表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
アリッサのお腹の子どもと火の魔法の継承
117/255

【ディル】


「金貨は持ってきた。

ニナはどこだ」

相手に見えるように金貨の入った革袋を高くかかげた。


深夜の白夜の森.......中央。

月明かりに照らされた広場。

俺の正面......数十メートル先には、フードを深く被った男が一人ぽつんと立っている。


白夜の森の中央部は、樹木の無い荒れ果てた土地になっている。

数年前に起きた戦争の爪痕だ。

戦いに呪詛が使われたため、土壌が地底から汚染されているのだ。


ここに草木が生えてくることは、今後も無いらしい。


「袋の中身を確認したい」

フードの男が言う。


「金貨の枚数が足りなかったり、偽物だったりすれば、仲間がお前と女を必ず殺す」

「ちゃんと100枚入ってる!

そっちもニナの無事な姿を見せろ」


「分かった。少し待て」


フードを被った男は、手を挙げて合図した。

男の背後から、ニナが引きずられるように連れてこられるのが見えた。


「ニナ!!」


彼女は手を縛られて、しかも猿ぐつわをされている。

遠目で表情まで見えないが、間違いなくニナであることが俺には分かった。


「金貨をよこせ。本物かどうかを確かめる」

男はニナの首元にナイフをあてがうと、俺に怒鳴った。

「言う通りにしないと、女を殺す」


「......ダメだ。

金貨を渡せば、彼女が戻ってくるという保証はなくなる。

まず金貨の三分の一を、そっちに投げる。

それをみて本物かどうか確かめろ」

俺はそう言うと、あらかじめ用意しておいた別の袋に金貨を少し移し替えた。


そして、その袋を敵の方へと思い切り投げる。


敵の一人が、地面に落ちた袋に走り寄り、拾い上げた。


「どうだ......金貨は本物か?」

「本物です。30枚入ってます」


「残りの金貨が欲しければニナをこちらによこせ」

俺はなるべく落ち着いた声で、相手に向かって叫ぶ。

本当は、今すぐにでも、相手を斬りつけ戦いを始めたいくらい焦っていた。


「......いいだろう。

ゆっくり歩け、走るなよ」

男はニナの背中を乱暴に押した。


ニナはビクッとして身体を揺らすと、ゆっくりと歩き始めた。

一歩、一歩、俺に向かってニナが歩いてくる。


「ニナ......。大丈夫だ」

俺は微笑んで彼女を安心させようとする。


ニナと俺の視線が合う。

彼女は涙を浮かべて、何かを訴えようとしていた。

猿ぐつわをしているため、声は出ない。


彼女は、視線を俺の背後に向ける。


(俺の背後に敵がいる......そうなんだな、ニナ)

彼女の表情からそれを読み取った俺は、素早く背後を振り返りながら剣を抜いた。


背後から5人の男が忍び寄ってくるのが見えた。

男たちは手に剣を構えている。


(弓矢じゃない......予想通りだ)


誘拐犯たちは、ニナを傷つけたくないんだろう。

つまり、彼女を殺すつもりはない。

身代金を受け取ったあと、彼女を生きたまま奪い去るつもりだ。


その証拠が弓矢を使ってこないこと。

弓を使えば、ニナに当たってしまう可能性が高い。


たった5人で俺を倒す気か?

バカにされたもんだな。


カシーン!!

剣と剣がぶつかりあった。

一人の男の肩を斬りつけながら、足で蹴り倒す。

背後からの敵の攻撃を避けながら、相手の腹を斬りつける。


5人の男はどいつも訓練された兵士ではない。

街の荒くれ者。

楽勝だった。


「なにしてる!?

早く、その兵士から金を奪え!!」

フードの男が遠くから叫ぶ。


視線をむけると、フードの男はニナを羽交い締めにして連れ去ろうとしていた。


「ニナ!!」


5人の敵のうち、4人を倒した。

残り一人は、怯えて腰を抜かし、震えている。

放っておいても逃げ出すだろうが、念のため頭を強く殴って気を失わせておいた。


フードの男が片手を高くかかげているのに気づいた。

(なんだ?)

細かく口を動かし、何かを唱えている。


フードの男の背後から、地響きがする。

ド、ドドドド


(つ、土が盛り上がっていく......)


男の背後の土の塊が、徐々に盛り上がり、ヒト形になっていく。

土埃と地響き......そして悪臭。


「ゴーレムだ!!」


噂でしか聞いたことがない。

巨大なゴーレム。


呪詛を含んだ汚れた土壌から、呼び覚まされた、いにしえの魂......。


「ゴーレムを使うとは......お前は魔術師なのか!?」

「ハハハ、違う。

この土地を汚染した魔術師からゴーレムの支配権を買い取ったのだ。

俺は、この女の火の魔力も、我が物にする」


フードの男は俺のほうに向かって指を指すと、

「行け!!あの男を踏み潰すのだ」

とゴーレムに命令する。


ゴーレムはデカいわりに、動きも素早かった。

大股で素早く動くと、ドシン!!とものすごい音を立てて、足を踏み鳴らす。


まずい、踏み潰される。

俺は慌てて、身をかわした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