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めんどくさい女の子たち  作者: あかなめ
第六章 久保田友恵と稲垣良美
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115 険悪

登場人物

・久保田友恵(トモちゃん)中一女子

・畠中祐生ゆうき(ハタケ)久保田友恵のとなりの席の水泳部員

・増田敏生としき(マスオ)久保田友恵の同級生で剣道部員

【みてみんメンテナンス中のため画像は表示されません】


「お二人さん、もしかしていい感じ?」とマスオが近寄ってきた。

 増田敏生としき、通称〈マスオ〉。剣道ひとすじ、カチンコチンの硬派な男子だ。なのになぜかチャラ男のハタケと仲がいい。


「がんばって口説いてるんだけどさー、なかなか落ちてくんなくてねー」とハタケがニヤけた顔でマスオに言った。

 えーっ、あれって口説いてたの⁉︎

 マスオが険しい顔でわたしを見下ろす。もしかして軽蔑してんの?

「ち、ちがうよ! 雑談してただけだよ!」


 ハタケが、芸人演じるオバサンのように手をパタパタ振りながら「冗談だよトモちゃん、そんな真に受けちゃって、カワイイとこあるじゃーん」と笑って言う。わたしはおちょくられた気がしてちょっとムカついた──ハタケごときに。

「なあ久保田」とマスオが言う。わたしのことを〈久保田〉と呼ぶのは、吉田さんたちのほかは、この超硬派のマスオだけだ。


「ハタケは卑怯な男なんだ。チャラいフリをして相手の警戒心を下げといて、撒き餌をばら撒いて、食いついてきた魚を食おうっていう魂胆だ。相手から告白されたほうが優位に立てるからな。まったく実に卑怯だ。だから久保田も気をつけな」

 マスオは純朴なやつだ。そんなマスオにハタケは狡猾なんだと忠告されて、わたしはハタケがほんとうに単細胞なのか、あるいはとても計算高くズルいやつなのか、ほんとうにわからなくなってしまった。


「おめーは相変わらず極端だよなー」とハタケは言い返した。「おめーの頭ン中じゃ、女子との関係は〈無関心〉か〈大恋愛〉かのどっちかしかねーんだろ?」

「……女子との友情なんてありうるのか?」

「あるよあるよ! オメーにはなくてもオレにはあるんだよ!」とハタケはマスオに食ってかかった。「オレはおめーみたいに頭ン中がエロで破裂しそうなヤツじゃねーんだ。オレは女子の水着姿を見ても何にも思わねーんだよ、おめーとは違ってな」

 まあ確かに、女子の水着姿にいちいち興奮しているようでは水泳部員はつとまらないだろう。

「今だって読書の素晴らしさについて語り合ってたんだ。恋愛要素ゼロ。ポカリスエットよりも清らかな友情だよ、ねえトモちゃん?」

 そう親しげに話しかけてくるハタケがわたしは少し怖かった。


 もう教室にはあまり人がいない。そしてわたしはサムエル記をぜんぜん読めていない。そしてハタケもマスオもなんか空気が悪い。

 ちょうどそんな気まずいときに、なんとガッちゃんがやってきた。まだ帰ってなかったんだ。それに、こっちにやってきていいの⁉︎


「ちょっとあんたたち!」

「あれ? 稲垣さん、怒ってるの?」とハタケが訊いた。

「当たり前じゃない。ずっと後ろで聞いてたけど、トモちゃん困ってるじゃないの」

「おめーのせいだよ」とハタケがマスオを指さした。


「いい? トモちゃんは二人を信用してるんだよ。でも、二人の言ってることが食い違うから、〈どっちかが信用できない人なんだ〉と思って困ってるんじゃない」

 さすがガッちゃんは頭がいい。切れ味抜群のクリアーな論理だ。

 しかしぜんぜん違うんだよ。

 裏表がぜんぜんないと思っていたハタケのことが、急に腹黒の恐ろしいやつにしか見えなくなって戸惑っているんだよ。

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