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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
アリッサのお腹の子どもと火の魔法の継承
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【ニナ】


【ニナ】


ゴーレムとの戦いから1週間が経とうとしていた。


コンコン!


ディルの部屋をノックする。

なぜだか心臓がドクンドクンと高鳴る。


「ニナ!」

ディルは頭と身体を包帯でグルグルに巻かれていた。

彼の顔は青あざ、切り傷だらけだった。

ベッドから起き上がり、上半身を起こそうとしている。


「ディル!!起き上がったらダメよ」

私は慌ててベッドに走り寄って、彼の両肩を押した。


ディルは2日ほど意識がない状態で死の淵をさまよっていたのだ。

助かったのが奇跡的。

彼の意識が戻ったとき、私はどんなに嬉しかったか。


ベッドサイドの椅子に座って彼の碧い瞳をじっとみつめる。

「なんだよ?なんか付いてるか?」

ディルはそう言って私の目を見返した。


「ごめんなさい......私のせいで、こんな目に合わせてしまって」

ディルの手をそっと握りしめる。

そしてその手にキスをした。


しばらく無言で見つめ合ったあと、ディルが口を開いた。

「ニナは魔力を取り戻した。

それもかなり強力な魔力だった。

もう、ニナを狙うバカな奴は現れないな」


「あれから、お父様と訓練をしてるの。

魔力をだいぶ調整できるようになってきているのよ」


最初は大きな爆発や炎しか出せなかったけど、訓練するうちに力の調整もできるようになってきていた。


「俺の役割は終わりだな」


そんなディルの言葉に、私はびっくりして彼に視線を戻した。

「役割は終わりって?どういうこと......」


「ニナには、もう護衛は要らない。

......そうだろ?俺は用済みだ」

ディルが寂しそうに笑う。


「ダメよ!」

私は即座に叫んだ。

「ディルは一生、私の護衛よ。

ディルがそばにいてくれないと、きっとまた魔法が使えなくなる」

「ニナ......」


ディルは片手を私のほうへと伸ばした。

そして私の頬に触れる。


「ニナは強いじゃないか。ひとりで大丈夫だ」

彼の温かい手のひらが、私の頬を優しく撫でた。


「いや......そんなこと言わないで。

私は強くないわ」

彼の突き放すような言い方に、思わず涙がこぼれる。


私は彼の方に身をかがめた。

彼の顔に自分の顔を近づける。

そして唇にそっとキスをした。


唇を離すと、彼の目をじっと見つめて言った。

「ディル・ブラウン

愛してます。私と結婚してください」


ずっと考えていたことだった。

こんなに愛する人は、もう見つからない。

このさき、長く、長くどこまでもつづく道をずっと一人きりで歩くのなんて想像できない。


「ニナ......でも」

ディルがまた、何か言おうとした。

私は急いで彼の口を、自分の口でふさいだ。


「私はあなたを離さない。ずっと一緒よ」

「ニナ......」

また彼の口をふさぐ。


「まて、俺にも言わせてくれ」

彼は、キスが終わるとあわてて何かを言おうとした。


「だめよ。言わせないわ。反対意見はなし」

「ちがうんだ.......あっ......」


私は何度も彼にキスをして、何も言わせないようにした。


「ニナ、ストップ!!」

ディルはキスしようとする私の両頬をつかむと、おしとどめた。

「ディル、お願いよ......」


私は、涙を浮かべて彼に懇願する。


ディルはきっと私との結婚を断るつもりだわ。

だって、彼はこんなに素敵なんだもの。

私とは釣り合わない。

私は、気味の悪い魔法使いなんだもの.....。


でもディルは明るく笑うと言った。


「俺もニナのこと愛してる......そう言いたかったんだ」



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