事案4 ある社員のどっと疲れた一日
今回の話は、社員が語り手です。
「うあぁ〜。・・・・・・もう朝か」
カーテンの間から差す光を浴びる。
ベッドから降り、顔を洗おうと、遠い洗面所に向かう。
鏡に映る頭は寝癖だらけだ。
歯磨きして、髪を整える。
自室のドア、次に廊下のドアを開けて、デスクに向かう。
「あ。おはようございます。オキミさん」
ひなとだけが挨拶した。
「お?おう」
変だとオキミは思う。
いつもなら三人が「おはよう」と言ってくる。
しかし今日は―――
オグは机に突っ伏しているし、ナルは不快そうな表情だ。
「お前ら、どうしたんだよ」
オグは気だるそうに頭をもたげて、こちらを見る。
しかめっ面でゆっくり口を開く。
「仕事に・・・・・・仕事に行きたくないんです」
「は?お前が?珍しいな」
「依頼人が依頼人だからね」
ナルが呆れたようにそう言った。ため息をついて。
「誰なんだよ、今回の依頼人」
「“そな”って人。名前くらいなら聞いたことあるよね」
「あー。オグの知り合いの女か」
彼女と会ったことはない。話を聞いたくらいだ。
投資で成功して、資産をかなりもっているらしい。
ナルは一度会ったことがあるようだ。
しかし、男女共に優しく接するこいつが―――。
(こいつがこんなに不快そうにしてるなんて、一体どんな女なんだ?)
好奇心がくすぐられる。一度会ってみたい。
「行くぜ、一緒に」
「へ?」
オグが間の抜けた声を出した。
「だーかーら!一緒に行くって言ってんだよ!」
「いやいや!止めた方がいいよオキミ!」
「一緒に行ってくれるんですか!?」
キラキラした瞳で見つめてくる。
「おう!まかせとけ!」
「わぁぁぁ!ありがとう、オキミくん!」
「止めた方がいいってば・・・・・・」
ナルの制止は効かなかった。最後に何か呟いたが、聞きとれなかった。
▲ ▲ ▲ ◆ ▲ ▲ ▲
「ここがそなの家か!?」
オキミの前にあるのは白い豪邸だ。
おそらく三階建てだろう。
黒い門を開けると、庭には木が何本も植えられており、プールもある。
敷地はとても広い。一体何坪あるのだろうか。
「そなさーん。来ましたよー」
オグはやる気のない声で家の主を呼んだ。
しかし、返答はない。
「まぁいい、入りましょう」
「は?そんな勝手に―――」
オキミの言葉を気にせず、オグはドアを開けた。
ガチャ
家の中で、さらに驚いた。
入ってすぐに大きな写真があった。
どこかのヒマワリ畑のようだ。この家とはミスマッチな写真だ。
左にキッチンや食卓があった。テーブルも椅子も壁も、配色は黒か白で高級感がある。
中央奥には、木製の螺旋階段が。
さらに右の方には大きなソファと、これまた大きなテレビがある。
「ちょっと探してきますね。君は一階をお願いします」
オグが二階に行き、別行動となった。
そなを探すためにうろついていると。
「あら。来てたの?言ってくれればよかったのに」
後ろから女の声がした。
振り返って見た女に、またまた驚く。
バスローブを着た彼女は、まず胸が大きい。
顔は童顔で可愛い。長い髪はツヤのある黒だ。
瞳はくりんとした、桜色。
しかし、それよりも大きな胸が目に入ってくる。
彼女が”そな“か。
「あなた、だあれ?」
オキミに近くまできて、首をかしげる。
そっと、そなの指がオキミの唇に触れる―――
「うわ、何すんだよ!?」
その前にオキミがそなの手を払った。
「恥ずかしがらなくてもいいのよ?」
「別にそんなんじゃねーよ!何なんだよ、いきなり!」
オキミは声を荒げて威嚇する。
「何をしているんですか」
オグが戻ってきた。どうやら呆れているようだ。
「オグ!この子、威嚇するタイプなのねー。前のナルって子は固まってたけど」
「あなたが変な風に誘惑するからです。からかうのも程々にしろって何回も言ってますよね」
「そうよねー。わたしったら、魅力的すぎるのよね。だから今回みたいにストーカーにつきまとわれるの」
「しれっと会話に依頼ぶちこまないでくださいよ」
そなは、ため息をつくオグに抱きつく。
「何ですか」
「ねー、詳しい話は部屋でしましょ」
