表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
アリッサのお腹の子どもと火の魔法の継承
105/255

【アリッサ】



レンがプロポーズしてくれた。

「結婚して欲しい」

その言葉が何度も頭の中をこだました。


信じられない。

彼があたしのことを...... 娘としてじゃなくて、女性として愛してくれていた.......。


でも。

そっと下腹部に手を当てる。

あたしのお腹にはフィリップの子どもがいる。


「レン......あたし.....」

レンは不安そうな顔で、あたしの言葉の続きを待っている。


「あの.....と、とても嬉しい」


「えっ!?嬉しい?ほんと?」

レンの表情が明るくなる。


「......うん......だって、あたしもレンのことが好きだから。

でも......」


「でも......?」

レンはまた不安そうな顔に戻った。


言うしか無い。

あたしはゴクリとつばを飲み込んだ。


「その......あたし......妊娠しているの」

小さな声で彼にそう伝えた。

でも聞こえたと思う。


レンは、目を見開いた。

「妊娠......」


しばらく沈黙が続く。


沈黙が続いたあと、レンが言いづらそうに口を開いた。


「実は、フィリップと戦っている最中、聞かされた。

アリッサのお腹には自分の子どもがいるんだって。

ヤツはそう言っていた......それで俺はカッとなってしまって、炎で焼かれた......」


あたしは驚いて、息を呑んだ。

「レン......それじゃ、知っていたの!?」


「いや。ヤツが俺の気をそらすためについた嘘だと思ってたんだ」

レンは、悲しそうな表情でそう言って首を振った。


「まさか、本当だったなんて」


レンのツラそうな表情を見て、あたしは慌てた。

「あたしは、あなたと結婚できないって分かってる」


「どうして......?どうしてそんなこと、言うんだ?」

レンが驚いてあたしの顔を見る。


「だって......」

また涙が流れ落ちる。


「あたしはこの子を捨てることは出来ない。

親のいない子どもにしたくない。

寒い思いやひもじい思いをさせたくないの!」


「アリッサ......」

レンはあたしを抱きしめようと、手を伸ばした。

でも、あたしは一歩後ずさって、彼から遠ざかる。


「プロポーズは無かったことにして。

あたしは一人で、この子を育てるつもりなの」


「何、言ってんだ。

そんなのだめだ」


レンは、あたしの腕をつかむと自分のほうに引き寄せた。

あたしはそっと包まれるようにレンに抱きしめられた。


「俺のせいだ。

大蛇のやつに.......アリッサが.......」

レンはあたしを抱きしめながら、苦しそうに言った。


「レン......?」


「俺のせいだ。

俺がモタモタしてたから。

だから、アリッサは大蛇の子どもを身ごもるようなことになったんだ。

アリッサ、本当にごめん。

俺のせいだ」


「違うわ、レンのせいじゃない」

あたしは抱きしめられたまま、彼の顔を見上げた。


「俺もその子を育てる」

レンはあたしを抱きしめる腕をゆるめた。

そして、あたしのお腹のあたりをじっと見るとそう言った。


「そんなこと......だって、大蛇の子なのよ?」

「大蛇は許しがたい罪を犯した。

だが子どもには罪はない......しかもアリッサの血を分けた子だ」


「レン......でも」


「お願いだ、アリッサ。

俺と結婚して欲しい......その子を一緒に育てよう」


レンはそう言うと、またあたしを抱きしめた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