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事案8 オカ研の取材

炎上ギリギリの退屈回になるかもしれません。


今回出てくるのは、エスピトラ独自の設定であり、実際の妖怪などの定義とは大きく違っています。


あくまで「物語の設定」として捉えていただきたいです。

「ウガガガガガガ・・・・・・ギ、ギギ」


「先輩、大丈夫ですか?」


「はっ!う、うん。だ、だだ、大丈夫っスよ」

煌とオカ研メンバーは、とある雑居ビルを訪れていた。


時刻は9時56分。約束の時間の少し前だ。


「ここの二階がエスピトラなんですよね?」


「そうっスね。電話ではそう言ってた」


「てか小述く〜ん。知ってたんなら教えてよ〜」

「す、すみません・・・・・・」

御影に肘で小突かれながら、優生は謝った。


あの学校調査の翌日。


煌のもとに一本の電話が来た。


それがオキミからの着信だと知ったとき、心臓が飛び出しそうになった。


イエスかノー、どちらだろうか・・・・・・。


頭にあったのはそれだけだった。

「ノー」がただひたすら怖かった。


妖怪のことについて知れる機会なんて、またどこで、いつ手に入るかなんて分からない。


この機会を逃したらどうしよう・・・・・・。


手と声を震わせ、冷や汗を流しながら通話した。



結果は―――「イエス」

取材を許可された。



大喜びした後、オカ研の後輩達と一緒に行くことにしたのだ。


2週間ほど経った今日が、約束の日だ。


階段を一段、また一段と上る。それに伴って緊張も増してくる。


二階に着いた。

インターホンは無い。ドアをノックする。


「はい、ただいま」


中から女の声がした。

ドアが開き、一人の女が出てきた。


灰髪のギブソンタックに、黒いスーツの装い。


(ん?あれ・・・・・・?)


煌は首をかしげた。

どこかで見たことあるような―――。


「オグさん。お久しぶりです」

「優星さんとオカルト研究部の方々ですね。どうぞ」

中に招き入れられた。


  ▲  ▲  ▲  ◆  ▲  ▲  ▲


応接間のソファに、四人とオグが向かうように座った。


「私は駄目(だもく)オーガストと申します。オグと呼んでいただいても構いません」

オグは丁寧に自己紹介し、一礼した。


「君達がインタビューに来た子達?」


若い男がお茶を持ってきた。

青い頭に結晶のような髪飾りを付けている。


「初めまして、おれはナル・アイシス。ここの社員の一人だよ」


湯呑みを置いたら、オグの左隣に座った。


「よく来たな。オレのこと、三人は知ってるよな」

右隣に座ったのはオキミだ。


「もしかして、あなたがオキミさんですか〜?」


「ああ、そうだ。初めて会ったな」


「わたしは御影孤々っていいまーす」

御影は手を振り、ゆるく自己紹介した。


(これはまずい・・・・・・!)


後輩が自己紹介しているのに。

先輩である自分がしないのは如何なものか。


ばっと立ち上がり、堂々と胸を張る。


「俺は好怪 煌っていいます!妖怪のこと調べてます!よろしくお願いします!」

力みすぎな自己紹介を終え、再び座る。


「あー、えっと。ぼくは押頼 願です。オカルト研究部の部長やってます」


「ご存知の方もいると思いますが、僕は小述 優生です。よろしくお願いします」


戸惑いながらも二人は一礼した。


これで全員の自己紹介が終わった。

「では取材、始めます!」

 


  ▲  ▲  ▲  ◆  ▲  ▲  ▲



「ええーっと。まず俺が聞きたいのは―――」


「その前に。皆さん、妖怪がどのようなものか、ご存知ですか?」


煌は『聞きたいことリスト』を開く手を止めた。


「分かってますよー。当たり前じゃないっスか〜」


余裕の笑みを浮かべ立ち上がる。


「ズバリ!『妖しい力を持った人智を超えた存在』ですよね!!」


これは間違いない!


フフンとドヤ顔を決めるも、周りの反応は微妙だ。


「うーん。あながち間違いではないけど。実はちゃんとした定義があるんだよね」

ナルは苦笑いで説明する。


「あのね。妖怪の定義は『ヨウリョクソウムを取り入れ、本来の種とは別の進化を遂げた生物。或いはヨウリョクソウムによって発生した種』なんだよ」


ヨウリョクソウム・・・・・・!?