「全くあなたという人は・・・・・・。早く行きましょうか」
「お、おう」
オキミは二人の距離感に若干戸惑う。
三人はそなの部屋へと向かった。
そなの部屋は赤が多い。
ベッドも赤、机も赤、壁紙もカーテンも赤系の色だ。
「なんで赤ばっかなんだよ」
「別にー。ただ好きだからよ」
そなは素っ気なく返答した。
机の上にあった箱から指輪を取り出し、はめた。
「既婚者なのか?」
小声でオグに聞く。
「いいえ。ただ付けてるだけですよ」
「ふーん」
「あ。そういえば名前は?」
「オレの名前はオキミだ」
「ふーん。オキミ、ね。小さくてかわいい子」
「なぁっ・・・・・・!小さくねーよ!」
オキミの身長は156cm。20代前半の男性にしては低い。
背が低いことは、彼にとってコンプレックスだ。
怒りはしないが、顔に悔しさがにじみ出ている。
しかし、そなは気にせずに、机の引き出しから大量の封筒を出した。
「ほらこれ。ストーカーからの手紙」
「無視すんじゃねぇよ・・・・・・」
力ない声でツッコむもそれも無視。
諦めて先に進めることにした。
そうして手紙を読む。
すると気づくことがあった。
はじめは『好きです』とかただの告白だ。
しかし、だんだん脅迫めいてくる。
『何で俺を見てくれないんだ』とか『お前を許さない』とか。
一昨日届いたものは『殺してやる』と完全に脅迫だ。
「ね。ヤバいでしょ」
そなはため息をついてベッドに座る。
「どれくらい前から」
「2ヶ月前くらい」
「何でもっと早く相談しなかったんですか」
「こっちも忙しいの。相談する暇ないんだから」
それに、とそなは困ったように続ける。
「これだけじゃない。わたしの後ろつけてきたり、しつこく電話かけてきたり・・・・・・とにかく参ってるのよ」
「だったら警察に言えばいいじゃねぇか」
普通に考えてこれが一番いい方法だろう。
「確かに警察にいくまでに襲われる可能性もある。そのときはオレらが守ってやるし」
これで上手く収まるはずだ。
しかし二人は首を縦に振らない。なぜか顔を見合わせた。
「なんだよ?」
「あんた気づいてないの」
「はぁ?気づいてないって何に」
「いや、わたし人間じゃないけど」
「は、はぁ??」
いや、どう見ても人間にしか見えない。
妖怪は様々な能力をもっており、その力の源となるのが”妖力“である。
彼女からはその妖力を感じない。
感じない―――?
いや、近づいてみると微量に感じた。
「なんだ妖怪だったのかよ」
「彼女は生ける屍で、もうずっと前から生きてます」
生ける屍。
妖怪の種族の一つで、天突という剣が選び、突き刺した人間がなる。
特徴として、まず老いることがない。
次に、簡単には死なない。
例えば、高所から転落したり、車に轢かれたりなど。
そういった、普通の人間なら死ぬような場面では蘇生する。
しかし、妖術による攻撃で完全に死亡してしまう。
つまり人間の世界でなら、不老不死なのだ。
ちなみに、天突が突き刺す人間はバラバラで、基準が分かっていない。
誰がいつ、どこで突き刺され、生ける屍となるのか。
それは誰にも分からない。
―――そんな説明が図鑑にあった気がする。
「妖怪の存在は表立って公表してないでしょ。それでわたしが人間じゃないってバレたら、面倒なことになるわよ」
「あー・・・・・・確かにな」
納得した。
「それじゃあ、どうやって解決すんだよ?」
「私たちがストーカーを説得するというのは、どうでしょうかオキミくん」
説得・・・・・・。難しそうだ。
「それは無理そうだけどなぁ」
「あんたら二人、すぐに手あげそうだし」
自分は見た目どおり、暴れやすいタイプだ。
オグは一見大人しそうだが以外にもすぐ手をあげる。
間違いない発言だ。
「てか、オキミがわたしの彼氏ってことにすれば」
「・・・・・・はあぁ!?彼氏だとぉ?」
「なっ―――」
びっくりした。
オグがこんな風にキレたところは初めて見た。
もう出会って三年は経つというのに。
「どういうつもりだ。お前のように貞淑でない女の彼氏だと?そんな危ないものやらせられるか」
(“お前”!?オグ今、お前って言ったのか!?)
