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めんどくさい女の子たち  作者: あかなめ
第六章 久保田友恵と稲垣良美
103/334

102 作戦

登場人物

・久保田友恵(トモちゃん)中一女子

・稲垣良美(ガッちゃん)久保田友恵の同級生でクリスチャン

・柊響(ひびきちゃん)久保田友恵の友だちで同級生

挿絵(By みてみん)


 二時間目が終わったあと、ガッちゃんがわたしの席に来て紙袋を手渡した。中には大きいのと小さいのの、いずれも分厚い本が二冊入っていた。

「二冊もあるよ」

「卓上用と携帯用。じっくり読むときは字の大きい卓上用を、持ち運んでちょっとだけ読むときは小さい携帯用を使うの」

「ふうん」

 わたしは紙袋を手で持ち上げてみた。

「こりゃあ重いね。もしかしてこれ全部読んだの?」

「通して読んだのは三回だけ」

「ひゃあ、三回も!?」

「分厚いけど、中は短編集だから。それに、トモちゃんは面白そうなところをつまみ食いするだけでいいんだからね」

「こんな重たい本をわざわざ持ってきてくれてありがとう」

 そうお礼を言ってわたしは中の本を取り出そうとしたが、ダメダメ、とガッちゃんに止められた。なので聖書は紙袋に入れたまま自分の棚にしまった。


 わたしは、ガッちゃんの願いを叶えるにはこれしかない、と思っている。わたしが放課後、堂々と聖書を読むのだ。

 なに読んでるの?と訊かれたら、聖書だよ、と堂々と答える。

 クリスチャンだったの?と訊かれたら、違うよ、と答える。

 じゃあなんで読んでるの?と訊かれたら、もうすぐクリスマスだし、興味があるから、と答える。

 面白いの?と訊かれたら、……その返事は読んでみてから決める。


 買ったの?と訊かれたら、借りたの、と答える。

 誰に借りたの?と訊かれたら、クリスチャンの友だちから、と答える。勝手にガッちゃんの名前は出さない。

 神さまがいると信じてるの?と訊かれたら、まだ分からない、と答える。

 キモいと陰口を言われても気にしない。わたしは反論しないし、相手にもしない。だって、壁の向こうのガッちゃんはちっともキモくないし、魅力的でかわいい女の子なんだから。


 今日から毎日、下校時刻の五時まで教室で一人聖書を読むのだ。

 中学生活においてこんなに気合の入ったことはない。

 はじめのうちはみんな奇妙に思うだろう。ヘンな噂も立つかもしれない。しかしそれが毎日続き、自分たちへ何の危害もないとわかると、聖書を読むわたしはただの風景になるだろう。それがわたしの目標だ。


 そして、わたしができるのはここまでだ。

 わたしにはガッちゃんがどうすべきなのかはわからない。しかしガッちゃんは頭がいいから、きっと自分がやるべきことは何かを考え、それを適切に実行へ移すだろう。わたしはガッちゃんの勇気が臆病さに勝ることを信じている。

 そして、ガッちゃんがわたしを信じてくれることも。

 わたしはガッちゃんを孤立させたりしない。


 放課後がまるっとつぶれるので、わたしがひびきちゃんのために動けるのは昼休みだけだ。

 わたしは今日の昼休み、三年生に感謝を伝えると決めている。ただし、なにを感謝するのかはこれから考える。とても奇妙な感じがするが、ガッちゃんの言う通り、わたしが三年生と関係をもつ方法はそれしかないのだ。

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