ネコ耳発見
ある朝教室に入ると、彼女の頭にはネコ耳が生えていた。
今日もいつも通りの1日になるはずだった。
朝起きて学校に行き、退屈な授業を受けて部活に勤しむ。
そんな代わり映えのしない1日になるはずだったのに…いや、確かにいつもと変わり映えのしない1日ではあるのかもしれない。
ただ一つ、彼女の真っ黒なショートボブからネコ耳が生えていること以外は。
教室の扉を開けて思わずフリーズしていた俺は、クラスメイトの誰かが言った邪魔という言葉に動かされ、気づいたら席に座っていた。
なぜ誰も何も言わないのだろう。
教室のざわめきはいつもと何ひとつ変わらず、彼女もいつも通り席に着いている。
時折吹く強い風に反応してネコ耳がピクピク動いているというのに、誰も興味すら抱いていないようだった。
「おはよー」
彼女の友達である古玉さんがいつものように後ろの席に着く。
ついに核心につける人物が来たと思ったのに、古玉さんですら彼女のネコ耳には一切触れず、昨日あったテレビドラマの話を始めてしまった。
彼女は楽しそうに話に耳を傾けている。
物理的に耳も傾いている。
気が付けば先生が来て、ホームルームが始まってしまった。
…そして半日が過ぎた。
彼女のネコ耳は幻覚なんかではなくて、確かにそこに存在している。
先生の爪が黒板を引っかき、人類皆に共通しているだろう、あの嫌な音が鳴り響く事件が起きた。皆がそろって耳を塞ぐなか彼女は迷わずネコ耳を塞ぎ、古玉さんにはなぜ頭を押さえているのかと笑われていた。
俺にはネコ耳を塞いだように見えるその行動が、古玉さんやクラスメイトのみんなには、頭を押さえたように見えているらしい。
彼女は照れているのか困っているのかわからない微妙な顔をして笑っていた。
ネコ耳をつけた彼女はいつもの2割増しで可愛く見えてしまう…。
普段クラスメートの女子と話すことといえば、業務連絡くらいの俺であるが、ここで話しかけなきゃ男じゃないと思い、意を決してお弁当を食べ終えた彼女に近づき声をかける。
「あ、あのさ………、先生が探してたよ。あ、なんか別に大した用じゃなさそうだったから全然あれだけど、うん。たまたま聞いただけだから間違いだったらごめん」
…なんて意気地なしなんだっ