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めんどくさい女の子たち  作者: あかなめ
第六章 久保田友恵と稲垣良美
152/334

151 崇拝者

登場人物

・久保田友恵(トモちゃん)中一女子

・安倍あきら(あーちゃん)久保田友恵の同級生で陽キャの美術部員

・川上風美ふみ(ふみちゃん)久保田友恵の同級生で陰キャの美術部員

挿絵(By みてみん)


「ひどくなんかないよ」とわたしはふみちゃんに言った。「ふみちゃんはただ、〈あーちゃんには盾以上の価値がない〉っていう客観的事実を言っているだけなんだから」

「トモちゃん、その言い方、トゲがあるよ……」

 ふみちゃんはそう言って、ちょっとだけ嫌そうな顔をした。ということは、心の中では怒りが煮えたぎっているのだろう。

「じゃあ、ふみちゃんにとってあーちゃんはどんな存在なのかなあ?」


 ふみちゃんは考え込んでこう言った。

「……盾。やっぱり盾。それしか思いつかない」

「じゃあホントに盾でしかないんだね」

 わたしがそう言うと、ふみちゃんはちょっとだけ困った顔をした。ということは、心の中ではものすごい葛藤が生じているのだろう。

「でも、それではいけないと思う……」


「じゃあ、ふみちゃんとあーちゃんが二人っきりのとき、ふみちゃんにとってあーちゃんは何なのかなあ?」

「……あたしを崇拝する人」

「それって嬉しい?」

「……ホントは、あたしもあーちゃんを崇拝できれば、って思うんだけど、あーちゃんには崇拝できる要素が、なんにも、なんにもないの」

「でも、立派な盾なんでしょ?」

「そんな風に言われても、あーちゃんは多分、……嬉しく思わない」


「ちょうどいいじゃない」とわたしはふみちゃんに言った。「あーちゃんがそこまで空っぽな人なら、ハブられるのは神の導きなのかもしれないよ」

「神……。トモちゃんって、……やっぱり、あの、……カルトなの?」

「違うよ。だってあの人たちは柔道とか絶対にやらないけど、あたしはフツーにやるし。今日はサボってるけど」

「えっ? ……生理痛じゃないの?」

「……じつは違うんだ」

「ええっ⁉ じゃあ、なんであたし、見学してるの? ちっちゃいトモちゃん相手なら、背負い投げもできるかな、って思ってたんだけど」

「サボってよかったよ」

「……ちがう、ちがうよ。なんで、ハブられるのが、神の導きなの?」


「聖書読み始めたらなんかハマっちゃって、〈神の導き〉みたいな言い回しがちょっとクセになっちゃってさ。要は〈災い転じて福となす〉と同じ意味だよ」

「だから、どういうこと?」

「あーちゃんはちょっと一人になって、自分を見つめ直す、っていうか、自分を持つ必要があるよね。空っぽ、ってのはさすがにマズいよ」

「……うん、そうかも」

「だから、ハブられたら一人になれてちょうどいいかな、って。ただそれだけ」

 しかしふみちゃんの表情は浮かない。

「内省とか、そういうの、あーちゃんにはムリだよ。だってスマホ中毒だもん。一人になってもスマホいじってるだけだよ」


「ふみちゃんが一生懸命になっても?」

「えっ?」

「崇拝する人がなにかに一生懸命になってたら、さすがに感化されると思うんだけど」

 わたしがそう言うと、ふみちゃんは黙って考え込んだ。ということは、心の中では誰かに背中を押されたいと思っているのだろう。

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