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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
アリッサのお腹の子どもと火の魔法の継承
120/255

【ニナ】


【ニナ】


ゴーレムに握りしめられて、苦しむディルの顔を見た。

彼は口から血を吐き、目が大きく見開かれている。


ディル!!!


あぁどうしよう。

ディルが死んでしまう!!


ディルを失いたくない!!


そう思ったら、自分の中の「なにか」が弾け飛んだ。


お母さんが死んで以来......自分のなかで封印していた何かが、壊れたのだ。


「ニナ、可愛いニナ。

お母さんとお散歩に行きましょうか?」

お母さんはそういうと、温かい手をそっと差し伸べてくれる。


「パンケーキを焼いたわよ。

おやつにしましょう?」

いい匂いのするキッチンで微笑むお母さん。


優しかったお母さん。

お母さんは私のせいで死んだの。


自分は、母親を死なせた悪い子ども。

一生涯......母を死なせた罪を背負って、日陰の道を生きるべき。


私はダメな子だから。

勉強もできない。

頭も悪い。

もちろん魔法も使えない。

ダメな子として、ずっと生きるの。


自分のことをそんなふうに考えて。

力を押し込めて......閉じ込めて生きてきた。


でも!!!

目の前で愛する人が苦しんでいる。

私は愛する人を失いたくない。


そう思ったら、勝手に体が動いていた。


そこからは、あまり記憶が無い。


----------------------------


私は無我夢中で炎をはなって.....。

そして、誘拐犯の男を焼き殺した。


熱さと苦しみでのたうちまわる男を見た。

けっして気持ちの良いものではなかった。

(この男が、早く苦しみから解放されますように)

思わずそう祈った。


ゴゴゴゴゴ.......


ゴーレムのほうから大きな音がして、びっくりしてそちらに視線を向ける。


ゴーレムの体が、溶けていく!!

土に還っていくわ。


ディルの言うとおりだった!!


「ニナ!!男を焼き殺すんだ!!

それですべて終わる」

彼は必死にそう伝えてくれた。


やっぱりディルは何でも知っている。

私の大切な人。


ゴーレムの体はボタボタと崩れ落ち、形がなくなっていく。

私の放った炎もシュウシュウという音を立てて消えていった。


「ディル!!」

私は思わず叫んだ。

ゴーレムが握りしめていた、ディルの体が地面に落ちてしまったのだ。


ディルの方に駆け寄った。


「ディル!!ディル」

彼はぬかるみのなかに落とされ、気を失っている。


「いやよ......お願い、逝かないで」

彼の傷だらけの頭を持ち上げて、自分の膝の上に乗せた。

ディルは目を覚まさない。


「お願い、ディル。

あぁフェニックス様......お護りください」


泥で汚れた彼の金髪をそっと撫でる。


「う......」

ディルが眉をしかめ、うめき声をあげた。


「ディル!!」

私は嬉しくなって彼の頬を撫でる。


「ニナ......」

彼はゆっくりと目を開けた。

そして私の顔をみあげると笑う。


「すげー炎だった。ニナ、すごいぞ。やったな」

「ディルのおかげ......魔力が使えるようになった」


ディルはまた優しく笑うと、目を閉じた。

「ディル!!嫌よ。目を覚まして」

私は彼に必死で呼びかけた。


そのとき、森の中から人が現れた。

「ニナ!!」

お父様と、お兄ちゃん、それに兵士たちがこちらに向かってきたのだった。


「ディルが怪我をしてるの!!気を失ってしまった」

私はディルの頭を膝に乗せたまま、涙を流した。



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