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めんどくさい女の子たち  作者: あかなめ
第七章 柊響と早川貴子 その3
172/334

171 あまりに北朝鮮的

登場人物

・柊響(ひびきちゃん)中一女子

・早川貴子きこ(キーちゃん)高三女子

挿絵(By みてみん)


 キーちゃんの不安をなだめるために〈伯父さんと家に行くといいですよ、きっと応援してくれますよ〉なんて余裕こいた発言をしたわたしはその実、あいかわらず不安でたまらなかった。

 たしかに県の職員であれば、握手なんていう性的なサービスはしないで済むかもしれない。

 しかし根本的な不安は解消されないままだ。

 どちらかと言えば陰キャのキーちゃんに、陽キャの極みのようなアイドル業が果たして務まるのだろうか?


 お揃いの衣装を着たメンバーが何人も居並ぶ中、観客たちからほとんど見た目だけで残酷に値踏みされることに、キーちゃんは果たして耐えられるのだろうか?

 一人だけダンスがうまくできなくて、恥をかくばかりか、メンバーから蔑まれたりはしないだろうか?

 頭のオカシイ人たちによる誹謗中傷やストーキング行為から県は守ってくれるのだろうか?

 そして、仮にキーちゃんが押し寄せる苦難を乗り越え続けたとして、キーちゃんの面の皮が厚くなってはしまわないだろうか?


 わたしは完全に恐怖に恐怖していた。正しく恐怖していなかった。

 わかっている──まずは敵を知らなくてはいけない。

 わたしはブラウザを開き、恐る恐る〈ローカルアイドル〉と検索する。

 もし実際のアイドルがわたしの想像するアイドル像よりもずっと醜悪なものだったら、わたしは心配のあまり毎晩悪夢にうなされるようになるかもしれない。だから検索するのは怖かったのだ。

 しかしこれを避けたままではやりすごせない。


 まず分かったのは、日本には何千というローカルアイドルが存在することだった。

 そして、なんでもありの自由奔放なグループ名とはうらはらに、彼女たちの姿はどれもこれもがあまりにも判を押したように北朝鮮的だった。


 写真はいずれも、同じ衣装を着た女の子が横に並んで同じ表情をしているだけ。構図の工夫もなければアートもない。個性は消され、彼女たちはメッセージをひとことも発していない。その張り付いた笑顔には、ミュージシャンが演奏の合間に不意に浮かべる自然な笑顔のような、わたしをときめかせるその人ならではの人間味が恐ろしいほどなにもない。グループの顔となるべき画像がこうなのだ。

 そして、世の男たちはこういうものにときめくのだ。

 わたしは夕飯を吐いてしまった。

 

 吐いたついでに、YouTube で歌も少し聴いてみた。

 どれもチープなアニソンのようだった。

 陳腐な音と陳腐な歌詞、そして徹底して深みを拒む歌声。

 わたしには少し分かったような気がした。


 これら北朝鮮的アイドルはすべて二次創作なのだ。

 彼女たちはAKB48を演じているだけなのだ。

 あるいはモーニング娘。を。

 ファンもファンで、ペンライトを持って決まり切ったやり方で応援するファンを律儀にも演じている。

 つまりはアイドルもファンも同人どうしで、要は内輪で盛り上がっているだけなのだ。

 二次創作ではオリジナルの改変は御法度だ。だから北朝鮮的アイドルの世界にオリジナリティはあってはならないのだ。

 わたしは再び吐き気に襲われ、コップに胃液を吐き出した。

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