【ジョアンナ】そんなの無理
【ジョアンナ】
屋敷が盗賊団に襲われた。
生き残るにはどうしたら良いか。
あたしは計画を立てた。
まずは盗賊団の仲間になったフリをする。
そしてスキを見て、ニナの拘束を解いて、彼女の火の魔法で盗賊団をやっつけてもらう。
それだけのシンプルな計画だった。
ニナに賭けるしか無い。
結局この中で一番強いのは、火の魔法使いである「ニナ」のはずだしね。
彼女に賭けるしか生き残る道はない。
万一、彼女の拘束を解くスキができなかったら?
そうしたらプランBの実行。
盗賊団の仲間のふりをし、奴らに媚びを売って(必要ならセックスもしてやる)
そして、逃げ出すチャンスを伺う。
気が乗らないしゾッとするけど、それしかない。
盗賊団の全員が、蔵に入った瞬間。
チャンスだと思った。
あたしはニナに自分の命を「フルベット」した。
それなのに。
このバカ女は、涙を流して震えているだけ。
「なにしてんのよ!!」
ニナの肩を強く掴んで、彼女のことを激しく前後に揺すった。
ミシッ!ミシッィッ!!
木の棒の割れ目が広がっていく。
もうじき、扉がやぶられ、男たちが飛び出してくる。
「さっきも大広間で、大勢の男に犯されそうになってたじゃない!!
今を逃したら、あんたは、完全に最後までいたぶり殺されるわよ」
ニナを激しくゆすり続ける。
彼女は放心したような目で、蔵の扉を見続けるだけだった。
そうか。
犯されるのがどんなことか、分かってないのね。
つくづくアホだわ。
どうしたらいいの。
バシーン!!!
あたしの手が勝手に動いていた。
ニナの頬を強く叩いたのだ。
彼女は後ろによろけて、血しぶきが少しとんだ。
たぶん鼻血が出たんだろう。
ニナは頬に手を当てて、あたしのことを大きな目で見つめた。
我に返ったような顔だった。
「扉がやぶられる.......!」
あたしは、隠し持っていたナイフを構えた。
どうせ死ぬなら、一人くらいは殺してから死んでやる。
そのとき、ニナが両手を大きく振り上げ、なにか呪文を唱え始めた。
ボッ!!!
真っ青な背の高い火柱が立つのと、蔵の扉が蹴破られたのは......ほぼ同時の出来事だった。
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蔵の扉が開いた。
だが、男たちは蔵から飛び出してこれない。
ニナの魔法でつくった「火柱」が彼らの前に立ちはだかっていた。
扉の周囲を囲うように、半円を描いて火柱が隙間なく立っていた。
ニナは目をつぶって、ブツブツと呪文を唱え続けている。
「ニナ!!やったわ。奴ら、身動きできない」
ニナは呪文を唱えたまま、私の方にチラッと視線を向けた。
「さぁ!奴らを燃やしちゃいなさいよ。あんたを傷つけようとしたのよ。
奴らは、庭師の爺さんのことも殺したわよ。あたしは見てた」
火柱の前で身動きが取れず、固まっている男たちを指差す。
ニナは、あたしから蔵の扉付近にいる男たちへと視線をうつす。
彼女はまた、あたしの方へ首を向けると、左右に首をゆっくりと振った。
「えっ!!まさか、殺さないつもり?」
「できない......。ジョアンナ、できないわ、人を生きたまま燃やすなんて」
ニナは涙を流しながら、絞り出すような声でそう訴えた。
「バカ!!やらなきゃ、やられるのよ」
「できないわ」
ニナはその言葉を繰り返した。
「ニナ、火が弱くなってる」
火柱の背が低くなったので、慌てて、あたしは彼女に声を掛けた。
彼女は急いで、火柱の方へとむきなおり、呪文を唱え直す。
「じゃあ、どうするのよ?
ディルさまが戻ってくるまでこれを続けるつもり?」
ニナが少しでも注意をそらしたり、呪文が途切れると、火柱の勢いが弱まるようだった。
火柱の高さが低くなると、盗賊たちが飛び越えてこっちにやって来てしまう。
「ニナ、よく考えるのよ。ディルさまが戻るまで、あと2日もある。
2日間、寝ないで、このまま呪文を唱え続けるつもりなの?!」
あたしは大声で叫んだ。
「あんたは体力がないんだから!!そんなの無理よ」
「でも......でも......やるしかない」
ニナは、あたしの瞳をじっと見つめ返したのだった。




