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【ジョアンナ】肌を見せてはいけない


「ベルナルドのお屋敷で、ディル様と知り合ったのですか。

ディル様はもともと兵士だった......?」


ニナの話は、まとまりがなく、説明が下手くそなのでワケがわからなかった。


「そうよ。もともとディルは火の魔法使いじゃなかったの。

ベルナルド家のアリッサとお兄様の婚姻の儀があってね。

それで私は、アスラルからはるばるこの地へやって来た。

そうだわ。あの話もしないと!

私は悪い人に誘拐されてしまったの!

その男はゴーレムをつかって......」


「ちょっと待ってください。

理解が追いつかない」

あたしは片手を上げて、ニナの話にストップをかけた。


混乱した。

彼女の話を聞けば聞くほど、なんのことやらワケがわからなくなってきた。


(この女、説明が下手すぎる。

思った以上に頭が弱いのかもしれない)


「......というわけで、私はディルと、この闇の森を守ることになったの!」

「はぁ.......」


何がどうなって、この森を守ることになったのか......?


ニナは満足そうに笑っているけど、あたしには、彼女の話の半分も理解できなかった。


「北部を支配する名高きベルナルド家のアリッサ嬢の夫が、ニナのお兄様なのですね?」

話の断片から、分かったことをニナに聞き返す。


「そうよ。

お兄様は、アリッサを大蛇から守ったの。大蛇はね」

ニナがまた嬉しそうにワケのわからないことを説明しだした。


「ストップ!大蛇のことはとりあえず、いまは良いです」

これ以上、情報量を増やしたくなくて、あたしは、ニナの言葉を止めた。


「あら、大蛇の話はそれじゃ、また今度にするわね」

ニナは少し残念そうに口をとがらせる。


「ディル様はベルナルド家を守る兵士だった.......。

一般の兵士が、どうして火の魔法使いになったのですか」


「それは、さっき説明したじゃない。

お兄様から出た赤い火の玉が、ディルを受け入れたのよ」


「......はぁ......?」


やはりワケがわからない。

とにかくディルさまは、もともとは「普通の人間」だったんだわ。


------------------------------------


「ジョアンナは.......もう恋人は作らないの」

ニナが、またモゾモゾと体を動かしながら恥ずかしそうに聞いた。


(ま~た、恋バナ?)

あたしは呆れ返って、彼女の顔を見る。

金さえあれば、愛だの恋だのなんて、どうでもいいだろうに。


いや、金があるからこそ、そちらに刺激を求めるのか?


「あっ!ごめんなさい。

マークのこと......忘れられないものね......。

変なこと言ったわ。ほんとにごめんなさい」


あたしの歪んだ表情を見て、ニナが慌てて謝る。


「マーク......?

あぁ、マークですね。彼のことは......もう大丈夫です」

マークって誰だっけと一瞬考えて、焦ってしまった。


「言いよってくる男は多いんです。

こないだも街で求婚されましたけどね」

また、ペラペラとでまかせを言った。


「すごいわ。ジョアンナ。

その......言いにくいこと、聞いても良い?」


ニナが顔を赤くして、うつむいた。


「何でも聞いて下さい」

どうせロクでも無い事だろうと思った。


「男の人は、愛してる女性の肌をみたがるの?」

ニナは、小さな声でそう言った。


「......はぁ?」

一瞬彼女が何を言っているのか理解に苦しんだ。


「肌を見たがる?」

オウム返しに聞き返す。


「......変なこと聞いたわ......なんでもないの」

ニナは顔を真赤にしてうつむいた。


「ニナ。

もしや、ディル様が、ニナの肌を見たがったのですか?」


「......」

ニナは頬を赤く染めたまま、コクンとうなずいた。


「それで、見せたのですか」

あたしは、畳み掛けるように聞く。


「い、いつの間に服が脱げていたの。

ディルが脱がせたんだわ、キスをしていて気づかなかったの」


「それで」

あたしは身を乗り出した。


「恥ずかしいし、触らないで欲しい......って彼に伝えた。

そしたら、彼はすこし悲しそうにしてたの」


あたしは、ソファから実際にずり落ちた。

(それは、ディル様が可哀想過ぎる)


この女はディルさまに身体を許していないんだわ!

結婚しているというのに信じられない。


でもあり得る。

この女ならやりかねない。


これは、利用できると思った。


「ニナ。それは正しい判断です。

それ以上、服を脱がされなくてよかった」


あたしがきっぱりとそう言うと、ニナは目を丸くして顔を上げた。


「なぜ!?」

「裸を見せたらオシマイです。離婚することになるかもしれません」

「り、離婚!?」


ニナは後ろにのけぞった。


「そんな......そんなこと、誰も教えてくれないから......」

「普通の家庭教師は教えてくれませんものね」


あたしはニナの驚く顔を見て、ニヤリとほくそえんだ。


「でも......どうして。なぜなの。

裸を見せると、どうして離婚になるの......」


ニナは不安そうに目を見開いたまま、あたしに問いかけた。


「古いしきたりなのです。

そうだ。

ディル様に、間違っても、私がこんなことを言っていたと話さないでくださいね」

「な、なぜ」


「私が悪者になってしまいますからね。

私はディル様にこの屋敷を追い出されたら困るんです。

男性は理性を失うと、妻の裸を見たがる。

妻は絶対に見せてはいけない......これは古くからのしきたりなのです!」


あたしは、ニナに言った。


ニナは真面目な顔をしてコクリとうなずいたのだった。



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