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めんどくさい女の子たち  作者: あかなめ
第六章 久保田友恵と稲垣良美
107/334

106 無関心

登場人物

・久保田友恵(トモちゃん)中一女子

・稲垣良美(ガッちゃん)久保田友恵の同級生でクリスチャン

挿絵(By みてみん)


 午後四時ちょうどに終礼が終わるとみんなガタガタと席を立った。

 みんなのうち四分の一はすぐさま部活へ行く。強豪の吹奏楽部なんかがそうだ。そして強豪部所属ではない四分の一は部活が始まるまでまったりとダベる。

 四分の一は帰宅部だけどダラーっとダベる。そういうのはだいたい女子だ。一人がダベり出すと他の人は「帰ろう」とは言いづらくなるのだ。

 そして最後の四分の一は自宅恋しさにさっさと帰る。


「トモちゃん、いっしょに帰る?」とガッちゃんが誘ってきた。

「あたしは残るからいいや」とわたしは言った。

「そう。じゃあ、さようなら」とガッちゃんは言って、わたしの計画を何も知らないまま帰っていった。


 ガッちゃんが教室から出ていくと、わたしは棚から紙袋を取り出して机の脇に置き、袋から大きい方の聖書を取り出した。一・四キロあるとガッちゃんは言っていたが、たしかに筋トレできそうなほど重たい。


 さあ読むぞ。

 わたしはガッちゃんに勧められた〈サムエル記・上〉を開いた。普通の冒険小説なんだという。

 しかし最初の一段落で登場人物が七人も出てきたぞ。こりゃあメモしないと読めないな。でも今日は未使用のノートは持っていないし、とりあえずプリントの裏にメモしておこう。


「トモちゃん、なに読んでるの?」とあーちゃんが訊いてきた。あーちゃんといつも一緒にいるふみちゃんも無言でわたしを窺っている。

 二人は美術部で漫画オタク仲間だ。あーちゃんは絵に書いたような陽キャで、ふみちゃんは見た目がその真逆、〈貞子〉のような陰キャ。しかしその外見に反して、ふみちゃんの悪い噂は不思議と聞かない。だから入学から半年以上経った今では〈じつは爽子〉説がもっぱらだ。


「聖書だよ」とわたしはあーちゃんに答えた。

「聖書って、ガチの聖書?」

「うん、ガチの聖書」

「ふーん……。じゃあね」とあーちゃんはニコニコ顔のまま言って手を振った。

「じゃあね」とわたしは二人に言った。


 あれ?

 べつになんとも思わないのかな?

 わたしはすっかり拍子抜けした。じつは「聖書だよ」と答えるとき、わたしはけっこう緊張していたのだ。

 わたしだったら、もしあーちゃんがでっかい聖書を読みふけっていたらびっくりすると思うんだけどな。


 わたしは下校時刻の五時まで一時間サムエル記を読んでいた。それなりの人数が教室に残ってはいたのだが、けっきょくわたしに話しかけてきたのはあーちゃん一人だけだった。


 ガッちゃんは〈フツーに冒険小説〉と言っていたが、いやいや、こんな冒険小説はないよ。三章まで読んだが、冒険のボの字も出てこないし、腑に落ちないことが多すぎる。

 夫に妻が二人いるのは昔の話だからまあいいよ。でも、子どもができずに悩んでいた妻のハンナは、子どもがほしいと神さまにお願いしてせっかく手にした赤ちゃんを、どうしてすぐに手放したのか? それも喜々として。あんた子どもが欲しかったんじゃないの?

 ほかにも意味不明が多すぎる。こりゃあガッちゃんがいないと読めそうにないや。訊いたら教えてくれるかな?


 わたしは聖書を紙袋に入れ、棚に片付けた。もう教室には誰もいない。

 こんなもんなのかな?

 みんな人にどう見られるかを気にしている割には、他人のことなんかぜんぜん気にもしてないのかな? ガッちゃんもわたしも考えすぎだったのかな?


 お母さんから連絡がないかと、わたしは LINE を開いた。わたしは LINE の通知をオフにしているので、ポチッと開かないとわからないのだ。SMS にしてくれと頼んだのだが、お金がかかるからダメと断られた。

 連絡はなかった。


 それと、今日はクラスのグループ LINE の通知がやけに少なかった。

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