信じられない。自分が見てきた限り、オグは相手に「お前」といったことはない。
すごい気迫でそなに迫っていく。
そして、迫られているそなは―――
「ちょっと。あんたが急にキレ出すから、オキミ怯えてるじゃない。大丈夫、彼氏だからって変なことしない。ただの役だし。神にだって誓えるもの」
いたって冷静に対応している。
これが長く付き合った者同士のやり取りなのか。
「この世界に神はいないが。本当にそれくらいの気持ちでやってくれるならいいでしょう。ところで君はどう思うんですか、オキミくん」
「え?ああ、オレは別にいいけど・・・・・・」
とりあえずオグの怒りは収まったようだが。
「それで彼氏のフリをしたらどうするんですか」
「どうするって」
「ストーカーがオキミくんを襲うかもしれませんよ」
「その時はオキミが戦えばいいじゃない」
「なっ・・・・・・全く」
「オレは大丈夫だ。戦える」
オグは心配そうな顔をしている。
「無理はしないでくださいね」
「相手は人間だ。負けるわけない」
まだオグは何か言いたげだったが、口をつぐむ。
そして作戦が始まった。
▲ ▲ ▲ ◆ ▲ ▲ ▲
家での話し合いから約一時間後。
そなとオキミはカフェにいた。
「この季節限定のケーキすごいおいしー!」
そなはケーキをフォークで切り取り、それをオキミの前に差し出した。
「はい、あ〜ん」
「は、はぁ!?」
いきなりの行動に驚きを隠せない。
「ちょっと何恥ずかしがってるの。ほら、あ〜ん」
「おま、それって恋人がやるようなことじゃ」
「わたし達、今恋人でしょ」
「あ。でもそれは―――うむぅっ」
無理やり口に詰められた。
「ねー!美味しいでしょー!」
何なんだ、この女。強引すぎるだろ。
ニコニコと笑顔なのに、少しムカッときた。
とにかくここは落ち着こう。
そう思いコーヒーを飲む。
「けほっ。苦ぁ・・・・・・」
カッコつけてブラックにするんじゃなかった。
・・・・・・何か視線を感じる。
そっとその方向を見ると、眼鏡をかけた長髪の若い男がこちらを見ていた。
(あいつか・・・・・・)
目が合うと慌ててコーヒーを口に運んだ。
どうやらケンカはしたくない様子。
(どんな奴かと思ったら。はっ、この有様か)
例え戦うことになっても、完全に勝つ。
余裕の笑みを向け挑発する。
対して相手は―――ギョッとした表情になった。
挑発にも乗らないというのか、こいつは。
呆れてそなの方に向きなおる。
「ふぅ。ごちそうさま」
ちょうど食べ終わったらしい。
「よし。じゃ、行くか」
そなに会計を任せ、二人は店を出た。
「何なんだよ、あいつ・・・・・・・」
その光景を見た、あの男。恨めしそうに呟いた。
「俺のそなちゃんにあんな男が寄ってきてたなんて。・・・・・・危険だ。俺が守ってあげないと」
そう決心すると、二人の後を追うように店を出た。
▲ ▲ ▲ ◆ ▲ ▲ ▲
次に二人はショッピングモールに入った。
「ねぇ。どっちがいいと思う?」
そなは二つの服を比べ、オキミに問う。
「あ?んなの自分で決めろよ」
「はぁ!?決められないから聞いてるんですけど!」
フンと、そなは怒って離れていってしまった。
振り返り見た試着室。その後ろにあの男がいた。
ここでも戦う意思がないようで、目が合うと隠れた。
(ったく。好きな女のためなら怪我するリスクくらい負えよ。まぁ恋した事がないオレが言うのもなんだけどな)
向きなおると、少し離れた所でスカートを選ぶそなの姿が見えた。
彼女が手に取るのは、どれも丈が短いものばかり。
(・・・・・・ストーキングされるのってあいつにも原因あんじゃね?)
