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どこまでもつづく道の先に  作者: カルボナーラ
アリッサのお腹の子どもと火の魔法の継承
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【アリッサ】


モリィが亡くなってしまった。

ショックで何も考えられない。


ひと晩中、椅子に座ったままモリィからの書簡をじっと見つめていた。

読まないと......。でも怖い......。


窓から陽の光が差し込み、朝が来たことに気づく。

テーブルの上に置かれたガラスの小瓶に気づいてハッとする。


(そうだわ。レンは今日、モリィの故郷へ出発してしまう。

モリィのためにも、はやく遺骨をレンに渡してあげないと!)


でも......レンに遺骨を手渡す前に、手紙に目を通さないといけない.....。

モリィの最後の手紙だもの。

レンに伝えて欲しいという伝言が書かれている可能性がある。


これ以上、ためらうのはモリィに対する冒涜になる。

さぁ......手紙を開くのよ。


あたしは震える手で、小さな書簡に手を伸ばした。

金色の封蝋を破って中をあらためる。


「モリィ......」


窓から差し込む朝日が、手紙を明るく照らしていた。

あまりにも小さな文字なので、引き出しから拡大鏡を取り出して、手紙に当てた。

文字が大きくなって読みやすくなる。


深呼吸すると手紙を読み始めた。


-------------------------------


親愛なるアリッサへ


もうすぐモリィの命の灯火が消えます。


いつ力尽きるのかわからないので、まず言いたいことから書きますね。


ご主人さまを、どうか幸せにしてあげてください。

その力があるのは、アリッサだけです。

どうかどうか、お願いです。

ご主人さまを不幸にしないとだけ誓ってほしいのです。


ご主人様にお手紙をしたためることも考えました。

でもご主人さまの幸せの鍵を握っているのはアリッサだと思うのです。

なのでモリィはアリッサに手紙を書いています。


アリッサが闇の森のお屋敷に迷い込んで来るまで......ご主人様の心は、波ひとつ立たない静かな湖のようでした。

ほんとうは強い情熱をお持ちの方なのに、その心は閉ざされていたのです。


でもアリッサが来てからは、彼の心はさざ波が立ち、ときには荒波がわきたち、そしてまた穏やかになりました。

つまり......言いたいのは、ご主人様は平穏だけど、感情のない生活を毎日送っていたのです。

でもアリッサが来てから、彼の感情は動き始めた。

つまり、彼は幸せになったのです。


ご主人さまは、アリッサに対して、父親のような愛をむけている......と言い張っていますが、嘘です。

嘘というか......自分のお気持ちに気づいていない可能性もあります。


ご主人様はアリッサのことを女性として愛しています。

すごく愛してます。


だから、彼を幸せにできるのはアリッサだけです。


もう筆を握る手が辛くなってまいりました。


お願いです。

なにがあってもご主人様をお願いします。

彼の幸せがモリィの幸せなのです。


あの魔物のことを、ご主人様が成敗されていることを心から願っています。


それから私が命を失ったのは、アリッサのせいではありません。

あらかじめ定められた運命なのです。

これが私の寿命なのです。


----------------------------


「モリィ......」


涙がとめどなく溢れてくる。

彼女の笑顔が目に浮かぶ。


いつも優しかったモリィ。

「私が命を失ったのは、アリッサのせいではありません」

そう書かれた文字が目に入る。


「違うわ。あたしのせいよ......」


涙を拭きながら、ふと、窓の外に目をやる。


「......!!」

あたしは窓の外の光景を見て、息を飲んだ。


レンが馬をひいて、門から出ようとするところが見えたのだ。


大変だわ、彼が......出ていってしまう。

彼に遺骨を......モリィの遺骨を渡さないと。


窓を大きく空けると、あたしは大声で叫んだ。

「レン!!レン・ウォーカー!!」


レンがびっくりした顔でこちらを見上げる。


「そこで待っていて」


あたしは部屋から飛び出した。





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