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めんどくさい女の子たち  作者: あかなめ
第七章 柊響と早川貴子 その3
184/334

183 かわいい人

登場人物

・柊響(ひびきちゃん)中一女子

・早川貴子きこ(キーちゃん)高三女子、公営アイドル〈北陸パピプペポ〉に内定

・早川智子ちこ(チーちゃん)中三女子、貴子の妹

・久保田友恵(トモちゃん)中一女子、柊の同級生で友だち

・稲垣良美(ガッちゃん)中一女子、柊響の同級生、かつて柊響をライバル視していた

円谷つぶらやれい子 保健室の先生

 わたしは存分に泣いてすっきりしていた。人間は過剰なストレスホルモンを涙によって排出する。ストレスホルモンが減れば元気が出る。ホントに人体は単純にできている。

 わたしは残りの経口補水液をゴクゴクと飲み干した。

 吐き気はしない。大丈夫、もう帰れる。


 わたしは先生に「今日はもう早退します」と言った。

「ああ、顔色もよくなったしね」と先生は言った。

「ありがとうございます」

「じゃあお二人さん、早退の件、担任の先生に伝えといてもらっていいかしら?」

 わかりました、と優しい二人は声をそろえて言った。


 二人はわたしを靴箱まで送ってくれた。充満する足の臭いでまた吐いたりはしないか心配してくれたのだろう。

 それにしても、ガッちゃんはいつもわたしにつっけんどんなのに、ゲロまみれのわたしを運んでくれたり、見送りまでしてくれたりして、どうしてこんなにも優しくしてくれるだろう? そしていまも「タクシー呼んだほうがいいんじゃない?」などと優しいおばさんのようにわたしを心配してくれている。

 わたしはそんな優しいガッちゃんの顔を見て驚いた。

 こんなにかわいい人だったんだ……。


 ガッちゃんはいつもムッとしているので、わたしはそのかわいさにぜんぜん気がつかなかった。しかしいまガッちゃんは弱ったわたしの前で警戒を解いていて、信じられないほど表情がやわらかい。まるで無心になって母を目で追う幼児をそのまま大きくしたように清らかだ。

 そんな無垢そのものの顔になぜか、ぷっくりとエロティックな唇がついている。冬でリップクリームを塗っているのだろうか、その下唇は艶やかに輝き、わたしはたまらずキスしたくなる。


 いや、いまのわたしの吐く息はゲロ臭いに決まっている。そんな状態でキスなんかできない。……いやいや、状態がどうであれそんなことをしてはいけない。

 わたしがガッちゃんに詰め寄りすぎたせいで、ガッちゃんはビビってしまっている。大丈夫だよ、純真なガッちゃんのファーストキスを奪ったりなんかしないから。

 わたしは衝動に任せてガッちゃんをぎゅーっと抱きしめた。

 そして二人に手を振った。


 今日はテスト二日目で、英語と数学の二科目。三年生は午前中で帰っている。今日は火曜日でチーちゃんは塾の日だが、塾は休むと言っている。ありがたいことに、塾よりわたしの説明のほうがわかりやすいと言ってくれているのだ。

 わたしは体操着のままで帰り、途中のクリーニング店に制服を出して家に着いた。そして〈今から行きます〉とLINEを送ろうとしたら、チーちゃんからメッセージが来ていた。


 ──喜べ、今日はキーちゃんがいるぞ

※今回の話は「87 充電」をひびきちゃん視点から描いたものです。


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