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めんどくさい女の子たち  作者: あかなめ
第二章 稲垣良美と児玉くん
15/334

15 告白

登場人物

・柊響(ひびきちゃん)中一女子

・久保田友恵(トモちゃん)柊響の同級生で友だち

挿絵(By みてみん)



 ひびきちゃんが実力者の地位を不動のものにしたのは、なんといっても文化祭だ。

 半年前までランドセルを背負っていたわたしたち一年生にとって、三年生はものすごく大人びた遠い存在だ。

 そんな三年生のバンドに一人混じって、なんの違和感もなくギターを操るひびきちゃんはたちまち伝説になった。


 とくに男子たちの間で。


 ──見ず知らずの三年生にいきなりメンバー加入を申し出るなんてどうかしている。

 ──狂っている。

 ──なんてロックな女なんだ。

 ──スーパーサイヤ人だよ。


 正直、わたしはすこし怖くなった。

 いつもわたしのそばにいる、この女子力ゼロの女の子は、もしかしたら雲の上が似つかわしい、とてつもない人なのかもしれない──。



「トモちゃん、相談があるんだけど、いいかな」

 ひびきちゃんから相談を受けるなんてはじめてのことだ。わたしはすっかり舞い上がってしまった。

「もちろん!」

「ありがとう!」

 そしてひびきちゃんはわたしの耳元で囁くように言った。

「じつは、児玉くんから告白されたんだけど……」

「えっ!」


 これは困ったぞ。

 児玉くんは勉強もスポーツもできる結構カッコいい男子だ。

 そして、児玉くんはガッちゃんが好きな男子でもあるのだ。

 ガッちゃんは勉強熱心な負けず嫌いの女子で、ひびきちゃんをライバル視している(ひびきちゃんのほうはなんとも思っていないのだが)。

 そのガッちゃんは文化祭以降、なんだか元気がない。

 まあ無理もない。

 が、その上、ひびきちゃんが児玉くんと付き合うようになってしまったら、もうガッちゃんは壊れてしまうかもしれない。

 困ったぞ。


 しかしひびきちゃんはこう言った。

「……どうやって断ったらいいか、教えてくれないかな」


 ひびきちゃんとわたしは神通川(じんずうがわ)沿いのベンチで話をした。

「ひびきちゃんは、児玉くんのどこがダメなの?」

 チー牛だらけの男子の中にあって、児玉くんは爽やかさ満点の希少種だ。もしわたしが告白されたら──。

「いや、ダメっていうんじゃないけど」

「もしかして、誰か好きな人がいるの?」

 わたしがそう尋ねると、ひびきちゃんは首を横に振った。

「ほら、あたし、お子ちゃまだから、恋愛感情っていうのがどうにもわかんなくて……」

 ああ、こういうところが〈尼僧〉なのだ。

「ひびきちゃんがお子ちゃまだったら、あたしは微生物だね」

「いいや、トモちゃんは大人だよ。あたしにはトモちゃんみたいな繊細さのかけらもないし。〈感情の機微〉ってやつ?」

 たしかに、〈感情の機微〉なんて言葉はひびきちゃんの辞書にはない。断言できる。


 なんの取り柄もないわたしが、スーパーサイヤ人みたいなひびきちゃんの力になれるなんて、まったく夢のような話だ。

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