短いスカートを履いたり、甘い香りの香水を使ったりしているから、男が寄ってくるのではないか。
その男を狙っていようが、いまいが。
正直やめた方が良いと思うが。
気の強いこの女が、素直にやめてくれるだろうか。
「ほら。何ボサッとしてんのよ。帰るわよ。」
うん。ムリそう。
「あー。そうだな。帰るか」
「これ持っていって」
「うおっ。荷物持ちかよ。しかも結構あるし」
「ほら。早く」
その後もなんだかんだ言い合いながら自宅へと向かった。
▲ ▲ ▲ ◆ ▲ ▲ ▲
「はぁ。よっこらしょっと」
疲れて声を出しながら荷物を下ろす。
「ったく。重いんだよ、これ。買いすぎだぞ―――って。おい」
文句を言おうとしたが、既にそなはいなかった。
(はぁ・・・・・・)
あの男もだが、そなも呆れたものだ。
疲れたし、何か飲もうかと冷蔵庫を開ける。
ピンポーン
そのとき玄関のチャイムが鳴った。
「おーい。そなー。誰か来たぞ」
返事はない。代わりに出るしかないか。
ガチャ
「はーい。どちら様ですか―――なっ」
そこにいたのはあの男だった。
ドッ
「くっあ・・・・・・」
男がオキミに突進しぶつかった。
その瞬間、腹に急激な熱を感じた。
見下ろすと・・・・・・自分の腹から赤い液体が流れるのが見えた。
「ごはっ・・・・・てめぇ」
「お前が悪いんだ・・・・・・俺からそなちゃんを奪おうとしたお前が!じ、自業自得だ!」
男の声とナイフを握った手が震えていた。
やはり怖かったらしい。人の命を奪うという行為が。
「わ、分かったか・・・・・?ひ、ひぃ」
恐ろしくなったのか逃げ出そうとしていた。
「逃げんじゃねぇよ!」
オキミは指を右から左にスライドした。
すると彼の右側にあった花瓶が男の頭に直撃した。
「うぎゃっ」 バリンッ
男は短い悲鳴をあげて気絶した。同時に花瓶が割れる。
【念力】
それが彼の能力だ。相変わらず地味で弱い。
だが、人間ひとり気絶させるくらいはできる。
「はぁ・・・・・はぁ、クソが・・・・・・」
そう言い放つと目の前が暗くなった。
(やべぇ、油断しすぎた。)
そのまま気を失った。
▲ ▲ ▲ ◆ ▲ ▲ ▲
「う〜ん・・・・・・うっ。う〜ん」
「オキミくん。大丈夫ですか」
「う?・・・・・・おう、オグか・・・・・・」
目を覚ますとオグが見えた。
彼女の顔が上にあるが、胸が邪魔して完全には見えない。
あれ?この構図って・・・・・・
「のわぁぁぁ!!」
起き上がる。それと同時にオグは体を反らした。
「おま・・・・・やっぱり、膝枕してただろ!?」
「ええ、そうですが。何か?」
「なぁ、何かって・・・・・・」
恥ずかしいやら何やらで顔が赤く染まる。
「あら〜。意外と可愛いとこあるじゃない」
そなはそんなオキミの様子を見て笑う。
「なっ―――ば、バカにするのも大概にしろ!」
「はいはい。思ったよりも幼い子だわ」
「くっ―――」
言い返したいが言葉が出てこなかった。
心の中で自分が幼いことを認めていたからだ。
「まぁまぁ落ち着いて。傷の方は大丈夫ですか」
「あ。ああ、まぁ。痛みもないし。塞がってるみたいだ」
「それならよかったです。奮発した甲斐がありました」
ポケットから小瓶を取り出した。
それを見て驚愕する。
「それって、まさか。―――《女神の涙》か!?」
《女神の涙》
妖怪の不思議な道具の一つで、すごい効果の薬だ。
どんな場所にできた傷もどんな深さでも治すことができる。
