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めんどくさい女の子たち  作者: あかなめ
第二章 稲垣良美と児玉くん
18/334

18 児玉くん

登場人物

・柊響(ひびきちゃん)中一女子

・久保田友恵(トモちゃん)柊響の同級生で友だち

・児玉くん 柊響の同級生で柊響に告白してきた

挿絵(By みてみん)



「ひびきちゃん。あたし、いっしょについてってやるよ」

「え? いいの?」

 ひびきちゃんはそう喜んだものの、しばらく考え込む。

「ねえ、児玉くんは、フラれる瞬間をトモちゃんに見られて嫌じゃないのかなあ?」

「そりゃあ嫌だと思うよ。男子はプライドでできてるんだから」

「そうだよね。……じゃあ、あたし一人で言うよ」

 あー、すごい嫌そうな顔してる。

「もう、無理すんなって!」

 あはは、と笑って、わたしはひびきちゃんの肩をポンと叩いた。


 一人で行く?

 心配するこっちの身にもなってよ。

 ひびきちゃんの涙なんて誰にも見せたくないんだよ。

 だって、ひびきちゃんはみんなのスーパーサイヤ人なんだから。


「大丈夫。あたしなんかに見られたところで、児玉くんなら平気だよ」

「そう?」

「そうそう。そうやって男の子は強くなっていくんだから」

「ふふっ」

「大丈夫。いっしょに行こう!」

「トモちゃん、なんだか肝っ玉母ちゃんみたい」

「知らなかったの? あたしはひびきちゃんのお母ちゃんなんだよ」

「お母ちゃーん!」

 ひびきちゃんが甘えてきたので、わたしは、よしよし、としてあげた。


 翌日は雨だった。

 昼休み。

 大勢の人が教室でおしゃべりしている。

 児玉くんも男子たちとサッカーの話をしていた。


「行こう」

 わたしはひびきちゃんに言った。

「うん」

 小さく気合を入れて、わたしたちは席を立った。


 わたしはひびきちゃんと手をつないだ。

 ありがと、とひびきちゃんが囁く。


「ねえ児玉くん」と、ひびきちゃんが声をかけた。

「あっ……」

「あのさ、放課後、ちょっといいかな」

「……ああ。えーと、どこに行けばいいのかな」

「あ……」

 ひびきちゃん、ノープランなんだ。

 ひと気のないとこ、どっかないかな……。


「えーと、理科室なんてどうかなあ」とわたしが言った。

「うんうん、理科室! 理科室いいかな?」

「わかった」

「ありがとう」

 あーもう、あたしのほうが緊張しちゃったよ。


 そして放課後。

 ひびきちゃんとわたしはずっと手をつないで理科室まで歩いた。

 あかりの消えた暗い理科室。

「入るよ」

「うん」

 わたしたちは深呼吸して引き戸を開け、中に入った。

 暗い室内の椅子に座って、児玉くんは先に待っていた。


 わたしたちが何も言う前から、

「ごめんなさい、ってとこかな?」

と児玉くんが苦笑いして言った。

「……」

 あ、だめだ。ひびきちゃん、頭が真っ白になってる。


 思わずわたしは口を開いた。

「ひびきちゃん、児玉くんみたいなすごい人に告白されてすごく喜んでたよ。でも突然のことだったから心の準備が全然できなくて……」

「じゃあ、準備ができるまで待ってていいのかな?」

「あ、それはそのう……」

「トモちゃん」

 ひびきちゃんが口を開いた。


「あたし、児玉くんにウソはつきたくないの」

「柊さん……」

「でも、ほんとうのことを言えるほど児玉くんを信用してもいない」

「他に好きな人がいるんだね」

 児玉くんがそう言うと、ひびきちゃんはわたしの手を離し、両手を握りしめて激しく訴えた。

「ちがうちがう、全然ちがう! 全然そういうんじゃない!」

 ひびきちゃんが首を大きく横に振る。


「児玉くんがいいとか悪いとか、そういう話じゃ全然ないんだ。わけわかんないよね。だからもう、すっごく申し訳なくて。だから、だから、あたしの言う〈ごめんなさい〉は、とにかくそういう意味じゃないんだ」

「じゃあ、どういう意味……」

「児玉くんは人間であたしは猫なの。人間と猫は友だちにはなれるけど、性欲を抱いちゃダメなんだよ」

 ああ、ひびきちゃん、いったいなにを言ってるの?

 わたしにはわかんないよ……。

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