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めんどくさい女の子たち  作者: あかなめ
第六章 久保田友恵と稲垣良美
110/334

109 カルト

登場人物

・久保田友恵(トモちゃん)中一女子

・吉田夏純かすみ 久保田友恵の同級生でクラス一おっかない女子

・柊響(ひびきちゃん)久保田友恵の友だちで同級生

・稲垣良美(ガッちゃん)久保田友恵の同級生でクリスチャン

・安倍あきら(あーちゃん)久保田友恵の同級生で陽キャの美術部員

・川上風美ふみ(ふみちゃん)久保田友恵の同級生で陰キャの美術部員

【みてみんメンテナンス中のため画像は表示されません】


「お前をハブろう、って話になってんぞ」

 吉田さんはわたしにそう言って、LINE グループのスクショを何枚か見せてくれた。

 ターゲットの数だけ LINE グループはあると言われている。今回はわたしがターゲットになっている。つねにそういった輪の外側にいる吉田さんは、もちろん LINE グループには入っていないが、誤爆はよくあることなので、ネタになるスクショはどこからともなくやってくるのが常だ。


「お前、カルトにはまってんのか?」

「え?」

「お前、カルトにはまって LINE が未読スルーばっかになっている、ってことになってんぞ」

「ふーん」

「あれ、お前、なんか余裕だな?」


 LINE の通知をオフにすると決めたとき、わたしはみんなに〈LINE は一日二〇分以内と親から言われたので、これからは読んだり返信するのが遅れます〉と一斉送信した。これはもちろんウソで、だいいちわたしが親のいいつけを律儀に守る中学生でないことはみんなわかっている。だからこれは言い訳というよりはほとんど宣言だ。


 わたしのこの LINE にムカついた人は少なくないと思う。そしてわたしの確信犯的な未読スルーや亀レスも非常に神経を逆撫でるんだと思う。だって誰もが、他人の LINE をできるだけ速やかにチェックしないとといけない、できるだけ速やかに反応を示さないといけない、という義務の重荷にうんざりしているからだ。これは、みんながイヤイヤ便所掃除をしているのに、久保田友恵だけ仮病でサボっているようなものなのだ。


 自分の話を聞いてほしいときに躊躇なく LINE を送れるふてぶてしい人だけが得をして、そうでない思いやりのある人は損ばかりしている。そしてふてぶてしい人は声が大きく、往々に生殺与奪の権利を持っている。

 わたしはそういうことをわかった上で、それでも LINE の通知をオフにしたのだ。ハブられるのは想定内だ。


 そして〈カルト〉の情報源はあーちゃんで間違いない。わたしが聖書を読んでいることはあーちゃんとふみちゃんしか知らない。そしてふみちゃんは陰で悪口を言う人ではない。ふみちゃんはその見た目から陰で悪口を言われてきたから「自分はそういうことはしたくない」と言っていたと人づてに聞いたことがある。

 カルト呼ばわり──まあこれも想定の範囲内だ。これがわたしをハブる(てい)のいい理由づけになったというわけだ。


「吉田さん、心配してくれてありがとう。あたしはカルトにハマってはいないよ」

「カルトにハマってる連中はみんなそう言うさ」

「ただ興味本位で聖書を読み始めただけだよ」

「聖書? そんなもんやめとけ。ダチの親が聖書の読み過ぎで完全に狂っちまってやがる。機嫌が悪いとムチで血が出るまで打ってくるんだ」

「大丈夫。あたしに聖書を貸してくれた人はぜんぜんまともだし、それに、キリスト教徒になったら大変だからやめとけ、って言うような人なんだよ」


「じゃあカルトってのはデマなんだな」

「うん」

「でもよ、そんなの誰も信じねえよ──っていうか、もし〈久保田はカルトじゃない〉なんて言おうものなら、敵認定されて自分もハブられちまう。だからあのクソ連中は誰もなんも言えねーんだよな、カルトじゃないって思ってても」

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