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めんどくさい女の子たち  作者: あかなめ
第六章 久保田友恵と稲垣良美
94/334

93 心配

登場人物

・久保田友恵(トモちゃん)中一女子

・柊響(ひびきちゃん)久保田友恵の友だちで同級生

挿絵(By みてみん)


 TEAVANA からの帰路、わたしはひびきちゃんの様子を見に家へ寄ってみた。

 呼び鈴を鳴らすと玄関の扉が開き、お母さんが出てきた。

「こんばんは」

「あらトモちゃん、こんばんは。どうしたの?」

「ひびきちゃん、どうしてるかな、って思って」

「え? まだ帰ってきてないよ」

「え?」

「今日は学調の復習でちょっと遅くなると思うよ」


 なんで寝てないの !?

 わたしは無い頭を懸命に働かせた。

 ひびきちゃんは今日ゲロを吐いて倒れたことをお母さんに何も話していない。そして何事もなかったかのように三年生の家に行っている。だから三年生も今日のことを知らない。

 もしわたしがここでお母さんに今日のことを話したら? 普通の親だったら娘の健康を第一に考え、しばらく三年生のところへは行かないように言うだろう。そして行けなくなった理由を知った三年生もひびきちゃんの体調を気遣って、もう来なくても大丈夫だから、と言うだろう。だからここでお母さんに今日のことを伝えるのは、今日口止めされ、言わないと約束した保健室のことを三年生にバラすのと同じことになる。


「あ、そうだったんですね」とわたしは誤魔化した。

「せっかく来てくれたのに悪かったねえ」

「いえいえ、失礼しました」

 そう言ってわたしはひびきちゃん家を出た。そして最初の角を曲がったところでひびきちゃんに電話した。


「もしもし」

「トモちゃん……」

「いま大丈夫? ……いや、大丈夫じゃなくても話をしたい」

「ちょっとまって。……いいよ、廊下に移動した」

「あのね、今、ひびきちゃん()に寄ったとこなの」

「ああ、そう……」

「ねえ、なんで家で寝てないの !? なんで三年生のとこにいるの !? なんで黙ってたの !?」

「気を悪くさせたね」

「どんだけ心配してると思ってんの !?」


「模試の復習はできるだけ早くしないと脳に定着しないんだ。今日は特別な日なんだ」

「だからって、三年生の家でゲロ吐いたらどうするの?」

 わたしがそう問い詰めると、ひびきちゃんは三年生に聞かれないよう囁くようにこう言った。

「お昼に帰ってしばらく寝てたら体調もよくなったんだ」

「うそばっかり」

「ホントだよ」

「体調がよくならなくても無理して行ったくせに。今だって無理してるくせに」

「行く、って言ったら絶対反対するのが分かってたから言わなかったんだ。トモちゃんのことを邪険にしたわけじゃないんだよ」


「いますぐ家に帰って!」

「トモちゃん……」

「いいかげんにしてよ! あたしはね、言おうと思ったら、いつだって今日のことを三年生に言えるんだよ。わかってるの?」

「トモちゃんが絶対に言わないことはわかってる。でも、あたしはそのことにちょっと甘えすぎたみたいだね。ごめん……」

 耳元で、ずずっ、と鼻をすする音が聞こえる。

「……泣いてるの?」

「ホントにごめんね……」

 ひびきちゃん、今日は泣きすぎだよ。ちょっとメンタルが心配だよ。


「今すぐ帰るよ。十五分で家に着く。だから、あたしの部屋で待っていてほしい」

 ひびきちゃんは声を震わせながらそう言った。

「うん、わかったよ」

「ありがとう」

 そして電話が切れた。

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