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めんどくさい女の子たち  作者: あかなめ
第二章 稲垣良美と児玉くん
26/334

26 うねり

登場人物

・柊響(ひびきちゃん)中一女子

・久保田友恵(トモちゃん)柊響の同級生で友だち

・稲垣良美(ガッちゃん)柊響の同級生で柊響をライバル視していた

挿絵(By みてみん)



 柊さんとトモちゃんがわたしの姿を認めると、柊さんが頭を下げ、弱々しい声で言った。

「ごめんなさい……」

 すかさずトモちゃんがあとを続ける。

「あたしね、あまりにもひどい、って怒ったの。そんな、ガッちゃんの心を踏みにじるようなことをして、いったいなにが楽しいの?って」

 いつもニコニコしているトモちゃんの声が怒りで震えている。

「どんだけ嫌いでも、どんだけ恨んでいても、そんなことはしちゃいけないし、……ひびきちゃんがやったことは、最低の行いだよ!」


 トモちゃんは今にも泣き出しそうだ。

 この人、いい人だったんだな。

 てっきり、表面を取り繕うだけの人だと思ってたけど。

 なんだか、かわいいな。


 柊さんが口をひらく。

「……あたし、最低だったみたい。でもね、あたしガッちゃんのこと嫌ってもいないし、恨んでもいないよ」

「やめて! ひびきちゃんがウソつくとこなんか見たくないっ!」

 トモちゃんが叫ぶ。

「じゃあ、ひびきちゃんは、なんであんなことしたの!」

「だって、ガッちゃんなら、うまくやれそうな気がしたんだもん……」

「なにそれ?」

「なにそれ、って、……気というか、勘だよ」

「それって、ひびきちゃんの勘だよね。自分の勘だけであんなことすんの?」

「……うん」

「信じらんない! 信じらんないよお!」


「ねえトモちゃん、泣かないで」

 わたしはトモちゃんの袖をつかんでお願いした。

「あたしは大丈夫なんだから」

 あたり前だが、トモちゃんは、絶対この人ムリしてるよ、って顔でわたしを見つめてくる。いっぽう柊さんはわたしのことなどお構いなしに、トモちゃんの横顔をずっと心配そうに見ている。


「ねえ柊さん」

「……」

 柊さんが困りきった様子でわたしのほうに顔を向ける。

「ちょっと、髪がうねってるね」

 わたしがそう言うと、柊さんの表情から困惑がすっと消え、いつもの気安い感じに戻った。

「え? ……ああ、これ? あたし、雨の日はどうしてもこうなっちゃうんだよね」

 そう言って柊さんはセミロングの髪を両手でペタペタと撫でつけた。

「いちおうトリートメントはしてるんだけど、髪質に合わないのかなあ」

「そんなにペタペタやったらよけいに傷んじゃうよ」

 そんなわたしたちのやりとりをトモちゃんはポカンと見ている。


「ガッちゃんの髪は雨の日でもきれいだよね。なんかしてるの?」

「椿油だけ」

「ああ、黄色くて高いやつだね。薬局で見たことある」

「ドライヤーのあと、何滴か髪に馴染ませてるだけ。ラクだよ」

「あたしもやってみようかな。でも小遣いじゃ買えないしな……」

「ウチに予備があるから貸してあげるよ。髪に合うか試してみて。明日もってくるね」

「え、ほんと? ありがとう!」


「でもね、どうしてもうねっちゃうときは……」

 わたしはそう言って柊さんに近づいた。

 トモちゃん、そんなに身構えなくていいよ。攻撃なんかしないんだから。わたしは本当に大丈夫なんだから。

「ムリに撫でつけようとしないでね……」

 わたしは自分の髪留めのゴムを外して右手にはめると、顔と顔が触れ合いそうになるほど近づいて、十本の指を柊さんの髪の中に入れた。

 柊さんが怯えた様子で目をぎゅっと閉じる。

「こうやって手櫛でふんわり無造作にまとめて……」

 わたしは柊さんの肩越しに両腕を回した。

「後ろをゴムでしばるといいよ」


 わたしが柊さんから離れると、二人は言葉を失っていた。

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