〜点と線が交わるまでの物語〜
籠の外の鳥は夢をみる。だがいつもその夢をしっかりとは覚えていない。
「ああ、大きい。なのになぜ自分は今も入ることができないのだろう」
決まって最初に思うことはこれである。
「いや、最初に思うことではないな。感じることなんだろうな」
感覚的にいつも言っていると気づいては決まり文句、あるいは悟ったような口調でささやく。
「覚えていなくてきっと良いことなのだとは思うよ。でも誰がこの決まりを作った? 解せない……」
ささやきの中に若干の憤りのようなものを混ぜ、彼はまた目を閉じる。
「あの小さな世界はこの広い世界から見たら、その辺に落ちてる枝のかたまりでできた窪みと大差ない。なのになぜ。」
「何を言ってるの?」
「君は誰だい?」
「わたし? 何回言ったら覚えてくれるの?」
「ごめんね。僕は君のことは知らないよ?」
「なんで!?」
「えっ、……」
無邪気そうな口調に似合わない、お淑やかそうな少女からの問いかけに対し、彼は歳に似合わない冷静でどこか疲れたような返しをした。
「少し悲しいかも……」
「ごめんね。でも君と会うのは初めてなんだ。でも僕が悪いね、ごめん。だから君の名前を教えてくれないかな?」
そういうと少女は耳をほんのりと赤らめ、彼の目をさらに見つめた。