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事案5(1) テルビーエに行こう

最初の方はのほほんとした話です。


「今。ここに人ならざる者、駄目オーガストの名の元に、テルビーエへの門を開かんとす」



オグは両手を挙げ深く息を吸う。そして、腹の底から声を出す。



「【オピジエトトー・テルビーエ】!」



呪文を唱えると、海が光り穴が空いた。


「さ、行きましょうか」


「うぅ。いつ見ても怖いなぁ、この穴」


「何だか吸い込まれそう、だよな」


「お二人とも大丈夫ですよ。これはただの穴。6歳のぼくだって怖くないんですから」


エスピトラの社員四人は、妖怪の暮らす大陸、テルビーエに向かおうとしていた。


    ――――さかのぼること二時間前


「あ。桜寿(おうじゅ)様からメール来てる。なになに?『君たちの顔を久々に見たいな。ついでに近況報告をしてくれないかね?』だって」


ナルがパソコンに送られたメールを読み上げる。


メールを送ってきた妖怪、桜寿。その者こそがエスピトラの社長だ。さらに―――


「あの方に言われちゃ断れねぇな。なんせ賢者様だからな」


桜寿は、妖怪の最高権力者”賢者“という役職に就いている。

賢者は全員で五人いる。ちなみに最年長なのは桜寿だ。千年ほど生きている。


「どうせ今日も仕事ないし、せっかくだから行こうよ」

「そうですね。事務所で暇を持て余すよりいいかもしれません。お二人は?」

「行こうぜ。オレも桜寿様に会いたい」

「ぼくもです」

ということで行くこととなったのだ。


時は現在に戻る。四人は海に空いた穴を見つめている。


ナルとオキミがビビっているため四人で手を繋いで一斉に飛び込むことになった。


「さぁ。飛び込みますよ。せーのっ!」


20代の男二人と6歳の少年のジャンプ力だけでは柵を越えることさえできない。


―――駄目オーガストという怪物がいなければ。


三人はオグに引っ張られる形で柵を越え、海に入った。


  ▲  ▲  ▲  ◆  ▲  ▲  ▲


         ドタッ―――。


到着するときには専用の港につく。


四人はそこに倒れるように着地した。


「痛かったよぉ、オグさん!」

「やめろよ!無理に引っ張んじゃねぇ!」

「いててて・・・・・・」


「それはそれは悪うございましたね」


オグは不服そうに答えた。

「全く。ここも不便だよな。この方法以外だと来れねぇんだから」


テルビーエに行くのに船や飛行機を使うことはできない。

ここは人間社会の次元とは別の空間だ。

呪文を唱えなければ入れないように造られている。


「ここは東帯の辺りだな。潮風が気持ちいい」


一年中雪が降り続ける銀世界の “北帯”