作れる職人はごく僅かで入手するのは簡単ではない。
うちの会社だって社長があの方でなければ入手できなかっただろう。
小瓶の中身は半分くらいなくなっていた。
あんな希少な薬を半分も―――
「お前なぁ!それ超貴重なモンなんだぞ!?半分も使ってんじゃねぇよ!」
「私はオキミくんの命の方がずっっっと大事です」
予想していなかった言葉だった。
「なっ・・・・・・むぅ。ずるいだろ。そんな事言うとか」
そんなことを言われ、恥ずかしくなり顔を背ける。
「あらら。かわいー」
「からかうんじゃねぇよ・・・・・・」
「はーい。分かったわよー」
そなはくすくす笑いながら奥へ去っていく―――
そのとき。
「そういえばまだ不明なことがありますね」
オグがそんなことを言った。
「「え?」」
オキミとそなの声が重なった。
不明なこと?それは一体・・・・・・?
「そなさん。あなたがどうして急に依頼してきたか、ですよ」
「はぁ?だからそれは、危険を感じたから―――」
「これが、目的では?」
「ああ!それはぁ!」
オグが取り出したのは、一枚のチラシだ。
そこには―――
「『きゅう♡ちゃんデザインコスメ限定プレゼント』?きゅう♡ちゃんって有名なデザイナーだよな。妖怪の中で・・・・・・あ!」
分かった―――。
「そうか!あいつがついてくると、テルビーエに行けねぇのか!」
”テルビーエ“
人間社会と離れた、妖怪が暮らす大陸だ。
いくつかの地域に分かれており、暮らす妖怪の種族も様々。
もしそなが行っていたら、あの男も一緒にテルビーエに行くことになっただろう。
そうなったらパニックに陥るに違いない。
だってそこでは、動物が人と同じ大きさの上、言葉を発していたり、変な角の生えた人間がいたりするのだから。
もちろん天狗や河童やグリフィンなどもいる。
デザイナーの"きゅう♡ちゃん"は九尾の狐だが、尾は三つしかない。成長途中なのだ。
九尾の狐の掟で『成熟していない狐は人間の世界に行ってはならない』というものがある。
つまり、彼女はテルビーエから出られないのだ。
そなの望みを満たすためには。
どうしてもストーカー問題は解決しておかなければいけなかった、という訳だ。
「うぅ・・・・・・そうよぉ。どうしても欲しかったのよぉ・・・・・・」
そなは顔を覆い、膝から崩れ落ちた。
まさかこんな理由だったとは。こいつの物欲のために腹から血を流す羽目になったとは。
けど、もう怒るのも面倒だ。とにかく疲れた。
「あー、疲れた。帰ろうぜ、オグ」
「ええ。あ、その前に。これ、請求書です」
「あー。請求書?はいはい。どれどれ?―――え」
そなの顔が固まり、ぶるぶる震え出す。
「なぁ、何よこの金額ぅ!」
「え?オグ、お前どれくらい請求し」
「さぁ行きましょう!もう帰りましょう!」
「お、おう」
強引に押されながら帰った。
▲ ▲ ▲ ◆ ▲ ▲ ▲
ところで。そなをストーキングしていた男だが。
「彼女は大切なお友達なんです。もう近づかないでくださいね?」
「ぁ゙ぃ゙・・・・・・も゙うゃ゙めまず」
オグが胸ぐらをつかみながら営業スマイルで、脅迫もとい説得した。
その結果。
(そなちゃんの友達に、こんなヤバい奴がいるのか・・・・・・こいつには勝てないな・・・・・・)
そう考え直し、そなを諦めたそうだ。
そして口座に振り込まれた金額を見て、オグ以外の三人が固まったのは、また別の話である。