかけた。
そして、私の背中側に横になると、後ろからぎゅっと抱きしめた。
「さぁ、もう少し寝よう」
(ディルの身体......暖かいわ。私は水を頭からかぶって、とても寒かった)
そこで気づく。
「私......ディルの寝間着を着てる......。
それに......し、下着を身につけてないわ.......」
自分の身体を調べて、軽くパニックになった。
ディルが耳元で言った。
「ニナは下着までずぶ濡れだった......だから俺が着替えさせた。
そう言いながら、うなじにキスをしてくる。
「ニナの寝間着がどこにしまわれているのか、分からなかったから、俺の寝間着を着せた。
下着を着せてないのは......下着の場所も分からなかったんだ」
頬に血が上るのを感じる。
「ディルは、私の裸を見たの......」
恐る恐る、そう聞いた。
「ニナの肌は冷え切っていて、濡れていた。
俺は温めないといけないと思って、焦ってた。
ほとんど見てないよ」
ディルはそう言いながら、私を抱きしめた。




