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めんどくさい女の子たち  作者: あかなめ
第六章 久保田友恵と稲垣良美
151/334

150 気分屋

登場人物

・久保田友恵(トモちゃん)中一女子

・稲垣良美(ガッちゃん)久保田友恵の同級生でクリスチャン

・安倍あきら(あーちゃん)久保田友恵の同級生で陽キャの美術部員

・川上風美ふみ(ふみちゃん)久保田友恵の同級生で陰キャの美術部員

【みてみんメンテナンス中のため画像は表示されません】


「とりあえず放置じゃないかな」とわたしはふみちゃんに言った。「あーちゃんは〈悪口を言ってごめんね〉と謝って、相手はあーちゃんを許した。それはうわべだけかもしれないけれど、とにかくあーちゃんを許した。だからあーちゃんがこれ以上謝る必要はないよ」

 わたしはそうペラペラとしゃべりながら、以前の自分だったらこんなことは言わなかっただろうな、と心の隅で感じていた。


「でも……」

「すでに謝られて自分でも許したのに、それでも過去のことをほじくりかえしてグチグチ言ってくるのなら、そんな人とは縁を切るべきだよ」

「でもね、そんな人ばっかりなんだよ」


 以前のわたしだったら、残したほうが得な関係であれば、相手に〈ホントにあのときはごめんね〉と詫びを入れただろう。善悪よりも損得だ。

 今でも〈善悪よりも損得〉は変わらない。ただ、今まで〈得〉だと思ってきた関係が、切れてみるとただの足枷にすぎなかったことが分かってきたのだ。

 かつてのわたしは〈友だち〉という餌を食べ過ぎて巣穴から出られなくなった山椒魚だったわけだ。

 今ではずいぶんとダイエットしたおかげで、外と巣穴を自由に出入りできるようになった。〈外〉とはつまり、ひびきちゃんやガッちゃん、吉田さんたち、そしてバンドの三年生の人たちなんかのことだ。


「いいや、ハブられるのが怖くて同調しているフリをしているだけの人もいると思うよ。むしろそっちのほうが多いんじゃないのかな。群れるとラクだし」

「あたしは群れても苦しいだけ……」とふみちゃんは言った。「でも、いつだってあーちゃんが矢面に立ってくれるから、あたしはどうにかなってるんだけど、でも、あーちゃんがいなくなったら……」


 あーちゃんが体を開いてガッちゃんを振り回し、かかとに左足をかけて倒そうとする。支釣込足だ。ガッちゃんはかろうじて踏ん張るもバランスを崩す。そこへあーちゃんが右足でガッちゃんの両足をひざのあたりからなぎ払う。大外刈が見事に決まった。疲れ果てたガッちゃんは大の字になったまま起き上がれないでいる。

「ねえ、今の合わせ技だよ。あーちゃんって実はすごいんだね」

「うん。稲垣さんとやるの、けっこう楽しいって言ってた」

「なんでだろ?」

「一生懸命になれるから、だって」


 あーちゃんという人は、ムカついたら文句を言う、仲直りしたくなったら仲直りしようとする、カルトだと思ったらカルトだと言いふらす、そして、一生懸命の相手には負けないくらいに一生懸命になる。

「あーちゃんは単純に気分屋さんなんだね」とわたしは言った。

「うん。……っていうか、気分しかない」


「ふみちゃん、そんな人とよくいつも一緒にいれるね。気分でガーッて責められたりしないの?」

「あーちゃんはあたしを崇拝してるの」

 崇拝⁉

「へえ! そうだったんだ!」

 わたしはてっきり、あーちゃんは自分を引き立てるために大人しいふみちゃんを侍らせているのだとばかり思っていた。

 しかしふみちゃんの話を聞いていると、あーちゃんにそんな高度なことができるわけがない、と確信するに至った。気分屋のあーちゃんは、単にふみちゃんと一緒にいたいから一緒にいるだけなのだ。

「ふみちゃんはどうして崇拝されてるの?」

「それはちょっと、恥ずかしいから言えない……」


「じゃあ、ふみちゃんにとってあーちゃんはどんな存在なの?」

「盾」

「たて?」

「シールド。それ以上でも、それ以下でもない。ひどい話よね」

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