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遠征②


 チョケ本は友理と青年の間に起こった出来事の追体験を続けていた。普段とはあまりに違う友理の振る舞い方に慣れなさは一向に抜けていないが、それとは別の違和感をかなり感じていた。


「友理さん、この方とは一体どういう関係なのだろう? どうも正体を隠しているみたいだけど、元々ずっと一緒に過ごしていたかのような距離感。


過去に話を聞いていた感じだとここで初めて出会い、いい雰囲気になったぐらいと聞いていたから少し違和感が……」


 友理が一定間隔を開けて彼の後ろを歩いていることと、その足取りの軽さと目線から違和感を感じ取っていた。過去に遠征で何度も会っているとはいっても、青年は記憶を引き継ぐことができない。ゆえに青年の行動には一貫性がない中、あまりにも友理の動きが自然、むしろ先読みができているようだったからである。


「あとこの空間、あまりにも異質。過去の厄災で世界が変容してしまったこととはまるで別……。世界ではなく空間と呼ぶ方が正しいのかも。


この空間に来る際、いつも専用の杖を使っていることと関係あるのかも。そもそも友理さんからその杖とこの空間のこと詳しく説明してもらったことがない……。


いえ、違う! 一度聞こうとした時、はぐらかされたんだった。ちょうどその時チョケ田もいたから、話が変な方向に行ってしまったっていうのもあるけど!


そんなことよりも、この青年は一体何者……? 友理さんに害を与えるような感じではないけれど、なんというか男として魅力あるのかな……?


いえ、ダメ! 異性の好みのタイプは人それぞれ。そもそも私ペンギンだから、人間の男性に興味が出ることってあるのかな?


いえ、ダメ! 顔やスタイルで恋愛は語っちゃいけない! と、本には書いてあったからね……。


えっ、となると友理さんはこの青年のどこが好きなのだろうか? この空間へ来る前にあの専用の杖を使ってエルフから人間に変身してはいるものの、エルフと人間の間に恋愛感情って芽生えるものなの?


いえ、ダメ! すぐに顔やスタイルを考えてしまう。


違う! そこじゃない! そもそも変身する魔法って何? 私はそんな系統の魔法は知らない。友理さんだからなんでも出来るっていう固定観念がありすぎた。


違う! そうでもない! 私はここへ何をしにきたの!」


 チョケ本は膨大な情報量のせいで混乱していた。チョケ本と友理は仲が良いものの、それがかなりのものが故に核心をつくような会話をしてこなかったのである。正確にはチョケ本が気を使いすぎるタイプで、友理があまり自分を語ろうとしないタイプのため、仲が良くなりすぎたとも言える。


 チョケ本は混乱と共に、自分が友理から信用されていないのでは? と感じ始めていた。あまりにも友理のことを知れていなかった。教えてもらえていなかった。そういった負の感情が一気に芽生え、途中から追体験そっちのけで負のスパイラルに陥っていた。


「私、友理さんのこと何もわかってなかった。こんなんじゃ合わせる顔がない。どうしよう……。


もし戻った時、友理さんになんて感想を言ったらいいのかな。


変身する魔法って何ですか?


いえ、ダメ! あの杖が絡まないようだからもしかすると触れちゃいけない話なのかも。


あの青年は何者ですか?


うーん…… ダメ! 素直に聞いた方が良いのかもしれないけれど、あの時感じた距離感がどうも聞いたらいけない気がする。


あの青年のどこが好きですか?


うーん…… ギリギリアウト! 多分何かしら答えてくれると思うけれど、きっと上辺の回答で私が聞きたい答えと違う可能性が高い。それに今回この追体験をさせてくれるにあたって、友理さんのキュンキュンした心を突いてお願いしたのだから、ここは共感で一言目を切り出すのが良いはず……」


 『メモリーアウト』が解除されてからのことを必死に考え始め出したところで、友理と青年が額を当てた場面になった。


「えっ、えっ、何!? 友理さん大胆! 直前の会話全然頭に入ってきてなかったから、何が起こってるかわからない! これだ! キュンキュンって!」


 慌てふためきながらもチョケ本は答えを見つけたのだった。


「ん? 『瓦解虚曲(がかいきょきょく)』って何だろう? 変われと言った後にそう呼んだような? その後フロストデーモンと戦う時、手にしていた竹刀の名前なのかな。でもそんな名前今まで友理さんから聞いたことないし。


あっ! やっぱり私って友理さんのこと何も知らない……。どうしよう……」






 フロストデーモンとの戦闘が終わったところで『メモリーアウト』は解除された。


「チョケ本ちゃんお帰り。気分はどう? 大丈夫?」


 友理は優しく問いかけた。初めチョケ本は頭がぼーっとしていたが、10秒程経ったところで思考が回復し一気に様々な感情が押し寄せた。


 最後の最後で負の感情が襲ってきたこともあり、気分としては正直悪かった。だが友理の姿を正面からしっかり見た時、安心感からかそんな感情は無くなり、いつものチョケ本に戻っていた。


「大丈夫です! あの額がくっつく瞬間、とてもキュンキュンしました!」


「おー! やっぱりわかってくれる! そうなの! このキュンキュン、チョケ本ちゃんにならわかってくれると思ってたの!」


 友理はチョケ本に期待していた反応がそのまま返ってきたことで、とても喜びをあらわにしていた。


「ちなみに、今まで額をくっつける以外のことはしたんですか?」


「おっ、気になるのかい?」


「はい!」


「うーん、それは秘密! チョケ本ちゃんにはちょっと刺激が強いかもだからねぇ」


 友理は上機嫌だった。しかしその状態でもやはりどこか、はぐらかされているような感覚をチョケ本は感じ取っていた。

 どこにでもあるような恋バナのようではあるが、先ほど体験した記憶から瞬時に分析した結果、それ以上のことは無いだろうと判断したからである。

 根拠と言える程のものは無い。本来こういう分析をチョケ本は嫌う。しかし友理に関することである以上、些細なことにも敏感に感じ取ることができる。分析というにはお粗末だが、分析以上に信頼がおける。 直感と言った方が正しいだろうが、直感以上の信頼性を感じたがゆえに、この時チョケ本は思考を巡らせる際、分析としてこの感覚を処理したのだった。




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