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【ニナ】しきたりを守る


ジョアンナとたくさん喋って、私はすっかり気分を良くしていた。


彼女と出会ったときは、なんとなく仲良くなれそうにないかも......なんて思ったけど。


そんなことないわ!

ジョアンナと話すのは、とても楽しかった。


それにしても。


「裸を見せたらオシマイです。離婚することになるかもしれません」


あの言葉。

そんなの全然知らなかった。


そんな......しきたりがあるなんて。


そうだわ。

普通は母親が教えてくれるものなんだろう。

私の母は、幼い頃に亡くなってしまったから.....だから、教わることが出来なかったんだわ。


でもジョアンナのお陰で、知ることができてよかった。


----------------------------


早速その夜、ピンチがやって来た。

ディルがいつになく激しくキスをしてきた。


彼は寝室に入ってくるなり、私を抱きしめた。

彼に強く抱きしめられて、身動きができないほどだった。


「ディル、苦しいわ」

彼の胸に頬を押し付けて抗議した。

でもディルは構わず、私のおでこやまぶたにキスをする。


「どうしたの?」

「理由がないと、妻にキスしちゃダメなのか」

ディルは、そう言うと私の目を見つめる。


「そんなこと無いけど、なんだかいつもと違うわ」

「......ヴェッセルの街の......いつも薬草を買い取ってくれる商人がいるんだけど」

ディルは私から目をそらすと、遠くを見た。

「その商人の奥さんが、病で亡くなったんだって言うんだ。

ついこないだまで、夫婦で仲良く店を切り盛りしていたのに」


「そうなのね」

ディルはショックを受けているんだわ。

可哀想に。


背伸びしてディルの髪を優しく撫でた。


「心配要らないわ、私の身体は丈夫なの。

風邪もめったに引かないし.......あっ」


ディルがキスをして私の口をふさいだ。

彼の舌が私の口の中をさぐる。


「んっ......ディル......なんだか」

彼がようやく唇を離してくれた。

「ニナ......。愛してる」

ぎゅっと抱きしめられ、首筋や耳元にキスされる。


「ディル、なんだか立っていられない。

ベッドまで運んで」

なぜだか足がカクカクして、立っていられなかった。

彼はうなずくと、私を抱き上げる。


いつものようにベッドにそっと降ろされた。


「ニナ.....」

彼はベッドの上で、馬乗りになって私の瞳をのぞき込む。


私は彼の方へと両手を伸ばした。

「心配しないで。ディル」


ディルは私に覆いかぶさり、私の手が彼の両頬にふれた。


また激しくキスをする。


でもそこで、彼が私の夜着を脱がせようとしているのに気がついた。


「だめよ!!」

私は驚いて、彼の抱擁から逃れた。

そして上半身を起こし、慌ててはだけた夜着をなおした。


「どうしてだめ?」

ディルは首を傾げて私を見ている。


「だめなのよ......?ディルは知らないの?」

私はベッドの端っこまで後退した。


「ニナは俺のこと......好きじゃない?」

「好きよ。愛してる」


「......だったら、どうして嫌がるんだ」

ディルはそう言って、ベッドの隅っこに逃げた私に近づこうとする。

私はさらに隅っこに逃げて、身体を小さくした。


「嫌に決まってるでしょう。

しきたりを守らないと離婚になるわ」


「えっ。しきたり?離婚?なにを言ってる?」

ディルは目を見開いて、驚いている。


ディルは男の人だから、しきたりについて知らないんだわ。


「裸はダメなのよ。しきたりなの」

私はディルにきちんと説明した。


「......分からない。

怖いのかもしれないけど、大丈夫だから」

ディルはそう言うと、私の方へ両手を広げた。

こっちへおいで......と言うように。


でも私は首を横にふると言った。

「もう寝ないといけないわ」

毛布を手繰り寄せてその中に潜り込む。


ドキドキと心臓が高鳴っていた。

危ないところだった。



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