「何スかそれ!?」


「ヨウリョクソウムというのは、今から約45億年前に地球に墜ちた巨大隕石に、含まれていた物質です。それが素となって妖力が発生し、様々な異能が使えるのですよ」


オグが丁寧に説明してくれた。


「ええ!?妖怪のルーツって、宇宙ぅ!?」

19年とちょっと生きてきて、最大の衝撃だった。


「それでね。動物が進化したのが(あやかし)、植物は木精って呼ばれてるんだよ」


「ほうほう」


「ちなみに、妖は妖怪の中で最も数の多い種族です」


「ほー」

相槌を打ちながらメモを書く。



「それとね。妖怪の暮らす、テルビーエっていう大きな大陸があるんだ。意味は妖怪古語で“妖怪の造った大地“だよ」


「ああ〜。聞いたことあります。でも地図に載ってないっスよね?」



「そーだね。ま、別の空間にあるからね〜」



「ふむふむ、別の空間に。―――え?えええ!?」


これまた衝撃的な事実を知った。


「べべべ、別の空間って!どういうことっスか!?」


「初めに生まれた妖怪、オルジーってのがいてね。彼・・・か彼女かは分からないけど。その存在が生み出したんだよ」


「何を」


「地球とは別の空間と、その中に大陸を」


「ひゃああ・・・・・・とんでもないっスねーその妖怪」


もはや腰を少し抜かしながらも、忘れずにメモを取る。



「ところで、UMAもルーツが宇宙に?」


御影が横から問う。


「あ!そういう区切りも聞きたかったんスよ。それでそれで!どうなんスか?」


御影と煌の熱い視線を受けたナル。


「うーん、難しいなぁ。一応、妖怪の種についてまとめた本があってさ。それに載ってなくて、誰にもきちんと存在を発見されてない種、とか?」


難しいそうだが、曲がりなりにも説明してくれた。


「じゃあ妖怪とUMAって一緒?」


「むむぅ・・・・・・。UMAの中には、ヨウリョクソウム無しに進化したものがいるって言われてるからなぁ。一概に同じとは言えないよ」


「例えば何がいるんスか?」

「ビッグフットとかツチノコとか、ネッシーとか」


「ほうほう。なるほど」

とてもためになる話だ。これもメモを忘れない。



「オキミさんに質問なんスけど。ダイダラボッチってどんな妖怪なんスか?」


彼がダイダラボッチの混血だと知って、聞きたかった。


「あ?あ〜難しいな。オレの親父なんだけどよぉ、()はめちゃデカかったんだと。で、そのままじゃ話しても伝わらねぇから、テレパシーみたいな能力を手にしたとか」


「昔は大きかった?今は違うんスか?」

「おう。厳しい修行をして人並みに小さくなったって聞いたぜ。オグにな」


「え?お父さんに聞いたんじゃなくて?」



「親父、オレが生まれた2カ月後に死んだらしい」



「あ・・・・・・」


地雷だった―――。


「すみません!!嫌なこと思い出させて!」

全力で謝る。


「いや別に。親父が死んだとき、赤ん坊で記憶なんてねぇから。気にすんな。それに」


先ほどまで笑っていたが急に顔色が変わった。


「種の進化に抗うなんて無茶なことだぜ。親父はデカかったけど無理やり小さくなった。100歳超えてたのに無理した親父の、自業自得だ」



吐き捨てるような口調だった。

言い終えた後、オキミはロケットを握った。



「あ!ちなみにおれが何の種族か分かるー?」


ナルが横から割りこんできた。


何とか取り繕うとしているのが、丸分かりだ。


「え?ええっと、妖人っスよね?」


「正解だよ〜!何から派生したとかは?」


「人間っスよね?」

どう見てもそれ以外考えられない。


「うん!ところで角を生やした理由は知ってるかな?」


「え?」

それは知らない。てっきり自然に生えたと思っていた。


「能力を一目で示すため、とか」


「それもあるんだけど、もう一個あって。大昔の妖人には角が無くて、人間と間違えられるから生やしたんだって、言われてる」


「へ〜。なるほど」


「まぁ。今は角の無い妖人なんて、ほんの数%しかいないけどね。それと。これは諸説あるんだけど、ゲルマン神話に出てくるエルフは、角が無いときの妖人らしいよ」


「へー!そうなんですね」

これは面白い話を聞いた。


押頼や優生も興味深そうに聞いていた。


「でも妖怪の歴史はオグさんの方がよく知ってるから、気になること聞いてみなよ」


「ふむ。オグさんが・・・・・・」

改めて彼女を見るも、やはり引っかかる。


(う〜ん。やっぱりどこかで見たんだよなぁ)


