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封印指定武具の代償


 友理が『光雷混合系統最上位魔法 消滅の雷光(エレクトロリシスレイ)』使用後、数日間は大気中に魔力を帯びた電気が滞留し、生活する上では不便な状況となった。

 そのため家と庭を囲う形で魔法障壁を張っていた。

「風系統下級魔法 ウィンドガード。これで家にいれば安心よ。もし外に出たい時があれば言って、追従式の魔法をかけるから」

「ありがとうございます! それにしてもさっきの魔法すごかったです!」

「最上位魔法でそれも魔力を練り上げる時間も沢山あったからね……。ちょっとやり過ぎたって感じではあるのだけど……」

「第6の厄災さんはどうなっちゃったんでしょうか……?」

「あいつはあんなんで消滅するような者ではないわ。むしろ久々にちゃんとした触媒を補給できて喜んでいると思うわ」

「触媒の補給? ですか?」

「そう、私たちの持つ封印指定武具は基本発動するにあたりいくつかの触媒を必要とするの。完全天秤(パーフェクトスケール)の場合は魔力と均衡を保とうとする心らしいわ。だけれど、第6の場合いつの間にか肉体は消失し、概念そのものに昇華したらしいの。とはいえ封印指定武具自体は今も形として残っていて、話したい時はその天秤に話しかければ会話できるの」

「なんだか……、すごい方なんですね」

 最初は心配していたチョケ本だったが、肉体を捨て武具と同化したことに対し若干引いていた。

「そうね。ただ、あいつは一つ大きなミスをしていて、自分で魔力供給を天秤にできなくなってしまったの。チョケ本ちゃんも魔法使えるからわかると思うけど、肉体あってこそ魔法を扱え、それは魔力操作を行うためには肉体が必須だからなの。でもあいつはそんなことよりも均衡という概念そのものに執着した結果、肉体をいつの間にか失っていたの」

「だいぶ変わった方なんですね……」

 チョケ本はドン引きに変わっていた。


「普段は天秤自体に魔力をちょっとずつ注いであげているのだけど、今回の遠征がちょっと長引いちゃったせいでいつもより多く魔力を上げなきゃ行けなかったのよね」

「えっ、友理さんが定期的に魔力供給してあげているんですか!?」

「そうよ。私何か変なこと言っちゃったかしら??」

「変……、というか、なぜ? って思ってしまいまして?」

「あいつが良いやつ……? だから?」

 友理自身しっかりとした根拠は無く、悪いやつ以外は良いやつ、良いやつには優しくしようといった安直な考えの持ち主ゆえの回答だった。

「そう……、なんですね! 友理さんが良い方と認めているのであれば、それが理由ですよね!」

 内心全く理解が出来ていなかったチョケ本だったが、友理に対するリスペクトが変に傾かないようこの話を切り上げ、別の話題を始めた。


「私が『精神干渉系統中級魔法 メモリーアウト』の中で第6の厄災さんの干渉を受けたのはどうしてなんでしょうか?」

「それはおそらく、第6が肉体を持っている姿の入った記憶だったからね。少し考えればわかることだったのに、チョケ本ちゃんには本当に悪いことをしたわ……。本当にごめんなさい……」

「そんな! 謝らないでください! でも、それだけで完全天秤(パーフェクトスケール)が発動してしまうのはなぜですか? 均衡が崩れるようなこととは思えませんが……」

「そうね、普通に考えたらそうなるわね。ただ、今の第6にとって肉体が無いことこそ存在の証、だから当時の姿を知らないものに知られることは今のやつを否定することと同じ。と、本人からそれっぽいことを少し前に言われていたの。それすなわち『第6の厄災 均衡の番人』の存在定義に関する均衡が揺らぐ危険があるからこそ、あの時干渉されたの」

「なんだか……、すごいですね……」

 チョケ本の本心、とても変な人という認定がここでされた。ベクトルはやや違えど、チョケ田に向ける感情と似ていると本能的に感じ取った。


「そう言えばチョケ田ちゃんは? 今日はまだ見てないけれど?」

「それが……」

 そう言うと庭先に目線を向け、そこにはチョケ田の姿があった。木の棒を振り下ろし、ブツブツと何かを言っているようだ。

「えっと、あれは何をやっているのかしら……?」

「えぇっと……、この間の友理さんの姿に感化されて魔法を撃つところをずっと真似してまして……」

「なるほど……。チョケ田ちゃん、やっぱり魔法使えるようになりたいのね……」

「はい、最近は友理さんが遠征の話で聞かせてくれる剣術に感化されて、木の枝で素振りすることに没頭していたのですが……。やはり魔法に強い憧れは今でもあるみたいです」

「そうだったのね……。チョケちゃんたちの生態について私まだあまり詳しくないのだけど、誰しもが魔法を使えるようにはならないのかしら?」

「実は私も詳しくは分からずでして、もしかしたらチョケ川ちゃんなら知っているかもしれないです」

「あれ、そういえばチョケ川ちゃん大丈夫かしら!? 私加減せずに最上位魔法撃っちゃったけど!?」


 チョケ川の話になった途端、友理は顔面蒼白となり慌てふためき始めた。

「友理さん落ち着いてください! チョケ川ちゃん私たちと同じで小ちゃいですし、多分今回の行き先もあの場所だと思うので大丈夫かと!」


 友理は一気に冷静さを取り戻した。

「チョケ川ちゃん、今でも通っているのね……」

「やっぱり止めた方がいいでしょうか? 友理さん、いやこの世界にとって明確に敵と呼べる魔王の下に通うだなんて」

「いや、今はまだやめておきましょう! チョケ川ちゃんにはチョケ川ちゃんの考えがあるでしょうから」

 友理はとても寂しそうな表情をしつつも、チョケ本に不要な心配をさせまいと、気丈に振る舞った。


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