爽やかな潮風が吹き漁業が盛んな ”東帯“


西洋の街並みをして妖人が9割を占める ”西帯“


今は誰も暮らしておらず荒廃した ”南帯“


政府の機関が揃い多様な種族が暮らす ”中央域“


鬼族のみが暮らしている ”地下域“


そして大陸を囲むようにある ”楽園諸島“


このように大陸は六つの地域と諸島に分かれている。



その後四人は駅に向かい、そこから電車で30分ほどかけて中央域・桜寿邸に着いた。



「いつ見ても立派なお屋敷だね」

「すごいですよねっ。見とれちゃいます」

「お二人とも―――中はもっとすごいですよ」

「おい。人ん家をそんな視線で見んなよ」

オキミがチャイムを押す。


ピンポーン


「はいはい。ちょっと待っててくださいねぇ」

しわがれた声が返ってきた。

ガチャ。


中から出てきたのは、桜の木の姿をした者だった。

彼こそが桜寿である。

桜寿は木精(ぼくせい)という種族だ。


木精は体が植物でできている。

自身の意思と関係なく体内で受粉して、生殖するのが特徴だ。

テルビーエにはほんの僅かしかいない。


今は冬。彼の頭には花も葉もない。

顔や腕にはシワがあり、体は痩せ細っている。


「さ、さ。あがりなさい。今からお茶淹れてあげるから」

「「「「おじゃまします」」」」

四人は続々と家にあがった。


オグの言った通り、中もすごかった。



まず部屋が多い。それに広い。

中庭もあるようだ。それも池や松の木があるやつだ。家の中には高そうな壺や皿なんかもある。



「さぁ。こちらへ」

桜寿は四人を大広間に招いた。



この部屋もかなり広い。畳何畳使っているのか。

床の間には生け花と、富士山が描かれた掛軸がある。

どことなく厳かな雰囲気だ。



「さぁ、どうぞ。こんなものしかないけれど」

そう言って桜寿は緑茶と茶菓子を出した。


いや、全然『こんなもの』レベルではない。


「ええ!?これって超高級な最中ですよね!?一個2000円とかするやつ。他のも高くて人気のやつだ・・・・・・おれらがもらっていいんですか?」


「ああ、もちろんだとも。いつもお仕事お疲れ様。どうも人間社会のことは手薄になってしまうから、助かってるんだよ。本当にありがとう」


桜寿は笑顔で感謝を述べた。


「それじゃ、いただきまーす!」

ナル、オキミ、ひなとの三人は高級な茶菓子を堪能する。

ここで食べなければ、いつ食べられるかも分からない。

チャンスを逃すまいと次々に食べていく。


「大人でしょう。全くわんぱくですね」

オグはゆっくり饅頭を食べている。

「オグさんあんまり食べないね。こんなチャンス、滅多に無いのに」

「私はこのお饅頭一個で十分、堪能できてます」

「ふーん」


およそ5分後。茶菓子の入っていた器が空になった。


「食べきるだなんて。申し訳ございません、千生様」

「いいんだよ。それより近況報告してくれんかね」


「あ。はい!かしこまりました。えーっと―――」

ひなとが、持ってきたリュックからタブレットを取り出す。

仕事の報告はこのタブレットにまとめている。

一つの仕事ごとに記録するのだ。

タブレットを手渡す。桜寿は時々、相槌をうちながらそれを見ている。


少しして。

「ありがとう。相変わらず利益が安定していないみたいだね」


四人は黙る。

一番的確で言われたくなかったことだ。


「まぁ。それでも。お客さんが救われたのなら、良かったと思うよ。はいこれ、ありがとう」

「あ。はい・・・・・・」

返されたタブレットをリュックにしまう。


「今回呼んだ訳はそれだけではないでしょう」

オグが近づく。


「私たちが知らないところで、何かが起きているんですね」


「流石はオーガスト君だ。実は―――」

桜寿はさっきと打って変わって真剣な表情だ。


何やら資料を取り出した。



「ここの町でクロノカタマリが発生したようだ」

「クロノカタマリ、ですか」



クロノカタマリ。

大量の人間の感情が集まって、できる妖怪だ。

主に感情の溜まりやすい場所から生まれる。

プラスな感情もマイナスな感情もヤツらの養分。

一度生まれると、大きくなるために周りの人間の感情を食い尽くす。


そして感情を食べられた人間は、人形のように動かなくなってしまう。

町の住民全員が蝋人形と化してしまうのだ。

絶対にそのような事態を防がなくてはならない。


「つまりそれを征伐してほしいと」

「ああ。そういうことだよ」


オグはくるりと体の向きを変え、玄関に向かった。

「行きましょう。一刻も早く倒さなくては」

「社長の依頼なら断われないね」

「ぶちのめしてやるぜー!」

「ああ〜。皆さん待ってくださーい」


四人は桜寿邸を去り、人間社会へと向かう。


  ▲  ▲  ▲  ◆  ▲  ▲  ▲


ここは日本のとある町。

住民からは活気というものが消えてしまった。


「マダ足リナイ・・・・・・。モウイナイノカ人間ハァ」


そんな町で、黒いぶよぶよした大きな怪物が歩き回る。白い手は家を掴んでは潰してしまう。


全長20m大きな口を持つこいつがクロノカタマリだ。


覚えたての“言葉”を発しながら進む。

まだだ。まだいける、成長できる。

可能性を求め、人間を探し続ける。


だが奴はまだ気づいていない。

脅威が迫ってきていることに。

                      続く

つながってるの最後の方だけでしたね。


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