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めんどくさい女の子たち  作者: あかなめ
第六章 久保田友恵と稲垣良美
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103 ピリピリ

登場人物

・久保田友恵(トモちゃん)中一女子

・柊響(ひびきちゃん)久保田友恵の友だちで同級生

・ホリー(堀井千代子)(びびり担当、ギター)

・チーちゃん(早川智子)(元気担当、ボーカル、リーダー)

・すずみ(杉本鈴美)(厨二病担当、キーボード+打ち込み)

・りさりさ(式波里砂)(クール担当、ベース)

挿絵(By みてみん)


 けっきょく午前中の間にひびきちゃんが保健室から教室へ戻ることはなかった。朝は元気そうだったが、もしかしたらまたゲロを吐いたのかもしれない。そう思うと保健室に行きたい気持ちが大きく膨れ上がってくる。

 だが、今日の昼休みは三年生のところへ行くと固く心に決めたのだ。奴隷が主人の足についた砂を洗い流すように、ひざまずいて感謝の言葉を述べるのだ。ひざまずかないけど。


 わたしは給食を掻き込んで三年生のいる三階に上がった。

 〈デッド・ムーン〉は五人だったが、ひびきちゃんが教えているのは三人だという。だれがその三人なのかはわからない。とうぜんクラスもわからない。

 神通川(じんずうがわ)中学校は各学年ABCの三クラスある。とりあえずわたしは「失礼します!」と無礼のないように気をつけて三年A組の教室に入った。

 教室の人たちはわたしの胸元の赤いリボンを見て、えっ、と驚いた表情を見せる。リボンの色は入学年ごとに異なっていて、わたしたち一年生は赤、二年生は緑、三年生は黄色となっている。だから黄色ばかりの中に赤が一人入ると「あ、一年だ」とすぐにわかるのだ。


 大勢の人が寸分を惜しんで勉強している。そのピリピリした空気にわたしは圧倒されそうになる。ひびきちゃんはこんな人たちに勉強を教えてるんだ、と思うと、そりゃあゲロも吐くわな、とわたしはすっかり納得してしまった。

 わたしは知った顔を探した。半分以上の人が、なんだこいつは?、という表情でわたしを訝しげに眺めている。わたしの存在が三年生の集中力を削いでいるのだと思うと、もういたたまれなくて仕方がない。


 だれか知った顔はいないか? そうわたしがキョロキョロしていると、たまたま問題集から顔を上げた堀井千代子さんと目が合った。わたしは救われたような気持ちで堀井さんの元へ行った。

「堀井さん、ごぶさたしてます。城址(じょうし)公園で一度お会いした久保田友恵です。覚えていますか?」

「トモちゃんでしょ。覚えてるよ」と堀井さんは笑って言った。「何しにきたの?」

「ひびきちゃんと勉強している三年生の人に会いたいんですが、それが誰だかわからないんです。だからとりあえずA組に入ってみたんです」

「そうなの。それはC組のチーちゃん、すずみ、りさりさの三人だよ」

「ありがとうございますッ! 勉強の邪魔してすいませんでした!」

「そんなに緊張しなくていいのよ」

「は、はい!」


 あー緊張した。あたしまで給食吐いちゃいそうだ。それにしても、受験ってあんなに大変なんだ……。

 わたしはB組を飛ばしてC組の中の様子を廊下から伺うと、早川さん、杉本さん、式波さんの三人が机をくっつけて勉強しているのがすぐにわかった。

 さっきは声が大きすぎた。今度は三年生の勉強の邪魔をしないよう、ごく小さな声で、失礼します、と礼をして教室内に入った。


「……あのう、勉強中のところすみません」

「あああっ! びっくりしたー!」と早川さんがイスからひっくり返りそうになりながら叫んだ。「んーと、トモちゃんだね」

「ごぶさたしてます」

 久しぶりー、と杉本さんが、よっ、と式波さんが言ってくれた。

「どうしたの?」と早川さんが尋ねた。

「あのう、みなさんにちゃんとお礼が言いたくて、思い切って来たんです」

「は? お礼?」

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