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めんどくさい女の子たち  作者: あかなめ
第三章 柊響と早川貴子 その2
39/334

39 ごめんね

登場人物

・柊響(ひびきちゃん)中一女子

・久保田友恵(トモちゃん)柊響の同級生で友だち

・早川智子ちこ(チーちゃん)中三女子

・早川貴子きこ(キーちゃん)高三女子で早川智子の姉

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)



 ごめんね、と言われて、わたしは少し考えた。


 キーちゃんにすてきな彼氏ができて、なかよく手をつないでわたしの前に立ち、わたしを応援してくれる──もしそうなったら、わたしはどんな感じがするんだろう?

 彼氏とキスをするその唇で、わたしとキスをする──それはどんな感じがするんだろう?

 彼氏とセックスするその体を、わたしが──。


 たぶん、わたしには無理なんじゃないか。


 わたしはキーちゃんが大好きだ。

 キーちゃんに彼氏ができても、この気持ちは変わらないような気がする。


 大好きだから、さわりたい──ついさっきまではそうだった。

 でも、彼氏のいるキーちゃんには、……さわりたいけど、さわってはいけないような、……いや、もしかしたらわたしは、さわられたくない、と思ってしまうかもしれない。


「ひびきちゃん、どうしたの? 黙りこくっちゃって」

「いえ、なんでもないですよ。ちょっと放心してただけです」

 そう言ってわたしは立ち上がった。


 トモちゃんはわたしによく抱きついてくる。

 小学生のノリで。

 わたしはそれが苦手だ。

 ベタベタされるのが嫌なのではない。むしろ嬉しい。

 嬉しいのだが、同時に悲しいのだ。

 背後からワッとこられるその一瞬のあいだに、わたしは小さく心がときめき、同時に小さな失恋の痛みが胸に響いて苦しくなる。


 恋愛感情のないトモちゃん相手ですらそうなのだ。

 体と心は幾度となく、わたしとは無関係に反応してしまう。

 わたしは自分の体と心に対しあまりに無力で、その無力さにいつもくやしくなる。


 わたしは背負ってきた大きなリュックを手に取った。

「キーちゃんの教科書めあてで、このリュックを持ってきたんです」

「そうだったの」

「まさか、ほんとうに頂けるとは、って感じです」

 笑うわたしをキーちゃんは呆れ笑いで下から見上げる。

「くどいようだけど、ほんとうに教科書なんかでいいの?」

「ええ、もちろん」


 キーちゃんも立ち上がった。

「うち、ムダに家が広いから、なんでもかんでも捨てずにとってあるのよねえ」

 そう言いながら、キーちゃんは押し入れの中に頭を突っ込んだ。

 がさごそ、がさごそ。

 キーちゃんのお尻が左右に揺れる。

 わたしはつくづく無力だ。


「あー、これこれ」

 キーちゃんが二つのダンボール箱を重そうに押し入れから引きずり出した。

「これ、中学校のときの教科書とかぜんぶ」

「こんなにあるんですね」

「さすがにこれ全部はリュックに入んないでしょ」

「今日は教科書だけ頂いていきます。残りはちびちび運びます」


 わたしは、よいしょ、とリュックを背負って言った。

「じゃあ、チーちゃんにちょっとあいさつして帰ります」

「ひびきちゃん」

「はい」

 キーちゃんは少し屈んでわたしにキスをした。

「好きよ」

「わたしもです」

「ほんとうよ」

「ありがとうございます」

「ごめんね」

「……」

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