全然思い出せない。


彼女そのものではなく、似たものを見たはずだが。


「ちょっとすいません」


周りに断ってバッグの中を漁る。

今まで集めてきた資料を取り出す。

一つ一つ、しっかり確認する。



そして―――



「あった!!」


ある一つの資料を、机に叩きつけるように置いた。

それに添付されている、浮世絵の写真。


そこに描かれていたのは―――


「え!?オグさん!?」


灰髪の女。一見するとオグに似ている―――が


浮世絵の彼女には、腕と脚に魚の鱗があった。

それに頭には角のようなものが生えている。

牛のような角ではなく、サンゴに似た角だ。


その姿を表す言葉は―――


「龍人・・・・・・だよね」

ナルがふと漏らした。


「この龍人、あなたじゃないんスか?オグさん」


問われたオグは―――



「ええ、そうですね。これは私です」



真顔で声色も変えずに答えた。


え―――!?


周りは驚きのあまり、固まってしまった。


「どういうことか、説明してください」


ただ一人、煌だけは冷静に質問を続けた。


「私は権化という妖怪で、一人の人間の一つの感情を長い間集めてできます。そして宿主が死んだときに、この世に意思を持って誕生します」


オグは自身の胸に手をあてた。


「権化の一割ほどは宿主の()()が反映されるようで。私の宿主は”自分を想い、律してくれる存在“―――“娘“という存在を望みました」

「娘?どうして?」


「多分、()()()のこれからのためにと。息子だと関わりにくいと思ったのでは」


「ある人って?」



「それは関係ないし、話したくないです」

急に声のトーンが下げてきた。



何だか―――脅されているみたいだ。



「は、はい・・・・・・ごめんなさい」

これには煌も萎縮してしまう。


「そして。分裂した一割も含めた全てが、一体の妖怪となる“本気モード”があります」


オグは写真を指さした。


「私の場合、それが龍なんですよね。それでこの時は誕生して数カ月しか経ってなくて。上手く分裂できなかったんですよ」


「あー!なるほど〜!」


忘れまいとこれもメモする。


「もう〜。おれ達3年も一緒にいるんだからさぁ。それくらい教えてよ」


「隠すなよ。写真見て、びっくりしたぞ」

社員の二人もそれは知らなかったようだ。


「話がそれしまいましたね。他に聞きたいことは?」


「あ!はーい」

「はい、御影さん」


「鬼とか河童とかっているんですか〜?」


(俺が聞きたかったやつ・・・・・・!)


取られてしまったが、知れることに違いはない。


聞き逃すまいと真剣な姿勢になる。


「ええ。どちらもいますね。河童は日本の河川で、ひっそりと暮らしているでしょう」


「鬼はいるけど会えないかなー」


「え?会えないってどういうことですか?」

優生が聞くと、ナルはスマホの画面を見せた。


「何これ?(むくろ)教?」

画面には骸教なる物の説明があった。


「鬼族が信仰している宗教。これに『人間は穢れ多き種族。関わることは絶たなくてはならない』って教えがあって」


ため息をついて続ける。


「人間を極力避けるために、100年以上も前から地下で暮らしてるんだよ。時々、テルビーエに人間が迷い込むことがあるからね」


「へぇ」


「言い換えると。種族として100年も、人間に会ってないんだよ?それで君達と対面したら、皆パニックになるよ」


「そんなぁ。会って話聞きたかったのに」

御影は肩を落とした。


「あ!でもでも!」

ナルは急いでスマホを操作する。


「これ見て!」


その画面に映っていたのは”地上祭“なるものだ。


「この地上祭は、鬼族が一年に一度、八日間だけ地下から出てくるんだよ。もちろん人間は参加できないけど、おれ達が行って、写真撮ってくるよ」


「え!?いいんですか」


「まかせてよ!」

ウインクを決める。


「キザが」

オキミが横から吐き捨てるように言った。


「そういえば。鬼族と妖人って何が違うんですか?」

優生が聞く。


確かに。気づかなかったが、鬼と妖人は似ている。


「種の発生場所の違いかな?妖人はヨーロッパで、鬼族は東アジアだって言われてる」


「ああー。なるほど」


「あと鬼の角はシンプルなところとかも」

「牛みてぇだよな」


「ふむふむ」

なかなか面白い話だ。


  ▲  ▲  ▲  ◆  ▲  ▲  ▲


今の時間は12時40分。

「そろそろお暇しますかぁ」

色々面白い話が聞けた。


「聞きたいことはもうないの?」


「あまり長居するのも迷惑っスから。もう帰ります」


「じゃあ。気をつけて帰ってくださいね」


「「「「本日はありがとうございました!」」」」


4人は最後に感謝を伝え、事務所を後にした。

森村さんには仲良くしてもらってます。


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