【ジョアンナ】どうすべきか......
【ジョアンナ】
あいつらを焼き殺してしまえば、すべて終わりにできるのに。
ニナは「燃やすなんてできない」と言って、魔法を唱え続けている。
(ニナは、そのうち力尽きるわよね......どうしたらいいのかしら)
とりあえず、盗賊団たちに捕まえられ、縛り上げられていたゴブリンたちの拘束を解いた。
「あんたたちは、ほんっとに役立たずなのね!」
「ひぃー、ピギー」
ゴブリンたちは訳のわからない言葉で泣き言を発している。
ゴブリンを縛り付けている、ロープをナイフで切り落とした。
「あっ!!ちょっと!どこ行くのよ!?」
「ピギー!!」
拘束を解いたとたん、ゴブリンの大多数が、泣きながら走って逃げ出してしまったのだった。
やつらは屋敷の裏門めざして、一目散で逃げ出していく。
「使えない奴らだわ」
思わずため息が出る。
残っているゴブリンは、わずか5体になった。
だがこの5体も震えている。
「ほら!!ニナの援護をしなさいよ」
5体のゴブリンをけしかけて、蔵の周囲を守らせた。
蔵の壁を壊して脱出する奴が、いないとも限らない。
そのとき、男の叫び声がした。
「くぉおおおおおおお!!」
「なんなの!?」
蔵の正面、ニナが魔法を唱え続けている場所へ視線を走らせる。
無謀な男が一人、炎をくぐりぬけようと、ダッシュしたのだ。
「あっ!!ダメよ」
ニナが男を静止する。
通常の炎であれば、火の中をくぐり抜けることも可能だろう。
多少のやけどで済む可能性も高い。
だが.......。
「うわぁああああああ」
火柱に体が触れたとたん......男の身体が激しく燃え盛った。
男は火柱のこちら側に転がってきて、熱さに苦しみのたうち回っている。
「あぁ.....っ。ど、どうしよう」
ニナが動揺している。
「ニナ!!見ないようにしなさい。
とにかく魔法を唱え続けて!!」
あたしが叫ぶと、ニナは震える声で呪文を再び唱え始めた。
「くそっ。あの炎は突破できないようだ」
火柱の内側にいる男たちが、ざわめいている。
「あいつ、焼け死んだぞ。
どうやら、少しでも炎が体に触れれば、オダブツのようだ」
「なぁに、いずれ、あの女は力尽きる。そうなりゃスキができるさ」
そんな声も聞こえた。
「そうだな。
おい、蔵の中で、宝を山分けしようぜ?
そうしてるうちに、女が力尽きるさ」
ボスの声も聞こえた。
火柱の向こうの男たちは、扉の内側......蔵の中に戻っていった。
だが、扉のところに、見張りを一人置いていった。
その見張りは、ニナが力尽きるのを、今か今かと、見つめているのだった。




