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めんどくさい女の子たち  作者: あかなめ
第六章 久保田友恵と稲垣良美
111/334

110 外側

登場人物

・久保田友恵(トモちゃん)中一女子

・吉田夏純かすみ 久保田友恵の同級生でクラス一おっかない女子

・柊響(ひびきちゃん)久保田友恵の友だちで同級生

・稲垣良美(ガッちゃん)久保田友恵の同級生でクリスチャン

挿絵(By みてみん)


 みんな白く見えているのに、黒いと言わないといけない空気。「いいや白いよ」と言ったら排除。「やっぱり黒いよ」と相互牽制──それが LINE グループ。


「吉田さんの話を聞いてると、なんだか LINE グループのほうがカルトみたいに思えてきたよ」

「だろ。外側からしか見えないものもあるんだ」

「外側?」

「あたしはさ、外側の人間だから、いつも連中を観察してんだ。久保田、お前のこともな」

「そうなの。吉田さんから見てあたしはどう見えてるの?」


「久保田はなあ、一学期はクソの中のクソだったな。女子のあざとさを特盛にした感じだった」

「その見立ては正しいと思う」

「でもよ、お前、柊といつも一緒にいて、影響受けまくってるよな。あんなふうになりたいんだろ?」

「それは自覚ないけど、影響受けまくってるのはホントそう」

「よく観察してるだろ?」

「うん」


「柊は特別だ、ギフテッドだ、ってみんな思ってる。自分はああはなれねーって諦めてる。だから連中は窮屈なムラを作って陰口を言い合いながら窮屈に生きている。陰湿なクソ田舎の農村とおんなじだ」

 吉田さんはそう言い切った。なんでこの人は LINE グループに入ってもいないのに、こんなに生々しく内情を知っているのだろう?

 それはきっと、外側から観察しているからだ。

 一番内側のことは、案外、一番外側から一番よく見えるのかもしれない。

 わたしは吉田さんを完全に勘違いしていた。この人はみんなに爪弾きにされて外側へ追いやられているのではなかった。LINE グループのような陰湿なムラ社会がイヤだから、自らすすんで外側にいるのだ。


「でもよ、凡人のお前までもが柊みたいになれたら、あのクソガキ連中の鼻も明かせるんじゃねえか」

 ひびきちゃんみたいになるということは、ムラの外にいて、なおかつムラの人と友好的に交わることを言うのだろう。

「鼻を明かしたいとは思わないけど、距離は置きたいかな。当たり障りない関係でいられたらベストだけど、ベタベタするかハブられるかしか選択肢がないのなら、ハブられる方がまだいいかな」

「へえ。お前、けっこう強いんだな」


「あたしには親友が二人いるんだ。ひびきちゃんとガッちゃん。だから、この二人がいればあとはべつにどうでもいいや、って感じなの」

「稲垣か。あいつはホント変なやつだよな。頼みもしねーのに、なぜかいつもウチらにノートを貸してくれる。ありがたいけど、変な話だ」

「きっとガッちゃんは吉田さんの堂々としたところが好きなんだよ」


 始業のチャイムで吉田さんとわたしは教室に戻った。

 吉田さんとこんなに話したのは初めてだ。

 わたしは吉田さんをみんなと同じように、声の大きなおっかないギャルで、言葉づかいが荒く、人の悪口ばかり言っている、勉強をしない怠惰な人なんだと思い込んでいた。

 しかしそれはわたしたちの先入観だった。


 たしかに声は大きいほうだが、ほかにもあれくらい大きな声を出す人は何人もいる。

 見た目がおっかないのはそのとおりだが、表で笑って裏で貶める人よりはぜんぜんおっかなくない。

 言葉づかいは荒いが、あの口調で人の悪口を言ってたりするのだろうか。話した感じからすると、個人を人格攻撃したいのではなく、ムラの陰湿さに憤っているように見えた。まあムラの人にとっては、ムラの悪口を言われたら「コノヤロー、悪口言うな」と思ってしまうのだろう。

 そして勉強はあんまりしてなさそうだが、ガッちゃんのノートに感謝していることはわかった。そういった、頭のいい人にノートを借りてテストを凌ぐというのは、わたしたちがやっていることとなんら変わりがない。


 でも、吉田さんはなぜ疎遠なわたしにあそこまで親身になって心配してくれたのだろうか?

 〈クソの中のクソ〉だったわたしに。

 イヤなヤツがひどい目に遭ったら、ふつうだったら「ざまあ」と思って終わりだと思うんだけど。

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